糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症とは?
糖尿病性腎症とは?

透析を防ぐ医療をするために避けて通れないのが、この糖尿病性腎症です。透析になる患者の約半数が糖尿病性腎症と言われています。メディアの過剰な不安を煽る情報発信に危機感を感じ「腎臓内科.com」で発信していますが、今日伝えたい事はズバリ『糖尿病』で『尿タンパク』が出たら必ず医療機関にかかりましょうです。

糖尿病性腎症とは??

糖尿病性腎症とは、糖尿病で血糖値が高い状態に年単位で晒された結果、腎臓に障害が起きた状態を言います。糖尿病による3大合併症である神経障害(痺れなど)、網膜症(目が見えなくなるなど)、腎症の一つで日本で透析になる人の40%-50%がこの糖尿病性腎症で透析になります。

この糖尿病性腎症は発症してから10-15年程、腎臓として症状は全くありません。ある程度まで障害が進むと、むくみや尿が出なくなるなどの症状が出現します。しかしながら、このような症状が出た時にはかなり障害が進行しており、頑張って治療しても中々コントロール出来ない事も多々あります。

仕事の健康診断で糖尿病を指摘されても、症状が無いし、仕事が忙しいから病院に行っていなかったという患者さんで、最近むくみが気になり始めて、病院に受診したら、既に透析が必要な状況の一歩手前だったというケースは腎臓内科医をしていて良く遭遇します。

糖尿病性腎症を理解するために

糖尿病性腎症のポイントは、ズバリ『早期発見して、早期治療する事』に限ります。

糖尿病を発症すると、以下の図のような経過を辿ります。この図は腎臓についてしか触れていないので、その他の合併症についても説明していきます。(CKD診療ガイドライン参照)

糖尿病を発症してから5-10年ぐらい経つと、神経障害が出現します。具体的には、痺れ、便通異常、立ちくらみなどの症状が出現します。その後、目の症状、網膜症(もくまくしょう)が出現します。具体的には眼底出血などを起こし、物が見えづらくなったりします。

その後数年すると、急に腎臓の能力を示す「eGFR」の値が悪くなります。図の赤い点線が「eGFR」を示しています。(eGFR とは???腎臓が悪くなるほど低い値になる?)この値をみると、2-3年で急激に悪くなっているように見えますが、これは今まで無理をして頑張っていた腎臓がくたばっている状態を反映しています。つまり、eGFRが下がる前から腎臓には障害が起きていたのです。

eGFRが60以下になると慢性腎臓病(まんせいじんぞうびょう)という状態となり特別な食事療法、薬物加療が必要になります。eGFRが10以下のエリアまで入ると透析が必要な状態になります。(CKDとは 〜慢性的な腎臓病「慢性腎臓病とは」〜

何度も申し上げますが、腎臓という臓器は、しぶとい臓器である程度障害が進むまで症状は出ません。しかし一方で、腎臓は『腎障害が進んでいますよー』というサインを出してくれます。これがタンパク尿で、上の図の緑の線です。(タンパク尿とは?〜尿に蛋白が混じっていれば腎臓に異常がある〜

糖尿病性腎症の早期発見には尿検査が大切!

上の図の緑の線をよく見ると発症してから5~10年ぐらいの時から、既に蛋白尿が出始めています。この蛋白の量をみて、私達医療者は、重症度を分類します。

タンパクの一種に『アルブミン』というタンパクがあって、このアルブミンが30mg-299mg/gCr出ていると『早期腎症(そうきじんしょう):第2期糖尿病性腎症』と言います。これは尿検査を行う事で分かり、医療機関で行う事が出来ます。

早期腎症から更に進行してタンパク尿が増えると『顕性腎症(けんせいじんしょう):第3期糖尿病性腎症』になります。この顕性腎症になって数年経つと、腎臓の能力値であるeGFRが下がっていきます。

上の図の赤い段階、つまり早期腎症の段階で治療して半数の患者でタンパク尿が無くなります。特に、早く治療を開始して、血糖、血圧コントロールが良好だと率が高くなると言われています。またRAS系阻害薬(ラスケイそがいやく)を使用すると更に率が高くなります。(腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??)(Araki S Diabetes 54 : 2983-2987)

