人工知能時代に『現場が最強』になる理由。

2018.05.05
人工知能時代に『現場が最強』になる理由。
人工知能時代に『現場が最強』になる理由。

腎臓内科医 森 維久郎です。『人工知能で医者が要らなくなる』と言われ始め、医療関係者としても無視出来ない存在になってきました。中には医者をやめて人工知能のエンジニアになったりベンチャー企業に勤める医者も増えてきました。私自身も医者も変化を続けなくていけないと思っていましたし、今も思っています。自分自身でGoogle Homeを使った医療アプリを作ったりして、あくまで変化の最先端にいたいと思っています。

一方で、人工知能時代こそ『現場が最強だ』という結論に最近落ち着きました。今日は何故、人工知能時代こそ『現場の医療者であり続ける事が最強だ』と思ったかについて書きたいと思います。まず下のグラフがこの記事の全てだと思って下さい。

これは私の仕事仲間である薬剤師兼エンジニアの方から頂いた概念です。左から順番に『データ』『学習モデル』『UI』『UX』という言葉が並んでいます。『データ』『学習モデル』というのはなんとなく分かると思いますが、『UI』『UX』という言葉は馴染みが無いと思いますのでまず触れたいと思います。

UI:ユーザーインターフェイスとは?

UI:User Interface(ユーザーインターフェース)の略です。

UIは二つの物(人間、機械でもなんでも良い)間で情報をやり取りするときの方法を指します。ざっくり、情報伝達の手段みたいなイメージで、人間同士であれば、絵文字、スタンプもUIと思って良いと思います。(正確にはちょっと違いますww)

一般的に、そしてこの記事では、『人間』と『機械』のやり取りを指します。例えば、マウスでクリックするとフォルダが開くようという行程は、『クリック』という手段で、『人間』が『機械』にフォルダを開いてと指示している訳です。Iphoneで言うと指で画面を拡大したり、スワイプしたりする行程は『指』という手段で『人間』が『機械』に動作を指示しています。

このUIは日々進化しています。昔はプログラマーのような限られた人が文字列を打ち込まないと機械に指示を出せなかったのが、『指』で指示が出せるようになり、最近はGoogle Homeのような機械に『声』で指示を出せるようになりました。

UX:ユーザーエクスペリエンスとは?

一方でUX:User Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略です。

UXは利用者が『使いやすい』とか『楽しい』とか『便利だ』とか思う体験であり、文字通りユーザーエクスペリエンス、ユーザー体験です。

例えば、スターバックスに行くと、お金を払って、コーヒーを飲むだけでなく、なんとなく心地よかったり、なんとなく店員さんの笑顔が爽やかでこっちまで爽やかになるみたいな体験がUXです。(勝手に話作りましたww)

このUXは、ユーザーの特性、時代の流行り廃りなどで大きく変化を求められます。UIは『進化』していきますが、UXは『変化』していくものと個人的には思っています。

『学習モデル』と『UI』には既に価値がない

さて話は大きく逸れましたが、Google、Amazonのようなグローバル企業は『学習モデル』と『UI』を進化させていきました。例えば、google翻訳は5年前に比べて格段に精度を上げてきています。Siriもある程度の事なら理解して、返事を用意してくれます。最近で、『指』だけでなく、『声』でも機械に指示を出せるようになりました。

一昔前には、一部の限られたプログラマーしかありつけなかった、これらの技術の恩恵が一般市民の手にまで届くようになりました。しかも、勉強せずに簡単で、直感的に使えるようになりました。この進歩はドンドン加速する事が予想されます。

同時に、『学習モデル』と『UI』の独自性は一気に下がっていきます。この領域は、Google、Amazon達に勝手にやらせておけば良いのです。個人的には2030年頃には、Excelを使うくらいのリテラシーがあれば人工知能も弄れるような時代になると思います。

『データー』と『UX』に価値がある!

一方で、『データー』と『UX』には価値が残り続けると思っています。

データー作成には想像以上の手間、知識、現場感が必要

『データー』に関しては、表層の知識だけで『ビックデーター』とか『クラウドコンピューティング』というバズワードを出してくる人がいますが、この『データー』を人工知能の学習データーに組み込むには、地道な努力と技術が必要です。

イメージとしては、臨床研究をした事がある医者なら分かると思うのですが、解析をするまでのデーターを抽出して綺麗にするクリーニングという作業があります。実はこのクリーニングに相当な時間を費やします。『このデーターは適切なのか』『このデーターは解析に必要なのか』『このデーターは本当にMECEなのか?』『解析するためどうやってデーターを作っていくのか』などなど一つ一つ丁寧 に分析していきます。

人工知能を使ったアプリケーションを作る際もデーター作成には地道な作業が必要です。例えば、今回自分で作ったアプリケーションでは、様々な参考書で薬の投与量を調べました。一例が下記のCKD診療ガイド2012の表です。

まず最初にPDFファイルをExcelにしなくてはなりません。ソフトを使ってやってはみるものの、時折ミスがあるため、最終的にはランサーズで人を雇ってExcel形式にしてもらいました。また薬の名前に関しても、ジェネリックがあったり、通称みたいな呼び名があったりします。これらを全て、登録していく作業があります。薬によっては参考書によって投与量が違う事もあり、実際の現場で使われている投与量に変更したりします。

本当に地道なのですが、ある程度のバックグラウンドを持った現場の人間にしか出来ない事です。

まとめると、データー作成には『データー収集』、『データー整理』があり、現場の人間がアクセスしている『データー』になんとかしてアクセス出来ても、それ現場の人間の使用している形にして、人工知能に組み入れるには想像以上の手間とバックグラウンド、知識、現場感が必要になります。

『UX』はユーザーにしか分からない

UXに関しては、シンプルです。自分自身がユーザーであることが最大に強みです。取り敢えずどれだけ売れなくても、自分が使いたい物を作れば良いのです。ニーズ調査なんて要りません。

『自分が使いたい物を作れ、それが皆の使いたい物だ』

現場の人間は、困っている事、面倒な事の隅々まで日頃から体感しているので、解決すべき問題が常にクリアです。実際使ってみて、修正をかけてのトライアンドエラーのサイクルがグルグル回っていきます。修正すべき問題もクリアです。

『欲しい』という感覚にこそ最大の価値があります。

結局現場が最強になる。

このグラフも三度目の誕生です。結局両端の『データー』と『UX』に独自性があり、価値があります。

『学習モデル』と『UI』をGoogle、Amazonなどがドンドン発達させて、テクノロジーが整った未来では、個人が欲しい物を作っていく時代になります。すると、大切になるのは『欲しい』という感覚と現場感です。

日常の診療で患者さんを診て、『この人にこんなプロダクトがあればもっと良くなるのに』とか、日常の業務に疲れ切り『こんなプロダクトがあったらもっと楽になるのに』と思う事に価値が残ります。

時代の流れと共に、医療の課題は『変化』していきます。常に『変化』を最前線で見つめ続けて、『進化』したテクノロジーを使って問題を解決していく医療者が最強なのではないかと最近思っています。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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