腎臓病とタバコの関係について

腎臓病とタバコの関係について
腎臓病とタバコの関係について

世界的に食生活を始めとして健康的な生活を送る事で有名な日本も、タバコに関しては後進国と言われています。

いつも記事で患者さんに生活指導を勧める一方で、自分もダイエットに失敗し続けていたり、深夜まで飲み会をしてしまうダメダメな人間である事を自覚しているため、医者としては完璧な生活習慣を勧めますが、一方で全てを完璧にするなんて自分も出来ないと思っているため大事な所を抽出して、強調して説明する事を大事にしているそんな私ですら、禁煙は絶対的にしてもらっています。

タバコで腎臓が悪くなる。

タバコで腎臓の障害が進むことは明らかになっています。タバコは肺がんの原因となるというイメージを持たれている患者さんが多いのですが、血管を障害して動脈硬化を引き起こして、心臓・脳・腎臓を障害することが分かっています。

日本人の研究で過去にタバコと腎臓について調べられた研究があり、腎臓病の患者でタバコを吸っている人と吸っていない人で腎臓病が進行して透析が必要になる患者さんは2倍程まで上昇する可能性があるとされており、更にタバコを吸っている量が20本以上だと4-5倍にまで上昇すると言われています。

また腎臓病は、腎臓だけでなく心臓や脳の障害を引き起こすリスクが数倍になると言われており、そちらの観点からもタバコは追い打ちをかけてしまいます。慢性心不全の患者で禁煙した患者は、禁煙しなかった患者より30-40%程死亡率を下がると言われており、今まで吸っていた患者さんも今から禁煙を行うことが望ましいと思います。

タバコは中々辞めることが出来ない。

禁煙を勧めても、多くの患者さんがまたタバコに手を出してしまいます。実はタバコの依存性はヘロインやコカインと並ぶくらい強力と言われています。実際自力で頑張って禁煙が達成できるのは20%ぐらいと言われており、工夫が必要です。

まずライターなどタバコを吸うための道具は捨てるのが望ましいとされており、周囲でタバコを吸っている人がいる飲み会とかはなるべく避ける方が良いとされています。口が寂しくなったときはガムを噛んで気持ちを紛らわすのも手です。コーヒー・アルコールを控えるのも手です。

一方で、これらの方法では中々辞められません。その際は「禁煙外来」という禁煙プログラムで薬物療法を行うのが一番良いです。禁煙外来を行うことで成功率は20%前後から55%前後まで上げることが出来ます。(それでも55%前後しか禁煙出来ないのが、タバコの依存性の恐ろしさです。)

禁煙補助薬のメカニズム

禁煙プログラムは認定を受けた医療機関で受けることが出来て、禁煙補助薬である「ニコチンパッチ」、「チャンピックス」などを使用します。これらは、禁煙したときに生じるイライラなどを防ぐ効果があります。

体にはタバコに含まれるニコチンを受け取る皿、受容体(じゅようたい)があります。これをニコチン受容体といいます。ニコチンがこの受容体にくっつくと、ドパミンという快感を生む物質がたくさん放出されます。ニコチンは受容体からすぐに離れていきますので、ニコチン切れになり、またタバコを吸わないとイライラしたりする原因となります。最終的に依存症になります。

ニコチンパッチやチャンピックスはこのニコチン受容体にくっついて、少量のドパミンを放出することで、イライラを少なくし、落ち着きをつかせる効果があります。また、タバコを吸ってときに美味しいと感じにくくする効果もあります。そして徐々にタバコの依存性を無くすとことができます。

禁煙外来の詳しい流れ

禁煙外来の対象者かどうか

禁煙外来をうけることが出来るのは以下の基準を満たす患者さんです。

・禁煙を考えていること

・ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TSD)で5点以上であり依存症と診断されること。(TDSはこちらへ

・ブリンクマン指数(喫煙年齢×一日喫煙本数)が200以上であること。

・禁煙治療をうけることを文章で同意していること。

かかる費用は自己負担でチャンピックス(バレニクリン)という薬で約2万円、ニコチンパッチだと13000円くらいです。

ニコチンパッチ・チャンピックスにこれらに大きな違いはありませんが、個人的には心臓が悪い患者さんに使うこともあるためチャンピックスの方が多く処方しているような印象があります。

禁煙外来の日程調整

まず禁煙外来受診して頂いた場合は、日程調整から始まります。禁煙外来は3ヶ月のプログラムで、開始日、2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の5回の受診をして頂くことになります。初回の診察時に、具体的な日程を3ヶ月先まで決めさせていただきます。禁煙日記や禁煙手帳をお渡ししますので、記載させていただきます。

禁煙することを宣言

禁煙外来を行う際は、周囲の友達や家族に禁煙宣言をしていただきます。退路を絶ちましょう。タバコを辞める際の最後の1本を決めて吸った瞬間に煙草とライターなど煙草を吸うための道具を一気に捨てます。そのタバコが人生最期の喫煙になります。家族や同僚に励ましてもらいましょう。またタバコを吸いたくなるような場所、飲み会、コンビニ、パチンコ屋には可能な限り近づかない方がうまくいく印象があります。

ニコチンの離脱症状

禁煙してから1-3日の間にイライラ、集中力の低下などの離脱症状が出現します。その他に、不安・気分の落ち込み・食欲増加・寝付きが悪いなどの症状が出ます。一般的に14日くらいで収まります。

しかしながらタバコを吸いたい気持ちは中々収まらないと言われています。特に1ヶ月後あたりで一定期間辞める事出来た達成感で、「今回辞めれたし、一本ぐらい大丈夫でしょ」と吸ってしまうパターンが多いです。

薬の副作用

チャンピックスは飲み始めの1週間〜2週間の間、軽い吐き気が出るため、必ず食後に飲みコップ1杯程度の水を服用してください。一時期、精神疾患との関与も指摘されたこともあり世間を騒がせたこともありましたが、長期的に精神疾患(元々精神疾患が無ければ)や心臓病の影響は限定的と言われています。自動車の運転などの機械の操縦があるときはニコチンパッチの方が望ましいです。

ニコチンパッチは不整脈や心臓の疾患がある時は避けることもあります。基本的には重篤でなければ問題ない事の方が多いのですが、チャンピックスの方が無難です。また変な夢をみることもあるのでパッチは朝につけて寝る前に外すようにしてください。また中にはパッチがかぶれる人がいて、その場合は内服のチャンピックスの方が望ましいです。

電子タバコは良いのか?

電子タバコにはタバコに含まれる有害物質が含まれていないので大丈夫といううたい文句もありますが、よく分かっていない部分も事実多く、電子タバコにも有害物質が入っているという考え方も最近出てきています。吸わないなら吸わない方が良いのではないかと考えています。あくまで禁煙までの繋ぎとして利用する程度であれば個人的には目をつぶっているのですが本当に良くないと思います。

禁煙は、腎臓にも影響して、現段階では治療法も見つかってきました。なにか質問がある方は遠慮なくおっしゃってください。

Nephrol Dial Transplant. 2017 Mar 1;32(3):475-487.

Am J Kidney Dis. 2010 Aug;56(2):313-24)

JAMA. 2003 Jul 2;290(1):86-97.

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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