慢性腎臓病(CKD)患者の食事療法についてまとめました。

2018.02.12
慢性腎臓病(CKD)患者の食事療法についてまとめました。
慢性腎臓病(CKD)患者の食事療法についてまとめました。

慢性腎臓病(CKD)の治療において、食事の管理は非常に重要です。食事を気をつける事で腎臓障害進行を抑える事が出来、重症化予防、透析になる患者を減らす事が出来ます。ちなみに食事療法の話をすると、これは食べちゃ駄目、これも食べちゃ駄目となりがちなので敢えて、これは食べて大丈夫という部分にも触れながら話を勧めていこうと思います。

先にまとめを書くとこんな感じです。

水分摂取に関して

腎臓が悪くなると、尿が出なくなります。尿が出ない状態なのに、水を飲みすぎると体内に水分が溜まります。症状として浮腫が出現したり、心臓が悪い方だと心不全になる事もあります。特に、慢性腎臓病の方は慢性心不全を持っている方もいらっしゃるため注意が必要です。

具体的に、どのくらい腎臓が悪くなると尿が出なくなるかというと個人差もありますが、肌感覚としてはCKDstage3(eGFR>30ml/min)の患者さんやCKD4の初期の患者さんで尿が出なくなったり、少なくなる事はあまりありません。

患者さんの中には極端な考え方を持つ方もいて、『水分は少なければ少ない程良い』と考えてしまう方もいますが、夏場に脱水で腎臓が悪くなる患者さんもいます。常識の範囲内で喉が乾いたら飲むというイメージで問題ありません。

塩分摂取に関して

塩分を摂りすぎる血圧が挙がります。実際、高血圧の患者さんが入院して塩分の少ない病院食を一週間ほど食べて、適度な運動をしたりするような健康的な生活を送ると普通に血圧が10-20mmHg程下がったりします。以下のような結果が出ています。

塩分を1g/日減らすと血圧が1mmHg減少する。(J Hum Hypertens. 2002 Nov;16(11):761-70)

高血圧の方の塩分摂取は3-6g/日以下が目標です。日本人は塩分が濃い食事が大好きで10g/日以上摂取しています。勿論人それぞれではありますが、例えば塩分13g/日の人(=私です。)が目標値6g/日まで頑張ったとすると血圧が7mmHg減少する事になります。この血圧7mmHgがどう意味があるのかがイメージ付きづらいと思います。過去にこんな研究結果がありました。

収縮期血圧10mmHg、拡張期血圧5mmHgの低下で脳梗塞、脳出血になるリスクが約40%低下して、心筋梗塞のなるリスクが約20%低下する。(BMJ. 2009 May 19;338:b1665)

先程の水分摂取の話とは異なり、塩分摂取は腎機能障害の進行を遅らせるために非常に重要です。実際臨床をやっていて、塩分制限を頑張って、しっかり血圧をコントロール出来ている方で、腎機能障害が抑え込めている患者様も結構います。

この1日塩分摂取量は尿検査で調べる事が出来ます。ちなみに、この尿検査を行い主治医が患者さんに1日の塩分摂取量を伝える事で患者さんが減塩を続けて腎機能障害(厳密には蛋白尿)を抑えるかもしれないという趣旨の研究も日本で行われてました。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28579314 

とはいえ、塩分が大好きな日本人にとって6g/日以下の食事は物足りないと思います。そのためにテクニックが必要です。例えば、ダシを使う事で味に深みを付けて減塩食の物足りなさを補う事が可能です。

減塩は気合では達成できず、テクニックで達成するものです。

長くなるので具体的なテクニックは別記事で触れようと思います。過去に減塩の事を触れている記事があるのでこちらもご参照下さい。

タンパク質について

タンパク質については、慢性腎臓病専門のガイドラインにこう記載されています。

CKDstageG3 : 0.8~1.0 g/kg/日を推奨する。

CKDstageG4~G5 : 0.6~0.8 g/kg/日が望ましい可能性がある。

実は、『制限した方が良い』という説と『制限しなくても良い』という説があり現在も議論が続いています。タンパク質制限が腎臓に良いか否かについては違う記事で触れようと思いますが、下記の1994年のNEJMの論文が非常に有名です。意識が高くて論文の事も聞いてくる患者さんも最近増えてきたので載せておきます。

