腎臓とカリウム

カリウムとは

カリウムは野菜や果物に含まれるミネラルの一種です。

細胞にとって必要な圧を維持する働きや、体にある余分な塩分を体の外に出す働きがあり生命の維持のために必要な栄養素です。

多すぎても少なすぎても良くなく、腎臓病の場合は体に溜まることで時折問題になります。

高カリウム血症とは

腎臓病が進むと、尿からカリウムが排泄されなくなり、体内にカリウムが溜まり、「高カリウム血症」の状態となります。

高カリウム血症の状態が悪くなると、突然死を引き起こす不整脈・心停止の原因となります。

あくまで目安ですが、カリウムの値が6.5mEq/L以上になると心停止の危険性が上がり、心電図などで心臓に異常な脈を認めるようになります。

そのため、カリウムの値を5.5mEq/L以下にするように食事の調整をしたり、薬を飲んだりします。

高カリウム血症の症状

症状としては以下のようなものがあります。

  • 息切れ(19.8%)
  • 脱力(18.6%)
  • 意識障害(7.8%)
  • 失神(5.4%)
  • 無反応(4.2%)
  • その他(43.1%)

心電図の検査で以下のような所見がでます。

  • テント状T波(34.5%)
  • 非特異的ST変化(33.3%)
  • ST上昇(4.2%)
  • 第1度房室ブロック(16.7%)
  • 心室内伝導障害(11.3%)
  • 脚ブロック(6.0%)
  • 徐脈(4.2%)
  • 洞停止(1.8%)

*参考文献:Acad Emerg Med 2008;15:239-249

高カリウム血症の治療

高カリウム血症の治療は以下の2つがあります。

  • 食事制限
  • 内服治療

重症度が高いときは、両方が必要になることもあります。

食事制限

カリウムを多く含む食事を制限することで、カリウムが体に溜まらないようにします。

カリウムを多く含む食事として、レンコンやカボチャなどの野菜類、バナナなどの果物、干し椎茸、芋類、豆類などがあります。

これらを食事を食べるときは、茹でこぼしたり、水にさらしてカリウムを落としてから食べるようにします。

内服治療

腸でのカリウムの吸収を抑えて、体にカリウムが入らないようにする薬を飲んで治療します。

具体的には以下のような薬があります。

  • ケイキサレート(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)
  • アーガメイトゼリー(ポリスチレンスルホン酸カルシウム)
  • ロケルマ(ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物) など

ロケルマは2020年に発売された新薬で非常に効きがよく、この薬で多くの患者さんが野菜・果物に制限が不要になっています。ただし、薬の値段がかなり高いのが難点です。

医師
医師

個人的には、野菜や果物に含まれる食物繊維やビタミンを制限してほしくないため内服治療を先に勧めています。

腎臓病の患者さんは食事の制限が多いので、なるべく制限を減らしていきたいと思っています。

最後に伝えたいこと

個人的には、カリウムを恐れるばかり野菜・果物を制限する必要のない患者さんも野菜・果物を制限しているケースが多いと感じています。

腎臓病だと一律強制に野菜・果物制限を指導する栄養士さんが多くて少し問題だと思っています。

カリウムそのものは腎臓を障害しません。逆に血圧を下げたり、骨を強くする効果も期待出来ます。

定期的に採血の値をみて、本当にカリウムを制限する必要があるかを検討する必要があります。

私見ですが、以下のような患者さんは野菜・果物を制限する必要がないケースが多いです。

  • 腎臓病のステージが3もしくは4前半の患者さん
  • 糖尿病以外が原因で起きる腎臓病の患者さん

ここらへんは、診察室で個別で考える必要があります。何かご不明な点がございましたら、遠慮なくご相談ください。

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