【腎臓内科医直筆】腎臓と塩分の関係についてまとめました。

2018.08.10
【腎臓内科医直筆】腎臓と塩分の関係についてまとめました。
【腎臓内科医直筆】腎臓と塩分の関係についてまとめました。

腎臓内科医の森です。今日は何故、腎臓病の患者さんに塩分制限が必要かを書きます。腎臓病の患者さんは塩分を制限する必要があります。テレビや新聞では『豆腐が良い、魚が良い、サプリメントが良い・・・』みたいな話ばかりを報道しますが、間違いなくその数十倍以上、塩分摂取の管理の大切です。

何故、腎臓病患者に塩分制限が必要かと言うと、ズバリ『塩分制限が血圧管理に非常に重要であるから』です。

腎臓病患者は血圧コントロールが良くない。

血圧と腎臓は密接に関わっており、慢性腎臓病(CKD)の患者さんは血圧が高い患者さんが多いです。日本ではこんなデーターがあります。(Konta T et al Am j Hypertens 2012;25:342)

「CKDの患者で、高血圧を有する患者は58%いる。」

更に慢性腎臓病(CKD)が進行すればする程頻度は高くなり、透析になった患者さんでは高血圧の患者さんの割合は更に多くなります。

「CKD stage4-5で血圧の目標を達成している患者は4人に1人しかいない。」

「透析患者で高血圧を有する患者は84%いる。」

腎臓病患者の血圧コントロールは非常に大切!

腎臓病患者の血圧コントロールは非常に大切です。理由は2つあります。

1)血圧コントロールで透析になるのを遅らせる。

(Bakris GL AJKD 2000:36;646-661)

英語で少し分かりづらいと思いますが、右に行けば行くほど血圧が高い事を示して、下に行けば行くほど腎機能低下の進行が早い事を示します。この表からは以下の結論が読み取れます。

血圧が高い程、腎機能低下の進行は早い。

2)血圧コントロールで死亡リスクを下げる。

慢性腎臓病(CKD)患者では、心筋梗塞や脳梗塞になるリスクが何倍にもなると言われています。

(NIPPON DETA80より引用・改変)

過去の日本のデーターからは、血圧、特に収縮期血圧(上のデーターは)をしっかりコントロールする事が死亡率を減らすと言われています。収縮期血圧180mmHg以上の方は、5倍以上死亡率が上がると言われています。

(NIPPON DETA80より引用・改変)

更に、30-64歳男性に限ると、収縮期血圧180mmHg以上の方は、なんと18倍以上死亡率が上がると言われています。特に、この腎臓内科.comを読まれているような40-60歳ぐらいの方は要注意です。

収縮期血圧が高い程、死亡率は高い。

減塩は血圧コントロールに非常に有効。

(Intersalt Research参照)

英語で見づらいのですが、横軸が塩分摂取量、縦軸が収縮期血圧です。塩分摂取量が多い人程、血圧が高くなります。3g/日以下になると塩分摂取量が少ないとされていますが、現代人の生活特に加工食品などから塩分摂取はされるので相当制限しない限り、3g/日以下にはなりません。基本的には『塩分摂取は少なければ少ない程良い』というイメージで考えてください。夏場などは過度な塩分制限に気をつける程度で良いです。

本当に減塩が慢性腎臓病(CKD)の患者さんに望ましいかを詳しく知りたい方は日本高血圧学会のChapter2の『本当に減塩は心血管病をへらすのでしょうか』と項目を参照してください。(https://www.jpnsh.jp/general_salt.html

減塩は血圧を下げるだけでなく、『降圧薬が効きやすくなる効果』があります。実際外来をしていても、減塩をしっかりしている患者さんは非常に良く降圧薬が効くようになり、降圧薬を1種類、2種類減らす事が出来ます。

日本人は塩分摂取が多い??

日本人の平均塩分摂取量は11g/日と言われています。慢性腎臓病(CKD)患者の目標塩分摂取量は3-6g/日です。塩分摂取量を1/3〜1/2の量に減らす事は非常に困難です。また慢性腎臓病(CKD)患者さんでは、塩分に対する味覚が低下すると言われています。((Kidney International (2009) 76, 638–643))

上記の表で、Recongnition thresholdとは、塩分を塩分だと感じる事が出来る閾値の事で、ざっくり味覚の敏感度みたいな値です。

特殊な検査で『0.6』の濃度で、これが塩分だと分かる人は、健康な人だと7-8割程度なのに対して、慢性腎臓病(CKD)の患者さんで3割程度しかいなかったという研究結果を示しています。塩分を感じる事が出来ないため、より濃い食べ物でないと満足出来ない状態になっています。ただでさえ、日本人の塩分摂取は世界基準でもかなり多いのに、慢性腎臓病(CKD)患者では更に多くの塩分摂取をしている可能性があります。

この研究に続きがあって、上記の表が示しています。左半分の白塗りの部分が慢性腎臓病(CKD)患者の結果で、言葉に変えると『1週間塩分摂取を控えると味覚が良くなる』という事が分かりました。

実際外来をしていて思う事。

私は腎臓内科医の中では食事制限に関しては患者さんに甘い方だと思います。しかし、塩分制限は強調して重要性を伝えるようにしています。患者の中には心配になり色々調べた結果、スイカが腎臓に良いと聞きつけてスイカを毎日1個食べてきて糖尿病が悪化したり、全く科学的根拠がないのにトマトのリコピンが良いと聞いて毎日トマトを食べてきたり、発酵食品が良いと聞いて毎日味噌汁を飲んで血圧が上がってしまう人もいます。シンプルにいきましょう。私は、塩分制限は数ある食事療法の中で一番大切だと考えています。

減塩が血圧コントロールに繋がり、血圧コントロールが腎臓の障害を抑えます。

色んな情報に惑わされず、塩分をコントロールしている患者さんは血圧コントロールが良好な事が多いです。(本当に10-20mmHgくらい下がり、逆に血圧が低くなって降圧薬を減らすくらいです。)また、日本人の塩分は加工食品から摂取されている事が多く、自炊している患者さんの方が上手くいっている印象です。

実際、塩分6g/日以下を達成出来る患者さんは極わずかです。出汁を使ったり、酢を使ったりするような様々なテクニックを使ったり、通販の減塩弁当を使用したりする事で達成出来ます。最近では『ソルトチップ』のような塩分の味覚を増強出来る健康食品も発売されています。

もちろん、6g/日以下が目標です。しかしながら、達成出来なくても7gでも8gでも良いので辛抱強く続けてください。塩分制限を続ける事で味覚が慣れるとも言われています。ゆっくり、ゆっくりやっていきましょう。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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