<腎臓内科医直筆>腎硬化症(じんこうかしょう)とは? 〜高血圧、動脈硬化による腎障害〜

2018.12.19
<腎臓内科医直筆>腎硬化症(じんこうかしょう)とは? 〜高血圧、動脈硬化による腎障害〜
<腎臓内科医直筆>腎硬化症(じんこうかしょう)とは? 〜高血圧、動脈硬化による腎障害〜

腎硬化症(じんこうかしょう)とは?

腎硬化症(じんこうかしょう)とは、高血圧の状態に長期間晒されたり、長期間の喫煙歴によって起きる動脈硬化の腎障害です。腎臓には左右100万個程の糸球体(しきゅうたい)という老廃物をやり取りするフィルターがあります。その入り口の血管、輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく)に動脈硬化が起きて、糸球体に圧力がかかり壊れたり、逆に動脈硬化が進みすぎて血管が細くなり血流が届かなくなるというメカニズムを経て障害が起きます。

腎硬化症の場合、腎臓だけでなく脳や心臓にも動脈硬化が起きており、脳梗塞、心筋梗塞になるリスクが高い可能性もあります。そのため血圧だけでなく、コレステロールのコントロールも必要と考えられます。

日本で透析になる人の10%-20%がこの腎硬化症で透析になり原疾患第3位です。そして最近高齢化に伴い増えていく事が予想されており、日本腎臓学会でも腎硬化症は最近話題になっています。

この腎硬化症は、ある程度まで障害が進まないと、むくみや尿が出なくなるなどの症状がでません。症状が出た頃にやっと医療機関に受診して、既に透析が必要な状況の一歩手前だったというケースは腎臓内科医をしていて良く遭遇します。

一方で、進行は比較的緩徐であり、正しい血圧コントロール、尿酸コントロールを行なう事で更に進行を抑える事が可能です。

腎硬化症の診断について

腎硬化症は、比較的尿の異常所見が乏しい事が多く、採血で血清クレアチニンという値を見たり、眼底検査、腹部超音波検査などの検査を行って全身の動脈硬化を調べて診断をつけます。

最終的には腎生検という背中から針を指して腎臓の組織を採ってきて、顕微鏡で観察する事で診断をつける事が出来ますが、一方で腎生検には出血などのリスクもあるため、メリット・デメリットを考慮して臨床経過と腎生検以外の検査方法で、腎硬化症と診断することもあります。

ただし、腎硬化症にしては全身の動脈硬化が乏しかったり、高血圧になっている期間が短かったり、尿に派手な異常所見がある時は、動脈硬化性もあるが、その他の病気が隠れていることがあり腎生検を行って病態を明らかにして治療に結びつける事を考える時もあります。

また、若年者で年齢にも関わらず血圧が非常に高い場合は、ホルモンの異常などその他に何らかの異常があり二次的に高血圧が起きている可能性があります。これらを二次性高血圧(にじせいこうけつあつ)と言います。二次性高血圧については別途記事を作成予定です。

腎硬化症の治療について

基本的には、腎硬化症の治療は血圧コントロールが中止になります。低血圧に気をつけながら以下のような目標値でコントロールします。

蛋白尿(+)の場合:血圧130/80mmHg以下

蛋白尿(−)の場合:血圧140/90mmHg以下

下の図を見ていただくと分かるのですが、血圧が高ければ高いほど、腎臓の機能の障害が進むスピードは速くなると言われています。(下の図では、平均血圧という値を使用しています。細かい値は気にせずに血圧が高くなると腎臓の障害が速く進むというイメージを持って頂ければと思います。)

一方で、後期高齢者の場合は、血圧を下げすぎるリスクもあり、日本のガイドラインでも収縮期血圧150mmHg以下で良いという趣旨のコメントがされています。これは正解が無く医師の間で考え方が分かれるのですが、今の高齢者はとても高齢者に思えない程健康な方が多く、個人的には血圧140/90mmHg以下を目標にする事も結構あります。

血圧を下げるためには、生活習慣を改善して、必要であれば内服加療を行います。生活習慣に関しては下記にまとめたのでご参照下さい。(高血圧の人に望ましい生活習慣をまとめました。

内服加療に関しては、RAS系(ラスケイ)阻害薬という種類の降圧薬を使用します。このRAS系阻害薬は腎臓にかかる圧力を減らす効果があると言われています。一方で、進行した腎硬化症や高齢者に使用すると腎臓を悪くする可能性があり、慎重に使用する必要があります。(腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??)

腎硬化症に対して、血圧だけでなく尿酸のコントロールをしましょうと数年前まで言われていましたが、2018年に尿酸のコントロールについてアップデートがあり、比較的腎臓の機能が保たれている患者さんには行った方が良いが、腎臓病が進んでいる患者さんには投与しない方が良いかもしれないという科学的根拠も出てきており、腎硬化症に対して一律に尿酸をコントロールするわけだけでなく患者さんごとに背景を考えながら必要な薬を投与します。(腎臓と尿酸についてまとめました。

喫煙やコレステロールが高い患者さんの場合、腎臓だけでなく心臓・脳などの障害の兼ね合いもあり、禁煙・食事・運動・内服をお勧めします。詳しくはこちらをご参照ください。(脂質異常症についてまとめました。)(タバコは腎臓を悪くするのか?

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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