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タンパク質制限の効果はどれほどあるのか

こんにちは、じんぞうの学校の校長で腎臓専門医の森 維久郎です。

この記事では腎臓病の患者さんにとって一番悩みの食事の治療について触れたいと思います。

慢性腎臓病の患者さんでは、タンパク質の量を減らすことが望ましいと言われています。

CKD診療ガイドライン2018でも「腎臓病の進行を抑制するためたんぱく質摂取量を制限することを推奨する」と記載されています。

実はこの腎臓病におけるタンパク質制限に対して医師によって賛否両論あり、意見が分かれています。

個人的には慢性腎臓病の患者さんで本当にタンパク制限が必要な方は2-3割な気がします。

この記事では現段階で分かっている腎臓病とタンパク質制限の治療について、個人的な見解も交えて解説したいと思います。

タンパク質制限の効果

腎臓病の患者さんでタンパク質を制限するのは以下のような理由があります。

  • 腎臓にかかる負担を減らす。
  • 尿毒症のリスクを減らす。
  • 血液中のリンが増えないようにする。

腎臓に掛かる負担を減らす。

食事から摂取したタンパク質は、代謝されて必要な分は筋肉などに取り込まれて、不要な分は最終的に尿から排泄されます。

必要以上にタンパク摂取をすると尿から排泄する老廃物の量が増えて、これが最終的に腎臓の糸球体(しきゅうたい)という老廃物をやり取りする場所に負担を与えると考えられています。

尿毒症のリスクを減らす。

腎臓病が進行して、腎臓病ステージ4以降になると腎臓の体の老廃物を出すという役割が鈍り体に老廃物が貯まるようになります。尿毒素という老廃物が貯まる状態を尿毒症(にょうどくしょう)と言い、透析が必要になる一歩前の段階で見られる症状です。

尿毒症は、食思不振・倦怠感・意識障害などの症状を引き起こし命に関わるため、尿毒症がコントロール出来なくなったら透析を始めるという判断をします。

タンパク質を制限することで、尿毒素の量を減らして尿毒症になる可能性を減らすと考えられています。

血液中のリンが増えないようにする。

腎臓は身体のミネラルのバランスを整える役割があるのですが、腎臓病だとこの能力が衰えてミネラルバランスが崩れます。リンもミネラルの一種で腎臓病だとリンが溜まってしまいます。高リン血症といいます。

高リン血症は骨折や動脈硬化などに大きく影響を与えて心筋梗塞などのリスクを上げたり、腎臓病の進行に影響すると考えられています。

タンパク質を多く含む食品には、リンも含まれていることが多くタンパクを制限することが高リン血症の治療につながると考えられています。

 

タンパク質制限のデメリット

  • 筋力低下のリスク
  • 精神的ストレス

筋力低下の恐れ

タンパク制限をする際に特に気をつけなくてはいけない事は、炭水化物、脂質の他の栄養素でしっかりカロリーを補い総カロリーを減らさないようにする必要があります。

腎臓病の場合、健常人の比べて身体機能が7割まで低下していると報告されておりしっかり食べて、しっかり運動することが必要です。

しかしタンパク制限などの食事制限によって、何も食べなくなり、筋力が衰える事が多々あります。

そのため腎臓内科医、栄養士などの定期的なサポートとチェックを行い、適正なカロリーを摂取しているかを確認する必要があります。

精神的ストレス

腎臓病と食事摂取量を調べた結果、腎臓病の患者さんは他の患者さんに比べて食事量が低下しているという報告があります。

加えて、食事制限によって精神的ストレスが溜まり、QOLが低下するといった報告があります。

日本の腎臓病ガイドラインでも精神的なストレスのケアを行う必要性があると記載されています。

 

私見

様々な研究結果を漁って調べてみた結果、最終的に個人的に以下のように解釈しています。

  • どちらにしろタンパク質の摂りすぎは良くない。(1.3g/kg/日以上)
  • 腎臓病ステージ3aではあまり有効性が証明されていない。一方で腎臓病ステージ4.5だと比較的効果が期待できそう。
  • 動物性タンパクだけを減らすという考え方
  • 後期高齢者は筋肉量が落ちる可能性があり良くない。

どちらにしろタンパク質の摂りすぎは良くない。

腎臓病ステージ1,2のような軽症の場合も、タンパクの摂りすぎは良くないとされています。体重あたり1.3g/日は超えないようにする必要がありそうです。

これは日本の腎臓学会、国際的な腎臓機関であるKDIGOも同様の発表しています。一方で腎臓病ステージ1,2のような軽症の場合、過剰にタンパク質を制限する必要はありません。

腎臓病の場合、塩分、カリウムなど食事に関して、意識すべき点が一杯あります。

全てを達成するのは不可能なので、優先順位が大切でありタンパク質に関してはステージ1,2であればある程度気にするくらいがちょうど良いと思います。

腎臓病ステージ4.5だと比較的効果が期待できそう。

タンパク制限は尿毒症や高リン血症に効果があると言われています。

腎臓病ステージ4,5辺りになってくると尿毒症、高リン血症の頻度が高くなります。

比較的若くて元気な方で、食事管理がしっかり出来そうな場合は腎臓病ステージ4,5辺りになってきたら積極的にタンパク制限を勧めています。

動物性タンパク・植物性タンパクどちらを減らすか

タンパク制限をする場合は少ないタンパクから効率よくアミノ酸をとる必要があるので動物性タンパクの摂取が推奨されていますが、タンパク制限をしない場合は植物性タンパクは制限しないという考え方もあります。

過去に植物性タンパクの方が、動物性タンパクと比較してリンの吸収や毒素の吸収が少なく、植物性タンパクをとっている方が動物性タンパクをとっている方よりも腎機能障害の進展が緩やかだったという小規模研究の報告もあります。

状況や全体での食事療法の考え方に植物性タンパクと動物性タンパクのいずれを制限するかは異なると考えてよいでしょう。

後期高齢者は筋力低下・QOL低下の可能性があり良くない。

75歳を越えた後期高齢者には、原則タンパク制限は勧めていません。

若い人に比べて、後期高齢者は筋力・QOLの重要性が高まります。

寝たきり、認知症、生きがいなどが非常に大切に要素になり、食事制限はこれらの大切なものを奪う可能性があります。

 

腎臓病の食事療法でお悩みの方へ

あれもだめ、これもだめと悩んでいる腎臓病の患者さんを多くみかけます。

じんぞうの学校のブログでは腎臓病の方でも食べやすい食事のレシピを一部公開しています。

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