膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)とは?

膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)とは?
膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)とは?

膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)についてお話します。日本語で書くと病名が非常に長いので、現場では英語でMPGN(エムピージーエヌ)と読んでいるのでこの記事でもMPGNと書きます。

MPGNも以前このサイトで触れたFSGSと同様に非常に理解が難しい病気です。理解を難しくしている原因として、MPGNは厳密には病気の名前ではなく腎臓の糸球体(しきゅうたい)という必要なもの・不要なものをやりとりする場所の障害の形を表している事が挙げられます。一般の方からするとなんじゃらほいって感じですね。

Aという原因でも、Bという原因でも取り敢えず障害されて、糸球体が特徴的な形になっていればMPGNと言うことが出来ます。治療も予後も原因によって異なるため、MPGN全体の治療法・MPGNの予後(今後の経過)は一概に言い切る事が出来ないのです。

「病態」ではなく「形」で診断するのがMPGNなのですが、近年メカニズムが解明されてきて、「病態」でも説明されるようになり、「病態」の概念と「形」の概念がごちゃまぜになり、更に良く分からなくなってきた病気です。今後更にメカニズムが明らかになるとドンドン整理されていくと思います。

『腎臓内科.com』は基本的に患者さん向けに記事を書いているので、「原因からの視点」でパターン分けをしてMPGNを説明していきます。

MPGNの症状と診断について

健康診断などで行われる尿検査で、血が混じる尿潜血、タンパクが混じるタンパク尿で見つかることが多いです。急激に障害が進行するパターンもあれば、ジワジワ障害が進行するパターンもあります。

採血でクレアチニンという腎臓の障害を調べる項目があるのですが、クレアチニンで腎臓の障害が進行していると考えられる場合はなるべく早くに精査をした方がよいと考えられます。

また尿に大量にタンパクが漏れたり、尿に大量に血液成分が漏れることもあります。尿に大量のタンパクが漏れると、ネフローゼという身体に必要なタンパクが不足して身体が浮腫んだり、体重が増えたり、呼吸が苦しくなって死に至る状態になる可能性が出て、尿に大量の血液が漏れると肉眼的血尿(にくがんてきけつにょう)という真っ赤な血尿が出ることもあります。

診断には腎生検(じんせいけん)という腎臓の組織を調べる検査を行う必要があります。(腎生検についてはこちらにまとめました。

MPGNをパターン分けして考えてみます。

今までは、MPGNは「病態」ではなく「形」でパターン分けして予後(今後の状態の予想)を考えていました。GoogleでMPGNについて検索すると、腎臓の糸球体(しきゅうたい)の形から1型、2型、3型に分けられてある程度予後を予測出来るという書かれ方をされていると思います。

近年、「病態」で理解が深まったことや、患者さん目線で分かりやすく説明するためにこの記事ではなく「病態」でパターン分けをして説明してみようと思います。

基本的に3パターンに分ける事が出来ます。

免疫グロブリン沈着型

体の免疫の中で大きな役割を担っているのが、免疫グロブリンです。体の中に慢性的な炎症や異常な免疫活動があると、この免疫グロブリンが持続的に働いた結果、体内の様々免疫活動が起きて、最終的に腎臓を攻撃してしまう事があります。具体的には、主に以下のような原因が考えられます。

・慢性感染症:特定の細菌感染症、肝炎ウイルス、真菌、寄生虫など

・自己免疫疾患:関節リウマチ、ループス腎炎、シェーグレン症候群など

・異常なタンパク血症:慢性リンパ性白血病、PGNMID、イムノタクトイド糸球体症、混合性クリオグロブリン血症など

・その他:悪性リンパ腫、悪性黒色腫など

背景の疾患が特定出来る際は、こちらの治療を行います。

補体依存型

体の補体(ほたい)という免疫を司る機能に何らかの異常があって起きるものです。難しくなるので深くは言及しませんが、自分の体を攻撃してしまう自己抗体(C3NeFなど)の存在や遺伝子異常(FactorH遺伝子など)が原因で、補体の第2経路という経路が異常に活性化していると起きます。

原因が自己抗体ならステロイドなどの免疫抑制療法を行い、遺伝子異常ならエクリズマブなどの特殊な治療を行います。(日本では保険適応外です。)

補体依存型のMPGNは近年C3腎症(シースリーじんしょう)という概念でまとめられています。(C3腎症についてはこちらへ

どちらでもない

免疫グロブリンや補体に異常が無いのに、MPGNの形をとる疾患がここに分類されます。

・原因がよく分からない一次性のMPGN

・内皮細胞障害を来す疾患:糖尿病性腎症、抗リン脂質抗体症候群、悪性高血圧など

・放射線照射による腎症など

一次性のMPGNの場合は、子供に発症して予後はタンパク尿の量や、腎臓の組織の所見で異なりますが、比較的不良です。ステロイドによる治療を検討します。

ちなみに、原因がよく分からないMPGNは「疾患としてのMPGN」とも言われます。つまり、患者さんを診断をして「MPGN」と診断されたと聞いた時に、それは「疾患としてのMPGN」なのか、それとも「形としてのMPGN」なのかを見極める必要があります。(複雑ですよね・・・)

MPGNは未だ概念が整理されていない病気で、説明が難しくなるべく分かりやすく説明出来るように工夫しました。分からない事があれば診察室で遠慮なく質問して下さい。

診療依頼はコチラ > 記事の一覧へ >

管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

    リンク先はこちら

  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

管理人近況の一覧はコチラ