多発性嚢胞腎(ADPKD)とは

2018.06.20
多発性嚢胞腎(ADPKD)とは
多発性嚢胞腎(ADPKD)とは

腎臓内科医の森です。今日は、多発性嚢胞腎(ADPKD)について触れます。

多発性嚢胞腎とは。

多発性嚢胞腎とは、嚢胞(のうほう)という液体の塊が腎臓に出来て元々の腎組織が圧排される病気です。腎臓だけではなく、肝臓、膵臓、脾臓にも認めて、脳動脈瘤、心弁膜閉鎖不全、大腸憩室などの合併症を伴う事もあります。日本人では約5000人に1人がなる最も多い遺伝性腎疾患です。この多発性嚢胞腎の方は、年齢と共に徐々に腎機能が悪くなり、60-70歳頃に約半数が腎不全に至ると言われて、日本で透析になる人の2-3%を占めます。

症状について

多くは無症状で、健康診断や人間ドックで超音波検査をやった時に偶発的に認める事が多いです。症状として出現する時は、腹部膨満感、血尿、尿路感染症などが見られます。また高血圧や脳動脈瘤による出血などで見つかる事もあります。

検査、診断について

検査としては超音波、CT、MRIなどで嚢胞の大きさ、数を確認します。また脳動脈瘤は合併症として重篤であり、数年に1度スクリーニングとしてチェックします。

診断としては、家族に同様の病気の人がいるかいないかで異なります。(多発性嚢胞腎診療ガイドライン2017参照)

家族内に多発性嚢胞腎患者がいる場合

・エコーで両腎に3個以上の嚢胞がある。

・CT、MRIで両腎に5個以上の嚢胞がある。

家族内に多発性嚢胞腎患者がいない場合

・15歳以下→CT、MRIで両腎に3個以上の嚢胞がある。

・15歳以上→CT、MRIで両腎に5個以上の嚢胞がある。(多発性単純性腎嚢胞、尿細管性アシドーシス、多房性嚢胞、髄質嚢胞性疾患などを除外する必要あり。)

治療について1(これ以上腎臓を悪くならないようにする。)

1:水をしっかり飲みましょう。

2.5Lから4L程飲水すると、バソプレシンという尿を再吸収するホルモンを押さえ込み、しっかり利尿する事で嚢胞が大きくなる速度を抑える事が出来ます。

2:血圧をしっかり下げましょう。

高血圧の状態になると、腎機能障害が進行する事に加えて、合併症である脳動脈瘤があった際に破裂して脳出血になる可能性がある高くなるため厳格な血圧コントロールが必要です。血圧の薬は基本どのような種類でも問題ありませんが、ラジレス(アリスキレンフマル塩酸)が嚢胞を抑える効果があるかもしれないと期待されています。一方でラジレスには高K血症などの副作用もあるため注意が必要です。

3:特定の患者さんには特別な内服薬を処方します。

・腎臓の容積が750ml以上である

・腎臓の容積が5%/年以上の速度で増大する。

上記の基準を満たした際には、サムスカ(バソプレシンV2受容体阻害薬)という薬を使用する事が可能です。この薬を使用すると透析導入を数年遅らせる事が出来ると言われています。一方で合併症として高ナトリウム血症、肝機能障害などがあり、初めて使用する際は入院をして合併症を確認しながら投薬を開始します。最初に60mg(朝45mg、夕15mg)から開始して、適宜120mgまで増量します。

4:食事療法について

基本的には他の慢性腎臓病患者と同様の食事療法になります。下記をご参照ください。

またカフェインは良くないのでは無いかとも言われていますが、あまり明らかにはなっていません。

治療について2(合併症に対する治療)

1:腹部の症状があまりに強い場合。

あまりに症状が強い場合、腎臓を摘出したり、腎動脈塞栓(腎臓への血流を無くす処置)、穿刺(嚢胞を吸引する処置)を行います。

2:数年に1度頭のMRIを撮ります。

脳動脈瘤が無いかを確認します。脳動脈瘤が見つかった場合は手術やコイル塞栓術などを行います。もし無い場合でも多発性嚢胞腎の患者さんでは、脳出血になる可能性が一般の方に比べて数倍高いと言われています。注意深く観察する必要性があります。平均発症年齢は40歳前後であり若い場合も要注意です。

3:血尿になりやすいです。

半分程度に肉眼的血尿(見てわかる血尿)を認めます。嚢胞が破裂して起きる血尿であり、多くは自然に治りますが、時折手術が必要になります。

4:感染症になりやすいです。

半分程度に尿路感染症、嚢胞感染症を認めます。特に嚢胞感染症は抗菌薬が届きにくく、早期治療が望ましいと考えられています。

 

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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