腎硬化症とは?
腎硬化症(じんこうかしょう)とは、高血圧の状態に長期間晒されたり、長期間の喫煙歴によって起きる動脈硬化の腎障害です。
腎臓の糸球体という場所の入り口の血管(:輸入細動脈)に動脈硬化が起きて、糸球体に負荷がかかったり、必要な血流が届かなくなるというメカニズムを中心に障害が起きます。
腎硬化症の場合、腎臓だけでなく脳や心臓にも動脈硬化が起きており、脳梗塞、心筋梗塞になるリスクが高いことが多いです。
腎硬化症の原因
腎硬化症は、動脈硬化が原因となるため以下のような原因で起きます。
- 長放置された高血圧
- 200mmHg程度の重症な高血圧
- タバコ
- 加齢 など
特に日本では、高齢化の影響で腎硬化症の患者さんが今後増えていくと考えられています。
腎硬化症の検査
腎硬化症の検査は、主に「採血検査」、「尿検査」、「その他」に分けることができます。
採血検査
採血では、主に現在の「腎臓の状態」、腎機能が低下することで起きる「老廃物の貯留」を評価します。
前者では「eGFR」という値をみます。eGFRはさきほどの糖尿病性腎症のステージにもかかわる腎臓の状態を評価を示す値で、10以下になると透析医療が必要になります。
後者では「BUN」という毒素、「カリウム」というミネラルの1種などを測定します。
尿検査
尿検査では、主に「尿タンパク」を評価します。
ただし、腎硬化症では尿タンパクは他の病気に比べてあまり出ないのが特徴です。
その他
その他の検査としては、以下のようなものがあります。これらの検査は合併症の評価目的で年1回程度行ないます。
- 腹部エコー:腎臓の形を観察する
- 血圧脈波:足の血流や動脈硬化を評価する
- 頸動脈エコー:脳の入り口の血管の状態をみて動脈硬化を評価する
- 眼底検査:目の動脈硬化による障害を評価する
- 胸部レントゲン:心臓の大きさなどを評価する など
腎硬化症の治療
腎硬化症の治療は血圧をしっかり治療することです。
目標の血圧は、尿タンパクが出ているかどうかで異なります。
蛋白尿(+)の場合:血圧130/80mmHg以下
蛋白尿(−)の場合:血圧140/90mmHg以下
腎硬化症の食事
腎硬化症の食事の治療は、塩分の治療を中心に行います。
その他、タンパク制限、野菜・果物の制限を患者さんの年齢や肥満の有無、腎臓病の重症度に合わせて行います。
このサイトを運営している赤羽もり内科・腎臓内科では以下の形を基本形として食事の治療を行っています。
- 塩分制限:すべての患者さんに行い、6g/日以下を目指します。
- タンパク制限:若い方、腎臓病のステージが重症の方に行います。植物性タンパクの制限は緩めにして、動物性のタンパクを中心に制限します。加工食品は厳しく制限しています。
- 野菜・果物制限:腎臓病のステージが重症で採血で「カリウム」の値が高い患者さんに行います。それ以外の患者さんには野菜・果物制限は行いません。
腎硬化症の患者さんは、ほかの病気と比べて高齢者の方が多く、カリウムの上がりも比較的少ないので塩分制限のみで治療することが多いです。
代わりに腎臓リハビリテーションと呼ばれる運動療法を推奨し、タバコは必ずやめてもらいます。
腎硬化症の治療薬
腎硬化症の治療薬は、主に「血圧の治療」、「その他」に2つに分けます。
血圧の治療
血圧が高いと腎臓が悪くなるスピードは早くなるため、尿タンパクの有無で収縮期血圧を130mmHgもしくは140mmHg以下を目指します。
少し難しい話をすると、腎硬化症のポイントは糸球体の圧を適度に調整する視点を残しつつ血圧を下げることです。
腎臓を守る目的で使用するRAS系阻害薬は、糸球体にかかっている余分な負荷を減らす効果がありますが、高齢の場合や、動脈硬化が進行している場合は糸球体にかかる圧力を減らしすぎてしまう可能性があります。
結果、腎臓に血液が届かずに腎臓を悪くしてしまう可能性があります。
糸球体にかかっている圧力が過剰なのか、不足しているのかは尿タンパクの量が参考になります。
その他
- 脂質の治療:心臓や脳の障害のリスクが高いためコレステロールの治療も重点的に行います。
- 貧血の治療:腎臓が悪くなると血を作る能力が下がり、貧血になります。適宜貧血の治療を行なうことで腎臓、心臓への保護効果も期待できます。
- 尿酸の治療:動脈硬化が強い場合は、尿酸のコントロールを行う必要があります。(実は尿酸と腎臓については現在意見が分かれています。)
最後に伝えたいこと
腎硬化症は高齢化社会の日本で増えている病気です。
高齢の腎臓病の患者さんでは、腎臓だけでなく身体機能なども念頭に優先順位をつけて治療を行うことが大切です。
個人的には、腎硬化症の治療は食事より運動が大切だと思います。ご不明な点がございましたら遠慮なくご相談ください。