一方で、顕性腎症まで進行すると、厳格な血圧・血糖コントロールが必要になります。更に一度良くなっても再びタンパク尿が出やすくなります。

厚生労働省も国を上げて糖尿病性腎症重症化プログラムを作成して、糖尿病患者に積極的な尿検査を勧めています。(http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000121902.pdf

糖尿病性腎症の治療

基本的には、食事と運動をベースにします。その上で、「血糖」「血圧」「コレステロール」「体重」をコントロールします。日本のデーターで、しっかりこれらをコントロールする事で腎臓病の進展を30%ほど抑制したという結果も出ています。

食事療法

食事は、減塩をベースに、若い方ならタンパク質を制限する事が望ましいと考えられています。糖尿病としては炭水化物を抑える事が望ましいとも言われています。更に野菜・果物も制限するように指導する施設もあります。

しかし、これを全部していたら、食べるものがなくなってしまいますね。個人的には減塩は必須・タンパク質制限は可能なら行う・炭水化物制限は明らかな肥満であれば奨める・野菜と果物はカリウムの値が高い場合は制限する。という方針にしています。

腎臓と塩分の関係についてまとめました。

腎臓とカリウムについてまとめました。

運動療法

その分、しっかり運動をしてもらっています。元気な方は1日8000歩歩いて欲しいです。足が弱っていていたり、膝が悪い患者さんには、寝ながら出来る筋力トレーニングを勧めています。(寝ながら出来る筋力トレーニングは後日記事にします。)

腎臓内科医が慢性腎臓病(CKD)患者に運動を勧める2つの理由

血圧コントロール

(Bakris GL AJKD 2000:36;646-661)

上記の如く、血圧が高いと腎臓が悪くなる速度は早くなると言われています。そのため収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ)を130mmHg以下を目指します。塩分制限・運動療法をした上で改善が無ければ、内服薬でコントロールします。特にタンパク尿が出ている場合は、RAS系阻害薬(らすけいそがいやく)という腎臓を守る降圧薬を使用します。(腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??

実は。腎臓病の患者さんでしっかり血圧を目標値でコントロール出来ている人って30%もいないらしいです。(日本の腎臓領域の予防医療のデーターが発表されました。

血糖コントロール

血糖値は非常に大切なのですが、血糖値の重要性はしっかり認知されており治療目標を達成されている患者さんが多い印象です。年齢にもよりますが、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という値で7%を切る事を目標にします。

食事・運動に加えてコントロールが付かない場合は、内服療法、それでも難しいならインスリン治療を行います。

血糖コントロール薬にも腎臓を守る作用がある薬がいくつかあり、特にSGLT-2阻害薬(えすじーえるてぃーつー)は近年注目されている糖尿病薬です。(SGLT-2阻害薬に関しては後日まとめます。)

腎臓病だと使用できない薬剤もあります。DDP-4阻害薬、グリニド薬、αグルコシダーゼ阻害薬は比較的腎臓の機能が悪くても使用できます。

コレステロール

コレステロールが高い状態を放置すると、動脈硬化が進み心臓や脳の障害を起こす可能性があります。コレステロールに関しては生活習慣の改善を行いますが、中々それだけコントロールできないことも多く、スタチンという内服薬を使用することが多いです。詳しくは別記事をご参照ください。(脂質異常症についてまとめました。

最後に伝えたい事

最後に伝えたいのも『糖尿病』で『尿タンパク』が出たら必ず医療機関にかかりましょうです。

腎臓内科を受診した場合、糖尿病の評価をして、更に腎機能障害、蛋白尿の原因として糖尿病以外の関与が無いかを確認します。採血、超音波検査、眼底検査などを行って判断します。(腎臓の検査の方法をまとめました。

糖尿病の関与が強いと判断した場合、血糖コントロール、血圧コントロール、脂質のコントロール、食事指導、生活指導を行っていきますし、その他の疾患の関与が考えられる場合は腎生検という検査も検討します。(腎生検についてまとめました。

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