初心者でも15分で分かる放射線と被曝の話 〜医師と被曝について考えましょう〜

2018.01.13
初心者でも15分で分かる放射線と被曝の話 〜医師と被曝について考えましょう〜
初心者でも15分で分かる放射線と被曝の話 〜医師と被曝について考えましょう〜

腎臓内科医森 維久郎です。今日は腎臓とは関係ありませんが、被爆についてお話します。実際、放射線ってどうなの?私が医師になり、よく友人から質問されるようになりました。実際のところ、医学生が国家試験が終わるまで放射線を学ぶ事なんてほとんどありません。こんな事を言うとびっくりされますが、放射線科を除くほとんどの医師が放射線について綺麗に説明できないのではないと思っています。実際、私自身はこの記事を書くまでシーベルトが何なのかも知りませんでした。

医者にとって、患者さんから知らない事を指摘されてしまう事は怖い事であり、私自身その場をやり過ごす返答ばかりしていました。最終的には『気にする方が健康に悪いよ』みたいな適当な事を言って流してました。

現在、日本では放射線についての色んな情報が錯綜していると思います。何が大丈夫なのか、何が危険なのかがよく分からないまま話が広がり、結局放射線が人体にどう影響するのか、そして原発事故は果たして本当に大丈夫なのかがよく分からないままになっていると思います。

放射線関連の発信はライティング関連の世界でタブー視されています。政治的な発言も含まれるため、炎上の対象にされやすいからです。そのため『専門的過ぎて読んでいて隙が無い、がしかし読みにくい文章』か『読みやすいけど言っている事がめちゃめちゃな科学的根拠のない感情論』しかWeb上の残らないため実際どうなのかが世間に知られていないと思います。

そこで私は専門家でないけどある程度は医学について理解している非専門家という立場でしっかり勉強して『とっつきやすく読みやすいが科学的根拠のある放射線についてのコンテンツ』を作ろうと思い、放射線についての記事を書こうと思いました。今回はまず話をする上で少し知識をつけるための内容について触れます。では行きましょう。

まず基礎知識をつけましょう。(少し我慢!)

ぷろとにうむ、、、、しーべると、、、、べくれる、、、、$%$&’’$#’$(%)&0’*`*『『*=、、、、うわー!!!

いつも放射線の事を勉強すると専門用語だらけで投げ出したくなります。実際私も何度も投げ出しました。ある程度分かるようになるまでに開いた現実逃避のLINEとTwitterの回数は計り知れません。しかし勉強して振り返ると実はそこまで複雑では無い事がわかります。知識は最低限でいきましょう。

 

基礎知識その1:『mSv』=放射線の攻撃力

まず最初に覚えた方が良いのは『mSv』。ちなみにミリシーベルトと呼びます。これは放射線の攻撃力を示す単位だと思っていただければ良いです。(ちなみに放射線自体の攻撃力はGyだが、ややこしくなるので省略)

まず、この単位のイメージが出来る事が本当に大事なステップと私は思います。料理をする時に砂糖5gを加えるとどういう味付けの変化が想像できない人が料理を上手く作れないのと同じと思って下さい。

まず一つの事実として、一度に浴びた放射線の威力は以下のようなものです。

100mSv浴びる→人体に影響

1000mSvを浴びる→症状が出現

4000mSvを浴びる→半分の人が死ぬ

 

ちなみに福島で避難区域になっているのは年間20mSv。

イランのラムサールでは年間200mSvの被曝があると言われています。

CTを一回撮れば6.9mSv被曝します。

飛行機に乗ると0.19mSv(NYと東京を往復した場合)被曝します。

レントゲンをとると0.06mSv被曝します。

ここで大きな目安は100mSv。大事すぎるので大きく書いておきましょう。

100mSv。

100mSv以上での癌のリスクの上昇は科学的に証明されています。(100mSvで0.5%、200mSvで1.0%の癌のリスクの上昇あり)一方で100mSv以下について、長崎、広島、チェルノブイリの被爆者での研究では癌のリスクの上昇を認めておりません。しかし、『データーが存在しない事』=『科学的根拠がない事』ではありません。

医療の世界で異常が『ない』事を証明するためには消去法が使用されます。そのため膨大なプロセスが必要であり、現段階で100mSv以下で人体に影響がない事を科学的に証明するための情報量を満たしていません。

国際的な結論は、100mSv以下での健康被害は『現段階で証明はできないが、前例はない』という事になっています。(ちなみにマウスでの実験ではある程度証明されているが人間に適応するのは少し無理があるようです。)

あとはGyとかベクレルとかそういう単位を聞いた事があると思います。しかし、これらも多くはmSvの変換できます。物理学者とか専門家とか医療者にとっては必要な知識かもしれません。しかし私を含めた素人はとりあえずmSvぐらいをしっかり理解してイメージできれば良いと思います。

基礎知識その2:放射性物質の代表格2つセシウム、ヨウ素

次に大切な情報は放射性物質についてです。よく聞くのはストロンチウム、プロトニウム、セシウムヨウ素の4つだと思います。理論を話せば長くなるので、ざっくりいくと大切なのはセシウムヨウ素の二つです。