タンパク質が腎臓に影響するかという点についても様々な議論があります。例えば、タンパク質制限をすると腎臓に無駄な圧力がかからなくなり負担が減ったり(厳密には過剰濾過圧が低下する。)、タンパク質から生まれる尿毒素が減る事で腎臓の負担が減ったりするなど様々なメカニズムが関係していると考えられます。一方で過剰にタンパク質を制限すると、カロリー不足で筋肉が衰えたりするため適度なタンパク摂取が望まれます。

超低たんぱく食(0.3g/kg/日)の食事療法を行っている施設もあります。しっかり論文も出ておりますが、特別な食品、つまり低蛋白質でもしっかりカロリーが補充できるような食品が必要で、経験豊富な栄養士、腎臓内科医のバックアップが必要になりますが、安全性をしっかり担保しながらであれば腎臓を保護する可能性があると言われています。しかしながら安全性の観点から積極的には勧められておりません。

後、植物性タンパク質と動物性タンパク質であれば、植物性タンパク質の方が良いとされています。

カリウム摂取について

腎臓が悪くなるとカリウムという野菜類、果物、干物、海藻などに含まれているミネラルが体内に溜まります。カリウムが体内に溜まった状態を高カリウム血症といいます。また、慢性腎臓病患者に投与されるRA系阻害薬という降圧薬や慢性心不全がある患者に投与されるβ-Blockerというお薬にはカリウムを体内に貯める作用があります。

高カリウム血症は不整脈の原因になり心停止に繋がる可能性があるため腎臓内科医も目くじらを立てて毎回の採血でカリウムの値を測定して問題が無い事を確認します。

高カリウム血症を防ぐためには、カリウム摂取を減らすか、薬を飲むかの二種類の方法があります。カリウム摂取を減らすためには野菜をできるだけ細かく切って茹でこぼしをして食べるなどの工夫が必要です。一方で薬を飲む事で対応する事も可能なのですが、非常に不味いです・・・。嫌がる患者さんかなり多いです・・・。

医者によって色んな考え方もありますが、個人的には果物などに含まれるビタミンなどをしっかり摂取して欲しいので、食事は極力制限せずに薬を飲んでもらいたいと思っています。

ちなみに、腎臓内科や循環器科の先生は『高カリウム血症』に対して恐怖心があるので、なるべく制限しよう、制限しようと考えがちなのですが、カリウムはある程度摂取する事で血圧を下げたり、骨を強くしたりするとも言われているため、患者さんの腎機能や内服状況をみて可能であれば、なるべくカリウムを摂取する事が望ましいです。

個人的には、個人差もありますが、eGFR>30、CKDstageG3の患者さんで、採血でカリウムを確認して問題なさそうであれば制限しないように伝えています。

カルシウム摂取について

慢性腎臓病患者さんがカルシウムを多く摂りすぎると血管に石灰化が生じたりする一方で、カルシウムが不足すると骨が脆くなったり、また副甲状腺という臓器が無駄に働きすぎてリンという物質を増やして長期的な心筋梗塞などのリスクに大きな影響を与えると言われています。詳しくは以前に記事を書いたので載せておきます。

具体的な摂取量は決まってはいませんが、800mg/日だと足りなくて2000mg/日だと多いのではないかと言われています。海外のガイドラインでは1500mg/日以下が望ましいと言われています。具体的にどの食材にどのくらいカルシウムが入っているかを示した表があるのでご参照下さい。

