慢性腎臓病(CKD)でも適量であればワインは飲んで良い! 〜腎臓内科医が医学的考察をしてみた。〜

2018.07.17
慢性腎臓病(CKD)でも適量であればワインは飲んで良い! 〜腎臓内科医が医学的考察をしてみた。〜
慢性腎臓病(CKD)でも適量であればワインは飲んで良い! 〜腎臓内科医が医学的考察をしてみた。〜

今日は腎臓とワインの話をします。医師としての医学的考察をした結果、『意外と適量であればワインは飲んでも良いかもしれないぞー!(ただ分かっていない部分も多い。)』という結論になりました。

ワインが好きになってしまいました。

何故、この記事を書き始めたかというと、正直に僕が勝手に最近ワインが好きになったからです。家の近くにワイナリーを見つけてしまい、週3日は飲んでしまっています。

最近、ワイン好きの患者さんがいて外来の隙間時間にカベルネが良いとか、チリ産は○○と合うみたいな話を教えてもらったのですが、『腎臓悪くても僕ワイン飲んで良いんですかね?』と言われて、良く分からず誤魔化してしまったので、調べ直して記事にしてみようと思います。

最近の診療のモットーは『何を食べていけないか』ではなく、『何を食べて良いか』にFocusする事で、今日はワインをテーマにまとめてみようと思います。

なぜフランス人は心筋梗塞になる患者が少ないのか?

今から25年くらい前に、『フランス人は飽和脂肪(バターとか肉)の摂取量が多いのに、何故心筋梗塞が少ないのか?』という事が話題になり、『もしかしたらワイン(アルコール)が関係しているかもしれない』という考察がされている論文が発表されました。

あくまで、ワイン(アルコール)の効果の可能性が指摘されたに過ぎないのですが、当時は非常に話題になりLancet(ランセット)という一流の雑誌で発表されました。

ワインが良いのか?アルコールが良いのか?

先程伝えた研究では、ワインが良いのか?アルコールが良いのか?が分かりませんでした。今から15年くらい前にお酒と心筋梗塞などの心血管イベントについて調べた研究があります。この研究はメタアナリシスという方法で調べられており、Ciruculationという循環器の世界では信憑性が高い雑誌から発表されました。

この論文の面白いところは、ワインの方がビールより心血管イベントの抑制に大きく関わるという結果となった事です。ワイン特有の効果があるのか、それともワインを飲むような人は社会的地位が高くて、健康的な人が多かったのか、つまり鶏なのか卵なのかという議論がされました。その後、ワインに含まれるポリフェノールなどの物質が心筋梗塞や腎障害に関わる酸化ストレス、内皮細胞という箇所の障害を抑制する事が動物実験レベルで分かってきました。

赤ワインじゃなくて白ワインでも良いの?

赤ワインに含まれるポリフェノールは白ワインには不足しているが、それでも白ワインにも心筋梗塞などの心血管イベントを抑制する可能性が発表されました。白ワインにはチロソールやヒドロキシチロソール(私もよく分かりません。)というフェノール類を含んでおり、心血管イベントを抑制に大きく関わっていると考えられています。オリーブオイルにも同様の物質が含まれています。白ワインとオリーブオイルを使った食事をすると腎障害の進行の原因となる慢性炎症が抑えられたという研究です。

ちなみに、慢性腎臓病(CKD)の治療で、食事療法というのは非常に重要な立ち位置になるのですが、その中でも地中海食というオリーブオイル、ナッツ、野菜、果物を中心としたギリシャからイタリアの食事は、脳梗塞、心筋梗塞を抑える効果があると言われています。これは、医学界でも結構有名な話です。

心臓じゃなくて腎臓はどうなの?

今まで心筋梗塞などの心血管イベントに関して触れてきました。腎臓が悪くなると、心臓の病気になりやすいので非常に慢性腎臓病(CKD)患者さんにワインは適量であれば勧めやすいです。

一方で、やはり知りたいのはワインを飲むと腎臓を守って、透析を先送りに出来るのかだと思います。残念ながら、ワインと腎臓の直接的関係を調べた信憑性の高い論文はありません。しかし、以下の2つの研究結果はあります。また、2014年にアメリカで、ワインを1日1杯以下程度飲む人は、全く飲まない人に比べて慢性腎臓病(CKD)の有病率が低い事を示した研究があるそうですが、まだ論文としては発表されていないようです。(この論文も鶏なのかと卵なのかという議論に結論は出ていないようです。)

1)CR-LIPE食は糖尿病性腎症の進行を遅らせる。

CR-LIPE食という低炭水化物、高脂肪、鉄の吸収率の高い者(良い和訳が思いつきませんでした。)、そして適度なワインを飲むようにして3.9年間フォローした所、CR-LIPE食を採っている人達は採ってない人達に比べて、糖尿病性腎症の進行を遅らせる結果となりました。この結果を元にワインが腎臓を良くするとは決して言い切れませんが、参考になる結果だと思います。

2)ワインやアルコールが血圧を下げる。

適量のワインやアルコールを飲んだ人は、全く飲まない人に比べて高血圧に関連する死亡の頻度が少ないという結果です。高血圧は腎臓に大きく影響を与えるため、ワインやアルコールが血圧を下げて、腎臓を守る方向に働く可能性があります。

結局ワインは飲んでも良いの?

長々と過去の研究を参照しましたが、まだ分かっていない事も多いし、もう一歩踏み込んだ研究が必要になりますが、個人的な結論としては、

『1-2杯の適量なワインは飲んでも良い(もしかしたら飲んだ方が良い可能性がある。)』

一方で腎機能障害がかなり進行して透析などの腎代替療法一歩手前の段階の患者さんは体内のカリウムを中心としたコントロールが必要になっている可能性が高く、ワインにはバナナ1/6程度のカリウムが含まれているため要注意です。また3杯、4杯とワインを飲むと血圧が上がったりする可能性があるのであくまで適量です。おつまみは塩分控えめで行きましょう。地中海食をイメージして食事を食べると良いと思います。

 

慢性腎臓病(CKD)の患者さんは『あれも食べちゃ駄目、これも食べちゃ駄目』と言われがちです。結局、何を食べたら良いか分からなくなり、パニックになる患者さんも多くいます。またお酒や食事は人生の楽しみです。医者として医学を追い求めるあまり、人生でより大切な物を患者さんから奪っているのではないかと常日頃から自問自答しています。

 

慢性腎臓病(CKD)の患者さんは高齢者が多いため、どうやって家から飛び出して、社会的接点を作ってもらったり、歩いたりもらったりする仕組みを作るのかは非常に大切だと思っていて興味があります。クリニックの横にワイナリーでも作ってみようかなと思っています。(あくまで妄想中です。)ワイン学校でも通いましょうかしら。では失礼します。

 

 

医者にとって『これを食べて良い』という事は非常に怖い事であり、今回の記事で適量のワインは飲んでも良いかもしれないと伝えました。この記事で不安になったり、混乱が生じてしまった場合、責任をとって診察させて頂きます。診察希望の方は下記のURLをご参照して頂き、森の外来日に受診予約して下さい。

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森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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