造影剤腎症とは?

造影剤腎症とは?
造影剤腎症とは?

腎臓内科医の森です。まず造影剤は腎臓を障害する可能性があるので、腎臓病がある患者さんで造影剤を使った検査(CT検査・冠動脈造影など)を行う際は注意が必要と言われています。今日は造影剤と腎臓について書きます。

造影剤腎症とは?

造影剤腎症(ぞうえいざいじんしょう)とは、CT検査や冠動脈造影などの検査で使用するヨード造影剤によって起きる腎臓の障害のことです。造影剤を使用した72 時間以内にクレアチニンという腎臓が悪くなる時に上昇する検査項目が 0.5 mg/dL 以上または 25%以上増加した場合に造影剤腎症の診断になります。

造影剤腎症は、一時的な腎臓の障害で治る事が多いのですが、時折透析が必要になったり、極稀に腎臓が悪くなったまま戻らなくなる事もあると言われています。

腎臓病だと造影剤腎症が起きやすい?

腎臓病の患者さんは造影剤によって、腎蔵の障害が進行する可能性もあり、検査のメリットと腎臓の障害のデメリットを天秤にかけて検査を行うかを決めます。

この判断は、現場の医師としては非常に難しく、一応目安としてCKD診療ガイド2012には以下のような記載があります。

eGFRが60未満の患者では『動脈』から造影剤を使う検査で腎臓を悪くする可能性がある。

eGFRが45未満の患者では『静脈』から造影剤を使う検査で腎臓を悪くする可能性がある。

eGFRとは、腎臓の機能を示す検査項目で低ければ低い程腎臓の機能が悪いことを示します。検査によって、造影剤を「動脈(心臓から全身に血液を送る通り道)」もしくは「静脈(全身から心臓に血液を戻す通り道)」から投与するのですが、eGFRが60や45を切る程腎臓の機能が悪い患者さんに対して、造影剤を投与することは腎臓の障害が進めてしまうため慎重にならなくてはなりません。

一方で、腎臓病の心筋梗塞になる患者さんが多く、造影剤を使った検査や処置が必要になった時に、現場の医師としては検査の必要性と検査によって起きる腎臓の障害のメリット・デメリットの判断が本音として非常に悩ましいです。

また腎臓病の患者は高齢者が多く、例えばお腹の病気になって造影CTが取りたくなるようなシチュエーションになる事もしばしばあります。その際も腎臓が悪いと造影剤が使用しづらくて困ってしまいます。

造影剤腎症を起こさないようにするためには?

メリット・デメリットを天秤にかけて造影剤を使用する場合は、以下の対応をとります。

1:リスクになる要素を避ける。→例えば、脱水、利尿剤、NSAIDsなどを使用していると造影剤腎症になるリスクが上がる。

2:検査前と後に点滴をする。→造影剤の検査をする前後に6時間程前から点滴をします。

3:なるべく造影剤の量を少なくする。

インターネットで検索すると造影剤のリスクを煽り立てる記事が多いのですが、腎機能障害があまり進行していない場合は造影剤を使って造影剤腎症が起こる可能性は低いです。造影剤を使った検査は、多くの情報を与えてくれて患者さんの治療に繋がる可能性があるので必要時は積極的に検査を行います。リスク、デメリットを理解して必要な検査を受けていただければ幸いです。

ちょっと細かい話・・・

ここからは患者さんには難しいと思うので、臨床医対象に書きます。実は、非常に書きづらいのですが、最近『臨床医は造影剤腎症を気にしすぎて必要な検査をしていなのではないか?』という意見も多く出始めています。

例えば最近出た論文では、MetaAnalysisという信憑性が高い方法を使用して、107335人に対して造影剤を使った使っていないに関わらず腎障害のリスクはあまり変わらないという趣旨の結果が出ました。

こちらの論文でも、元から極端に腎臓が悪い患者さんは除外されてはいますが、造影剤を使用と腎障害の関係は乏しいという結果が出ました。

こちらのReviewでは、eGFR30以上の患者ではリスクはゼロではないが非常に稀である。一方で、eGFR30以下の患者については明らかではないと記載されています。

結局、自分は極力造影剤を使った検査を避けるようにした上で、どうしても必要な際は、リスク因子を避けて、検査前後に点滴を行って、極力少ない量で検査を行います。eGFR30以上ならある程度安心した気持ちで3日間採血検査や尿量をモニタリングして問題無いか確認しています。eGFR30以下だと少し迷いますが、心筋梗塞や高度の頸動脈狭窄で評価が必要な時は造影剤を使った検査をした方が良いと思っています。また点滴の予防投与に関しても、『あまり効果が無いんじゃないの?』っていう意見もあり、心不全などの患者では無理やり輸液をしない事もあります。

造影剤=腎障害と恐れられていましたが、近年は意外と大丈夫なんじゃない?という趣旨の論文が出ているのも事実です。必要であれば造影剤使用する機会が増えると思います。日本にはCKD患者が1300万人いる時代になりました。頭ごなしに造影剤を否定するのではなく、どうすれば造影剤を使用しても大丈夫かを見極めていく必要がありそうです。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
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    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

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  • (2018.09.21)

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  • (2018.09.06)

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