<腎臓内科医直筆>腎臓病でなぜリンを下げるべきなのか? 

2018.12.02
<腎臓内科医直筆>腎臓病でなぜリンを下げるべきなのか? 
<腎臓内科医直筆>腎臓病でなぜリンを下げるべきなのか? 

腎臓内科医森です。今日は、腎臓とリンについてまとめました。実はこの「リン」という検査項目は腎臓内科以外では注目されておらず、自分が腎臓内科医になる前は採血で全く評価していませんでした。リンはここ10-20年くらいで注目されており、腎臓病においてリンをコントロールする事は死亡率に関わり大事なためこの記事でまとめました。

高リン血症とは?

腎臓は身体のミネラルを調整する働きがあり、腎臓病の患者さんはこのミネラルの調整機能が崩れてしまうため定期的に評価する必要があります。リンもミネラルの一種に相当して、腎臓病が進行するとリンが腎臓から排泄されず溜まり、高リン血症(こうりんけっしょう)の状態となります。

高リン血症は、骨折、血管の壁の石灰化に影響します。結果、心筋梗塞・脳梗塞のリスクを上げ、死亡率を上げ、腎臓病の進行にも影響すると言われています。

腎臓病でリンが上がる理由。

メカニズムに関しては、研修医の先生でも理解が難しいので患者さんとしては色んな臓器が関係しているんだなくらいの理解で問題ありません。腎臓病における身体のミネラルの調整は、主に腸管・骨・腎臓で行っています。まず腎臓が悪くなると、身体からリンを出す事が出来なくなります。

同時に腸管からのカルシウムを吸収するメカニズムに関わるビタミンDを作る事が出来なくなり、血液中のカルシウムが不足します。カルシウムを補うために骨を溶かして補おうとするのですが、同時にリンも一緒に溶けてしまい、更に身体にリンが溜まります。

このカルシウムが足りなくて、リンが溜まっている状態をなんとかしようとして副甲状腺(ふくこうじょうせん)という首周りの臓器が働いて調整を行います。

このメカニズムを経て、骨折・副甲状腺機能亢進症・血管の石灰化が起きると言われています。

リンを下げるために

「リン」を下げる方法は二種類あって、食事制限と内服加療です。

食事制限

肉類や魚類・卵類・牛乳などのタンパク質に多く含まれていると言われています。また食品添加物にも多く含まれています。ここでポイントになるのが、高リン血症に関わる食品とそうでない食品がある事です。

栄養指導をする際に、一律タンパク制限を指導してしまう事が多いのですが、腎臓病の患者さんは塩分制限・時には野菜・果物制限されている事が多く、結局何を食べたら良いか分からなくなります。また腎臓病の患者さんは高齢者が多く、過度な食事制限で筋力が落ちたり、衰弱してしまう可能性があります。

リンには二種類あり、「有機リン」と「無機リン」があります。「無機リン」は「有機リン」に比べて腸管で吸収が良く、身体のリンの値を上げてしまいます。ハム・ソーセージ・缶詰・清涼飲料水に含まれている食品添加物に多く含まれており、注意が必要です。

一方で、肉類・魚類などに含まれる「有機リン」は半分程度しか腸管で吸収されないため「無機リン」に比べると食事制限の優先順位は落ちます。個人的な治療方針としては、患者さんによって個人差もありますが、食べ過ぎるのは良くない程度に伝えています。

内服加療

食事療法でコントロールが難しい場合は、薬を使用します。薬の名前としては、ビタミンD製剤、ホスブロック、キックリン、レナジェル、リオナ、カルタン、ホスレノール、ピートル、レグパラなどがあります。

これらの薬の使い分けについて細かく書くとキリがありませんが、嘔気や下痢の消化器症状が起きるため適宜薬を変更します。また、リンを下げるだけでなく、鉄分を補充したいときにはリオナなどを使用します。

これらの薬剤を使用する際に、「リン(P)」だけでなく「カルシウム(Ca)」や「intact-PTH」という値を評価して全身のリンに関わる臓器について評価をします。

プラスアルファで運動療法

腎臓病に対して、運動療法の重要性が注目されており、腎臓リハビリテーションという概念が誕生しました。日常的な有酸素運動・筋力トレーニングを行う事で死亡率・腎臓の障害を抑える事が出来ると言われています。

また、タンパク制限によって生じる筋力低下を防ぐ事が出来るとも言われています。透析の患者さんでは、運動療法でリンの値をコントロールする事が出来ると言われており、食事制限・内服療法に加えて積極的に運動療法を勧めています。

リンを下げる優先度はどの程度?

ここまで、腎臓病とリンについてまとめました。個人的な考え方としては、腎臓病の患者におけるリンの重要性は比較的高くないと考えています。「血圧」・「減塩」・「運動」が最重要事項で、加えて糖尿病の方は「血糖」、高コレステロールの方は「コレステロール」をしっかりコントロールする事が先決です。

更に定期的な運動としっかりとした食事摂取・カロリー摂取をして筋力がしっかり保たれている若い方でさらなるステップアップとして異常値があれば治療する程度です。

腎臓病とリンについては様々な研究がされていますが、科学的根拠が非常に高くて、これは明らかにリンを最重要事項として治療をした方が良いという結果はまだ無いと思います。2018年の腎臓病のガイドラインにも比較的に控え目な記載になっています。

ガイドラインを縦読みしただけ、診療に優先順位をつけずに教科書通りにしか治療しない医療関係者だとリンの値をみて、「タンパク制限!」「内服開始!」という介入してしまいがちになります。

結果、筋力低下がある患者さんにタンパク制限をしてしまったり、血圧が高くて塩分制限が全く出来ていない患者さんがタンパク制限ばかり気にしていているという現状をよく目にします。腎臓内科.comでは重要性に緩急をつけて、情報提供を取捨選択する事を大切にしています。

 

今日のまとめ

1:腎臓病では様々な臓器が関わり高リン血症が起きる。

2:高リン血症は、骨折、死亡リスクに繋がるため食事療法・内服療法を行う。

3:ただし、重要性・優先順位に関しては、血圧・塩分・運動に比べると大きく劣るので時には治療しない事もある。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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