腎臓と尿酸について書きました。 〜何故尿酸値を下げるのか?〜

2018.09.03
腎臓と尿酸について書きました。 〜何故尿酸値を下げるのか?〜
腎臓と尿酸について書きました。 〜何故尿酸値を下げるのか?〜

腎臓内科医の森 維久郎です。今日は、腎臓と尿酸について書きます。尿酸と言うと、痛風を連想される患者さんが多いのですが、この尿酸は腎臓とも大きく関係していると言われています。腎臓が悪くなると尿酸値が高くなり、尿酸が腎臓を障害する可能性もあるため、必要時は薬を飲んで、治療介入した方が良いと言われていました。

しかし、実は腎臓が悪い患者の尿酸値を下げるべきか否かに関しては、世界的にはコンセンサスが得られておらず腎臓内科医の間でも意見が分かれていました。この尿酸に関して、2018年に大幅にアップデートがあったためもう一度腎臓と尿酸について一通り記事にします。(アップデートした内容のみをご覧になりたい方は最後の段落までスクロールして下さい。)

検査結果の紙には尿酸は『UA』と書かれている事が多いです。

尿酸値が高い理由とは?

尿酸が高くなる理由として食事の影響を連想する患者さんが多いのですが、実は20%程度しか影響していないと言われています。干魚、レバー、卵に多く含まれています。残りの80%は肥満、運動不足、ストレス、内蔵脂肪などの生活習慣・体質に影響すると言われています。体の尿酸は80%程度尿として排泄され、残りは便から排泄されます。そのため腎臓が悪くなると尿酸値が高くなると言われています。

何故尿酸値を上げるのか?

腎臓が悪い患者さんで尿酸値を下げる理由は2つあります。

1)痛風になるを防ぐ

2)腎臓の障害を防ぐ

1)に関しては、有名で多くの患者さんも知っている事だと思います。痛風は指先などが腫れて激痛が走るため、痛風を予防するため内服加療を行います。日本では尿酸が9.0を越えると累積発症率が20%以上を越えるため内服加療を開始しましょうとされています。一方で痛風で死に至る事は少なく、経済的に薬を飲み続ける事が難しい場合など患者さんによって薬を飲まない選択をされる方もいますし、大方問題はありません。良い悪いは別として、海外だと尿酸値11-12以上にならないと薬を飲まないそうです。

2)に関しては、最近腎臓内科界隈でも話題になっているトピックで、尿酸が高い状態が酸化ストレスと過酸化ラジカルなどの腎障害に関わるメカニズムに関与したり、腎臓の血流量に関わる事が原因なのではないかと言われています。日本では慢性腎臓病の場合は尿酸値7.0 を超えたら内服加療を開始しましょうと言われています。

しかしこの2)に関しては、諸説諸々あり、積極的に下げない方が良いかもしれないとも言われており、まだ良く分かっていません。この事は2018年にアップデートがあるため後で詳しく書きます。

尿酸値の下げ方について

食事の影響は20%程度なため、食事制限をするよりも長期的な生活習慣改善と体質改善が必要になります。そのため必要時は積極的に薬を飲んで治療をします。

一応、食事についても触れておきます。基本的にはプリン体を多く含んだ食事を控えましょう。プリン体は核酸と言われる成分の一つでビールや卵などに多く含まれます。また干し物、レバーにも多く含まれています。ビール✕おつまみのダブルパンチに注意しましょう。詳しくはこちらのサイトに詳しく書いているのでご参照下さい。

薬に関しては、フェブリク(フェブキソスタット)・アロプリノール(ザイロリック)などの尿酸を生成を抑える薬とユリノーム(ベンズブロマロン)・ベネシッド(プロベネシド)などの尿酸を排泄する薬が代表的です。腎臓が悪くなると、副作用などの観点から使いづらくなる薬が多くて、私はフェブリクをよく使用します。(10mgから開始して40mgまで増量可能。)

一方で過去にアロプリノールとフェブリクだと極わずかにアロプリノールの方が合併症の数が少ないという研究結果があり、アロプリノールを使う先生もいます。(ただ腎臓が悪いとやはりフェブリクの方が調整しやすいと考えている先生も多いです。)

 

2018年に判明した尿酸と腎臓についての新しい知見

2018年に尿酸と腎臓に関して大きなアップデートがありました。数年前までは尿酸値が高い人の方がそうでない人に比べて腎死(透析や移植が必要な状況)になる可能性が高いと言われていました。そのため、尿酸は下げた方が良いかもしれないと言われていました。

しかし、2018年にAJKDという一流誌から発表された論文の内容で以下のような結果が出ました。

1)eGFR>45ml/min/1.73m2の場合:尿酸が高い方が腎死になる可能性が高い。

2)eGFR<30ml/min/1.73m2の場合:尿酸が高い方が腎死になる可能性が低い。

実は尿酸は、前述の通り腎臓の障害を引き起こすメカニズムに作用する一方、腎を守るメカニズムも報告がされておりプラスマイナスでマイナスと考えられていました。今回の結果から、もしかしたらeGFR<30ml/min/1.73m2の腎機能障害が進行した患者さんにとっては、尿酸値が高い方が腎臓にはよく作用するかもしれないという事が分かりました。

腎臓が悪い患者さんに対して、一律に尿酸を下げようとする流れが多少ありましたが、もしかしたらeGFR<30ml/min/1.73m2以下の進行した慢性腎臓病の患者さんの場合は下げなくても良いかもしれません。

詳しい話をすると専門的になってしまいますが、これ以上の事が分かるためには介入研究という実際薬を使った人と、使っていない人を比べてどうだったかを調べる研究の結果が出るまでは結論が出ません。この介入研究も今行われている最中で数年後には結論がほぼ出ているのではないかと思います。待ちましょう。

原則上記のように考えて処方をしていますが、患者さんの背景で処方したりしなかったりしています。また質問があれば遠慮なく問い合わせして下さい。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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