カルシウムをしっかり摂取しようとすると、魚や牛乳をとる事になるのですが、そうするとタンパク質を多く摂取してしまうため適度に摂取して薬で補うのが望ましいとされています。ビタミンDというカルシウムの生成に関わる物質は腎臓が悪くなると少なくなるため積極的にビタミンD製剤を使用して補います。

定期採血で血清カルシウム値を8.4-10.0mg/dl辺りで維持出来ているかを確認します。

リン摂取について

慢性腎臓病患者においてリンの値は心血管イベントに大きく関わるため腎臓内科としてチェックしたい項目の一つです。詳しくは別記事に書きましたのでこちらへ。

リンは乳製品や、肉などを多く含まれています。また添加物に多く含まれています。タンパク質が多い食品に多く含まれているためタンパク質を制限すると自然とリンの摂取量が下がると思われます。更に加工食品などに含まれるリンの方が豆などに含まれるリンよりも良くないのではと言われています。

一応0.8-1.0g/日が推奨されております。しかし実はリンの摂取を制限しても、あまり変わらないのではないかという意見もあります。自分の患者さんの中にもリンの事を一生懸命考えて食事をしても血清リン値が下がらない患者さんもいます。

清涼飲料水、加工食品に含まれるリンは植物タンパク質に含まれるリンに比べて吸収力が高いので、リンの摂取はタンパク質摂取の量を減らす事で達成するというよりも、タンパク質の種類を変えていくというのが僕の方針です。それでもコントロールがつかなければ薬に頼るのも有りだと私は考えております。

カロリーと脂質について

慢性腎臓病患者においては下記のカロリー摂取、脂質の摂取が望ましいとされています。

摂取カロリー:25-35kcal/kg/day

脂質摂取:摂取カロリーの20-30%程度

肥満は腎機能障害に関わるため肥満患者の場合はカロリーを少なめにします。

また、中性脂肪が高い患者さんは、腎臓が悪くなると更に溜まりやすくなる傾向にあり、注意が必要です。

食物繊維について

食物繊維は心血管イベントを抑制したり、糖尿病、癌に対しても保護的に作用すると言われています。慢性腎臓病患者において、心筋梗塞などの心血管イベントを抑制する事は非常に大切です。

また劇的な変化はないものの、腎臓自身にとっても食物繊維が良いと発表している研究もあります。ただし、食物繊維が多い食事はカリウムを含んでいる事が多いためその点は注意が必要です。

実際の臨床では・・・

どれも大切な食事療法ですが、あれも駄目!これも駄目!だと食べて良いものがなくなってしまいます。個人的には、まず第一に減塩です。塩分を控えると、血圧がコントロールしやすくなります。血圧は腎機能障害に大きく関与するため非常に大切です。次のページの中盤に書いてある減塩の工夫などは分かりやすいです。

個人的にはタンパク質は気持ち気をつける程度で指導しています。勿論、極端な食生活の患者さんにはしっかり指導するし、非常に意識の高い方には全てをしっかり指導します。

しかし腎臓が悪い患者さんは症状も出ていないのに、食事制限を一生しなければなりません。医者として失格かもしれませんが、自分自身もダメダメな人間で、良くダイエットも失敗しているし、運動も3日坊主です。だからこそ、なるべく緩急つけて大切な所に要点を絞り一生かけて、しっかり安定して80点取る食事療法を指導出来ればと思っています。

以下は個人的な診療の考え方です。

  1. 減塩は頑張ってもらう。しっかりグラムを測ったり計算する。
  2. カロリー、脂質、食物繊維は俗に言う健康的な食事のレベルで頑張ってもらう。
  3. カルシウム、リンは薬で対応する。(採血で目標値を)
  4. カリウム、水分は採血で異常値が出たり、症状が出たら薬で対応する。

慢性腎臓病(CKD)の治療において、食事の管理は非常に重要です。食事を気をつける事で腎臓障害進行を抑える事が出来、重症化予防、透析になる患者を減らす事が出来ます。参考になれば幸いです。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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