腎臓病では本当に尿酸値を下げる必要があるのか?【2020年6月更新】

尿酸値が高いと腎臓を障害する可能性があり、腎臓病では尿酸値を下げた方が良いと言われていました。

しかし、2018年頃から尿酸はあんまり下げなくても良いのではないかという報告が出始めていました。2020年6月25日に腎臓と尿酸に関する報告がアップデートされたので、加筆・修正しました。(アップデートの内容は最後の章にまとめています。)

前半は患者さん向け、後半は医療従事者向けです。

尿酸とは

尿酸とはDNAなどが分解された時に老廃物から出る物質です。この尿酸値が持続的に血液中にたまった状態を高尿酸血症と言います。

高尿酸血症の状態が持続すると、以下の2つを引き起こします。

1:塊を作り炎症を引き起こし痛風の原因となる。
2:血管の動脈硬化の原因となる。

加えて、高尿酸血症が持続すると、腎臓を障害する可能性が報告されています。

メカニズムははっきり分かっていませんが、動脈硬化だけでなく、酸化ストレスと過酸化ラジカルなどの腎障害に関わるメカニズムに影響を及ぼしたり、腎臓の血流量に影響を及ぼしている可能性が考えられています。

尿酸が高くなる原因

尿酸が高くなる理由としては以下の2つの要素があります。

1:食事の影響
2:生活習慣の影響

前者の代表例としては、ビール、干魚、レバー、卵などがあります。

後者の代表例としては、肥満、運動不足、ストレス、内蔵脂肪などがあります。

尿酸が高いと、食生活の見直しをされる方が多いのですが、実は生活習慣がそれ以上に影響を与えることが最近分かっています。

尿酸は80%が尿から、残りの20%が便から排出されます。そのため、腎臓が悪くなると尿酸値が高くなります。

尿酸を治療する理由

腎臓病の患者さんで尿酸値を下げる理由は2つあります。

1:痛風を予防する
2:腎臓の障害を防ぐ
ただし後者に関しては、意見が割れておりその点については最後の章で触れます。

痛風を予防する

痛風とは、尿酸の塊が関節で起こした炎症を指し、激しい痛みや腫れを引き起こします。

日本では尿酸が9.0mg/dl以上の場合、5年間で痛風を起こす可能性が20%を越えるため、治療を開始することが推奨されています。

ちなみに、アメリカなどの海外では尿酸値11-12mg/dl以上にならないと薬を飲まないようです。

腎臓の障害を防ぐ

尿酸は腎臓の障害を引き起こす可能性が指摘されており、日本の腎臓病の患者さんに対しては、尿酸値が7.0mg/dlを超えたら内服加療を開始することが推奨されています。

この点に関しては諸説諸々あり、最近変化のスピードが速いので最後の章でまとめます。

尿酸の治療法

主に生活習慣の是正と薬の治療があります。

生活習慣の是正

まずは、生活習慣の是正から始めます。尿酸を上げる食事を減らしながら時間をかけて、減量などの生活習慣是正・体質改善を行います。

食事についてはプリン体を多く含んだ食事を控えましょう。プリン体は核酸と言われる成分の一つでビールや卵などに多く含まれます。また干し物、レバーにも多く含まれています。ビール✕おつまみのダブルパンチに注意しましょう。

薬の治療

薬に関しては、フェブリク(フェブキソスタット)・アロプリノールなどの尿酸を生成を抑える薬とユリノーム(ベンズブロマロン)・ベネシッド(プロベネシド)などの尿酸を排泄する薬があります。

よく使われるお薬は、フェブリクとアロプリノールです。両者の違いについてこの記事では細かく触れませんが、フェブリクは腎機能による薬の調整が不要なのがメリットで、アロプリノールはごくわずかに心臓合併症が少ないというメリットがある可能性があります。

尿酸と腎臓についての新しい知見

さて、ここからは医療従事者向けの内容を書きます。

繰り返しますが、尿酸と腎臓については、「しっかり下げるべき」派と「そこまで下げなくても良いのではないか」派で医師によって考え方が分かれます。

ここ数年の論文(2018年以降)をレビューしながら簡単にまとめたいとおもいます。

Uric Acid and the Risks of Kidney Failure and Death in Individuals With CKD

2018年の夏にAJKDから出た論文では以下の内容の報告が出ました。

1)eGFR>45ml/min/1.73m2の場合:尿酸が高い方が腎死になる可能性が高い。

2)eGFR<30ml/min/1.73m2の場合:尿酸が高い方が腎死になる可能性が低い。

論文での記載によると、尿酸には腎臓を壊すメカニズムと共に、腎臓を守るメカニズムがある可能性が指摘されています。

あくまで可能性ですが、もしかしたらeGFR<30ml/min/1.73m2の腎臓病患者さんにとっては、尿酸値が高い方が腎臓にはよく作用するかもしれないと考えることができるようです。

FEATHER STUDY

同年の秋に、RCTという科学的根拠が非常に高い方法を使用した研究結果が出ました。

フェブリクでの尿酸の治療により、腎臓の障害を抑えることが出来るのかを調べた結果、期待された効果は認められませんでした。

ただし、サブ解析を行った結果、タンパク尿が出ていない患者さんに対してはある程度の効果を認め、特定の患者さんには尿酸を腎臓を守る可能性も指摘されました。

PERL STUDY

2020年にNEJMから出た報告です。

1 型糖尿病と早期~中等度の糖尿病性腎臓病に対して、アロプリノールによる尿酸の治療で腎臓の障害を抑えることが出来るのかを調べた結果、期待された効果は認められませんでした。

ただしこの研究でもFEATHER STUDYと同様にアルブミン尿が出ていない患者さんに対しては、もしかしたら効果があるかもしれないという内容の結果も出ています。(ただしごくわずかです。)

CKD-FIX STUDY

こちらも2020年にNEJMから出た報告です。

CKD stage3-4に対して、アロプリノールによる尿酸の治療で腎臓の障害を抑えることが出来るのかを調べた結果、期待された効果は認められませんでした。

私はこう考えています。

ここ数年で、腎臓病に対する尿酸の治療に関しては動きがあり、まだ議論されている段階ですが、個人的にはこう考えています。

1:腎保護目的の尿酸の治療は思っていたほど期待できない。

2:ただし動脈硬化が進行した腎硬化症の場合はもしかしたら効果があるかも。

2に関しては、ラットの研究で尿酸による腎血流の変化を報告した研究があります。

あくまで基礎研究であり参考にしかなりませんが、動脈硬化が進行しており糸球体の輸入細動脈の硝子化が予想される病態には尿酸の治療が良い方向に働くような気がしています。

これは取り上げた論文における蛋白尿陰性での結果と整合性が合うような気がしています。

とは、これはあくまで個人的な見解です。基本的には日本のガイドラインに即して治療を続けていく予定です。

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