慢性腎臓病(CKD)患者は運動した方が良いのか?

2018.04.11
慢性腎臓病(CKD)患者は運動した方が良いのか?
慢性腎臓病(CKD)患者は運動した方が良いのか?

腎機能障害は身体機能の衰えに関わります。今日は腎不全患者さんにおいて治療の2本柱となる『食事と運動』のうち『運動』に関して触れたいと思います。

1:腎機能障害で身体が衰える??

昔は腎臓が悪い患者さんはなるべく安静にするように言われていました。実際診療していても、前の先生に安静にしろって聞かされてなるべく身体を動かさないようにしていた高齢者が意外に一杯います。

現在、慢性腎臓病患者でもしっかり身体を動かしましょうという治療方針になっています。色々原因はありますが、その内の一つに『フレイル』を防ぐためという理由があります。『フレイル』と医学用語ですが、意味合いとしては『老衰した状態、衰弱した状態』と考えて頂ければ大丈夫です。5年ほど前に腎機能障害とフレイルに大きな関わりがあるという研究結果がでました。下の図を御覧ください。

 

英語で申し訳ないのですが、端的に言うと、一番手前が『フレイル』の患者、真ん中が『フレイルになりそうな』患者を示します。横軸はeGFRといって端的にいうと『腎臓の点数』です。このグラフからは腎臓の点数が下がれば、下がる程、『フレイル』になっていく患者さんの割合が多くなります。

腎臓が悪くない患者に比べて

eGFR30~59で1.5倍程度

eGFR15~29で2.2倍程度

eGFR<15で5.6倍程度    『フレイル』になる割合が上昇する。( 2013;38(4):307-15)

腎臓内科医によって考え方が分かれますが、僕は基本的には75歳を越えた患者さんには蛋白制限は強く勧めません。75歳を越えた腎不全患者が過度に食事制限をする事で、『フレイル』になる可能性があるためです。

また、過去にはこんな研究結果もあります。

握力が小さい、6分間の歩行距離が短い、歩行距離が遅い人慢性腎臓病患者は生命予後が短い。( 2013 Apr;24(5):822-30)

このような研究結果が出てからなるべく運動して、体が衰えるのを防止するのが腎不全診療における大事な作戦となっています。

2:運動で腎臓を守る??

基本的には、腎臓以外の疾患との兼ね合いもありますが、安定しているのであれば軽いジョギング程度や海外のガイドラインでは、スクワットのような軽い筋力トレーニングもして良いともしています。単なるウォーキングでも良いです。

実は運動には、衰弱を予防するだけでなく、腎臓を守る作用があるのではないかと言われており、実際研究結果も存在します。

毎日ウォーキングをしている患者は、全くしていない患者と比較して約1-2年後に末期腎不全(=透析)に至る割合は0.56倍だった。( 2014 Jul;9(7):1183-9)

この研究を全ての患者に当てはめる事は出来ませんが、少なくとも慢性腎臓病患者に運動 は透析を遅らせるためのツールとして良いと考える事が出来ます。

具体的には1日20-60分の有酸素運動や腹筋、腕立て伏せなどの筋トレ(医学用語ではレジスタンストレーニングといいます。)を行ないます。腎臓が悪い患者さんは心臓など他の臓器が悪い事があるので注意が必要です。無理ない強度、頻度で行う事が望ましいと思います。詳しくは日本腎臓リハビリテーション学会が作成して『保存期CKD患者に対する腎臓リハビリテーションの手引き』を参照して下さい。

 

 

 

 

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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