ストロンチウムプルトニウムに関してはセシウムと比較して内部被曝による健康被害への影響はかなり低いとされています。(端的に申し上げると1ベクレル辺りのmSvの値が小さい+拡散能力が低いという訳ですが、難しいのでスルーしましょう。)

 

まずはヨウ素です。ヨウ素で問題となるのは甲状腺癌です。チェルノブイリ原発事故の後に小児の甲状腺癌の患者数が増えました。この事実は国際的な正式な機関が正式な形で発表しています。なのでヨウ素健康被害は存在して、今後私達の身の回りで原発事故が起きた際には対策を全力で行なう必要があります。更にヨウ素は空気に乗ってばら撒かれるため被害が拡大する傾向にあります。

ここでのポイントはヨウ素たった8日で半分になるという性質です。過去の原発事故の際も大量のヨウ素がばら撒かれました。しかし、8日で半分に16日で4分の1に、1ヶ月後には16分の1。そして数年以上経った現在では皆無になっていると思われます。つまりヨウ素は数ヶ月間しっかり注意すれば良いのです。

 

次にセシウムです。チェルノブイリでも福島の事故でも主に検出されたのはヨウ素とこのセシウムです。福島の事故では現地入りした科学者により検査が行われ、子供を中心に数百ベクレルから数万ベクレルセシウムを検出しております。ちなみにセシウム(137の方)においては1ベクレル=0.000013mSv。つまり今回の研究で検出されたセシウムによる被曝は仮に10000ベクレルの蓄積が認められた人で0.13mSvです。NYと東京を飛行機で往復した時の被曝量と同じになります。勿論現段階で健康被害はされておりません。セシウム半減期は30年程度。そもそも私が普段から食べる野菜からK40という放射線物質を摂取しており年間0.2程度mSv内部被曝しております。現段階のデーターではセシウムに関して心配する事は、被曝が怖くて飛行機にのらず、野菜も食べないに等しい事になります。

基礎知識3:日常生活で被爆している?

私たちは普通に生活しているだけで被曝します。次にこの事に触れます。

私達は太陽の光を浴びています。太陽の光には放射性物質が含まれており、直接被曝したり、植物や動物を介して内部被曝したりします。自然界にもともと存在する被曝量を自然被曝といい、その量は日本では年間1.5mSv程度とされています。ちなみに地域によって差がありイランのある地域では年間50mSv、100mSvを超える地域も存在します。

自然被曝以外の被曝で私達が思いつくのは、医療被曝です。日本は世界一の医療被曝大国です。年間の医療被曝は平均4mSv程度とされています。日本人の3分の1から2分の1が癌で死ぬのは、医療被曝のせいだと結論づける学者がいましたが、それは大嘘で(一因である可能性は存在はするがほぼゼロという意味)日本人が癌で死ぬようになった理由は人が長く生きるようになったからです。

話はずれましたが医療被曝は年間平均4mSv程度です。医療被曝を受けるのは高齢者がメインです。例えば100歳の方が100mSv以上の被曝でガンになるのに20年かかると言われており、余命との兼ね合いで高齢者の被曝のリスクと病気の早期発見が遅れるリスクを天秤にかけて、医療被曝を受けてでも検査をする必要があると考えて試行されています。

私たちにはその他に法律で被曝限度を定められています。年間1mSvです。この限度には医療被曝と自然被曝は含まれていません。この事から私達は自然被曝1.5mSv+医療被曝4mSv+法的被曝限度1mSvでだいたい年間6.5mSvの被曝をこの日本で一般的に生活しているだけでします。

インターネットの記事は正しいのか?

よくインターネットで被曝について不安を掻き立てるような記事を見ます。実はこの類の記事に書かれている被曝量に関しては意外と正確だったりします。

例えば都内、原子力で検索したところ、かなり高い順位の記事に『都内で0.22μSv検出!!』みたいな記事がありました。確かに原発事故によって多少の検出量の増加は予想されますが、0.22μSv=0.00022mSvであり、気にするのは個人の判断に委ねるべきですが、それがどの程度の被曝に相当するかは今回の記事をしっかり理解した人ならご理解頂けるでしょう。

なんとなく分からない単位や分からない放射性物質の名前が出ると恐ろしい気持ちになってしまいます。しかしながら改めて知識を付けていくと意外と想像していた知識と異なる可能性があります。取り敢えず。有名なmSv、放射性物質、日常の被爆について触れました。

 

興味がある方は、他に放射線関連の様々な記事を書いたのでご参照下さい。

チェルノブイリから考える被曝の被害 〜医師と被曝について考えましょう②〜

広島・長崎から考える被曝 〜医師と被曝について考えましょう③〜

エネルギー問題と原子力発電 〜医師と被曝について考えましょう④〜

とある医師の見解 〜医師と一緒に被曝について考えましょう⑤〜

(この記事は私が研修医だった時に書いた記事です。それ以降、専門領域で知識が更新されている可能性があります。)

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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