腎臓内科.comが目指す医療情報発信とは?〜サイトを立ち上げて1年が経ちました。〜

2018.07.28
腎臓内科.comが目指す医療情報発信とは?〜サイトを立ち上げて1年が経ちました。〜
腎臓内科.comが目指す医療情報発信とは?〜サイトを立ち上げて1年が経ちました。〜

この『腎臓内科.com』を書き始めて1年経ち始めました。最初は、自分の外来患者さんに対して、外来で病気の事を説明する時間が足りない事に問題意識があり、情報を外来の場からWebにアウトソーシングしてはどうかと思ったのがきっかけでした。

意外と反応が良くて、外来の待ち時間に読んでもらい、患者さんの知識がついてから外来で話をすると理解が非常に良く、飛んでくる質問の質も良く、建設的な外来診療が出来るようになりました。

また私みたいな若手医師が診療していると最初患者さんに『この人大丈夫かな』とか思われてしまうのですが、『腎臓内科.com』を読んでもらうとこの情報提供サイトが信頼の担保となって意外とラポールがスムーズに築く事が出来るようになる事が分かりました。

 

こんな感じで内輪でやっていた情報発信ですが、少しずつファンがついていき、サイト自体には毎日数百人〜数千人という来訪者が安定してつくようになりました。

個人的に嬉しいのは、1年前に書いた記事も安定して読まれている事です。時流やトピックでなく、地味かつ当たり前だけど大切な事、そして現状伝わっていない事をどれだけ届けているのかのメルクマールは、最大瞬間風速のアクセス数ではなく、細く長くのアクセスに反映されると思っているからです。

 

1年経って、記事も100記事越えて、最近では1日に1件程の問い合わせが来るようになっています。その中で診察に結びつくのは極わずかですが、少しづつ増えています。

 

色んな人に『馬鹿だな』と言われますが、ずっとちゃんとしたSEO対策をしませんでした。自分の性格上、SEO、PVに目が眩み絶対『手段が目的化』してしまう事が眼に見えていたからです。『読まれなければ意味が無い』という意見は勿論分かっていたし、正論だと思う一方、『手段が目的化』して使用されるフック表現、不安を煽る表現、医学的な重要性が低い事象を『実は〇〇なんです。』という表現を使いあたかも『最も重要な事』のように魅せる報道が乱立している中、『あの人はブログは読みにくかったとしても、取り敢えず間違いはなさそうだ。』という立ち位置を築く、少なくとも自分の担当患者さんだけは混乱しないようにする事に『腎臓内科.com』の価値があると思ったからです。

 

その事を痛感したのは、昨年の秋です。IgA腎症という病気になった患者さんで扁桃摘出術+ステロイドという薬を使った治療を行う予定だった患者さんが、週刊現代の記事を読んで心配になり、治療を辞めてしまった事がありました。外来での出来事でしっかり説明出来れば良かったのですが、当時症状が乏しいB型インフルエンザが流行り、『隠れインフルエンザ』という言葉が流行して、症状が全く無いような患者さん、特に免疫抑制をかけている患者さんが不安になり外来に殺到して、時間が忙殺されて、中々その患者さんに説明する時間が取れませんでした。(『隠れインフルエンザ』という言葉を誰が作ったか分かりません、身内だったらすいません。)

 

最終的に、治療開始まで数ヶ月後かかってやっと説得して治療を開始出来ました。読みにくても、地味でもなんでもいいから『腎臓内科.com』にステロイドについて書かれた記事があれば、また違ったかもしれません。この出来事をきっかけに、取り敢えず量を書こうと決めました。『どんだけマイナーな事で、誰がこんな記事読むんだよ』っていう内容の記事も取り敢えず自分の担当患者さんが1人でも情報提供が必要になったら記事を書くようにしています。

最近思うのは、どんだけ読みづらくて、フックが無くても、『本当に困っている人、本当に情報が必要な人はしっかり読みきる』事が分かりました。読みやすさは大切ですが、読みやすさは最重要事項ではない事も分かりました。

 

最近では『メディカルノート』や『medley病気辞典』のような医師監修で洗練されたWebライターが書くサイトも出てきました。(medleyは医師が書いているようですね。)読みやすいし、正確です。メディカルノートのとあるライターさんが『メディカルノートの記事は、私達ライターのおかげで、読まれるようになった。正直、医師の伝え方のセンスの無さには唖然とする。』と面と向かって言われてしまい、『ごめんなしゃい』ってなってしまいましたが、それでも正確かつ読みやすいサイトも誕生し、患者さんの下に情報が届いているのは凄く価値があると思います。(書き方は最重要事項では無くても、今後鍛錬させていく必要があるのかもしれません。)

 

身内で始めた情報発信も、担当患者さんじゃない方にも届くように成り、色んな患者さんが来ました。

血尿が出ているけど、精査の適応外と言われて、たらい回しになっていて、『腎臓内科.com』をみて来院。腎生検をしてIgA腎症の診断となり、治療介入して、現在は寛解して内服薬なしになっている患者さん。

腎臓が悪くて、蛋白制限、塩分制限を指導されたが、他の病気で炭水化物制限、脂質制限を指導されて何を食べたらいいかわからず5kg痩せてしまったおじいさん。この記事をみて情報提供を求めて来院。

肥満関連腎症という肥満が関与した腎臓病の方で、どこの病院にいってもダイエットに成功出来ず。気合が入った森が記事を書き応援して、1年で12kgの減量に成功して尿蛋白が陰性化した症例。

 

20世紀は、映画やテレビを経て情報(=コンテンツ)を皆で共有する時代でした。それに合わせて、情報を作る側もコンテンツを『大衆化(=大多数に届くコンテンツという意味合い)』する必要があると同時に、情報を受け取る側も暗に『大衆化』されたコンテンツに合わせて暮らす時代だったと思っています。それが21世紀になりインターネット、スマートフォンが誕生して、情報を作る側、情報を受け取る側がドンドン多様化しています。人が求める情報も多様化して、ネット上に乱立する情報も多様化しています。

 

一方で、医学的妥当性は科学的根拠で成り立っており、簡単には多様化しません。例えば、『塩分制限が降圧療法にとって必要』という事実はここ数十年は不変の事実です。塩分制限という情報発信に何の面白みもなく、無機質であり、絶対メディア映え、インスタ映えしません。更に腎臓領域だと、高血圧、糖尿病の患者さんはどちらというと健康に全く興味が無い人が多くて、面白くないと読んでもらうことが出来ません。

このジレンマに相当苦労して、日々試行錯誤しています。数ヶ月前までは、『医学的根拠さえ正しければ、価値がある!』と思っていましたが、そんなに甘くはありません。価値を決めるのは患者であり、読者です。最近では、知り合い朝日新聞の記者の人の記事とか、NHKの記者の記事、医者界では中山裕次郎先生の記事を読んで、盗める所は盗もうとして、伝え方を学んでいます。

 

そんな中でも『腎臓内科.com』としては、多様化し乱立する医療情報の中で、『あの人はブログは読みにくかったとしても、取り敢えず間違いはなさそうだ。』という立ち位置を変えず、どんどんこのサイトの内容をもっと充実させて数百記事になるくらいになるまでは、本質的な医学的根拠、科学的根拠に95%以上のウェイトを置いて書き続けようと思っています。今後とも宜しくお願いします!

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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