アルポート症候群とは?

アルポート症候群とは?
アルポート症候群とは?

腎臓内科医の森です。アルポート症候群は、非常に稀な疾患のため臨床医もあまり経験しない遺伝性疾患ですが、情報提供が必要な患者さんがいたので記事にしようと思います。

アルポート症候群の症状とは?

初期には肉眼的には分からない顕微鏡的血尿しか認めないことがあり、健康診断などで行われる尿検査で尿潜血を指摘される事が多い疾患です。運動や風邪をひいた後に、肉眼で分かる血尿が出たりすることもあります。

腎臓の障害が進行すると尿タンパクを認めて、更に進行すると透析や移植が必要な状態になると言われています。後でも触れますが、病気の遺伝のタイプで病気の進行度合いが異なります。

腎臓以外では、難聴や視力障害があります。思春期から青年期にかけて難聴を発症する事が多いのですが、難聴がなくてもアルポート症候群の時もあります。

アルポート症候群の原因は?

原因はIV型コラーゲンという物質の遺伝子の異常で起きる病気です。IV型コラーゲンはα1-α6鎖というもので構成されるわけですが、そのα3,4,5のいずれかに遺伝子変異を起きて発症します。

そのため、非常に重要なのが家族歴で、家族中の方に血尿がないか・家族に腎臓病の人・透析をしている人がいないかを腎臓内科医はしつこく聞きます。

遺伝の仕方は説明が難しいのですが、アルポート症候群には二種類あって常染色体型(じょうせんしょくたいがた)とX連鎖型(えっくすれんさがた)があります。この違いは症状や重症度に関わるので大事になります。難しいのですが、常染色体は性別を規定する遺伝子以外の遺伝子の事を指して、X連鎖型は性別を規定する遺伝子の事を指します。

常染色体型(20%)

α3,4鎖に遺伝子変異あり。常染色体型の中で更に、優性型(ゆうせいがた)と劣性型(れっせいがた)に分ける事ができてどちらに属するかで予後(重症度)が変わります。

・常染色体優性型:透析に至るのは大方50歳を過ぎてからで予後良好です。

・常染色体劣性型:透析に至るのは10代頃と早期で予後不良です。

X連鎖型(80%)

α5鎖に遺伝子変異あり。男性と女性で重症度が異なります。

X連鎖型男性:70%が30歳までに透析に至ります。比較的予後不良です。

X連鎖型女性:男性に比べて進行が遅く、透析に至る場合やそうでない場合があります。難聴や蛋白尿が持続している場合は要注意です。

アルポート症候群の診断は?

家族歴、尿所見異常を元にして腎臓内科医は精査を決めていきます。具体的には、

1)親族に血尿、蛋白尿を指摘されて透析をしている人がいる。

2)蛋白尿が続いている。

3)難聴や視力低下がある。

かどうかを聴取して当てはまるようであれば腎生検、皮膚生検を施行して、IV型コラーゲンの異常をみつけて診断します。家族歴がなくても突然変異の可能性があるのでしっかり鑑別に挙げる必要があります。具体的な診断基準は下記に図をのせておきますが、いろんな診断基準があり、難しい言葉並んでいるので無視で大丈夫です。

<アルポート症候群の診断基準>

・主項目に加えて副項目の1項目以上を満たすもの。

・主項目のみで副項目がない場合、参考項目の2つ以上を満たすもの。

主項目:持続性血尿

副項目:Ⅳ型コラーゲン遺伝子変異、Ⅳ型コラーゲン免疫組織化学的異常、糸球体基底膜特異的電顕所見

参考項目:腎炎・腎不全の家族歴、両側感音難聴、特異的眼所見、びまん性平滑筋腫

アルポート症候群の検査は?

アルポート症候群の診断のために腎生検(じんせいけん)という腎臓の組織みて顕微鏡的観察するための検査を行います。(かなり難解なので、一般の方はこの項は読み呼ばして下さい。)

アルポート症候群の腎生検において免疫抗体法でIV型コラーゲンα鎖染色を行います。この染色で、遺伝子に異常がないかを判断出来ます・冒頭で、遺伝子変異は常染色型とX連鎖型に分けられると述べました。糸球体基底膜はα3/4/5が存在して、糸球体ボウマン嚢や皮膚にはα5/5/6が存在します。

常染色体型の場合、α3.4鎖に異常があるので染まりません。結果、糸球体基底膜には全く染色されません。それに対して、糸球体ボウマン嚢は染まるので、染色すると糸球体の周りだけくっきり染まります。(本当は常染色体優性は染まり正常像を示します。難しい事は考えずに、劣性型は予後が悪いので全く染まらない、優性型は予後が良いので染まって正常とおぼえて下さい。)

一方でX連鎖型劣性の場合、α5鎖に異常があるので、糸球体基底膜、ボウマン嚢両方染まりません。(これも男性は予後が悪いので全く染まらないのですが、女性の場合は比較的予後が良いのでやんわり染まると考えて下さい。)

アルポート症候群の治療は?

特異的な治療はありません。基本的には、慢性腎臓病に準じた保存的な治療が中心になります。運動療法、食事療法、血圧コントロールをしてこれ以上腎臓が悪くならないようにして、腎臓が悪くなったら、透析や移植を考えます。

保存的な治療においてRA系阻害薬という降圧薬を使用します。この降圧薬を腎臓を守る作用があり、アルポート症候群でもこの効果を期待します。また過去にはシクロスポリンという免疫抑制薬が有効という研究が出たが、ガイドラインでは推奨しないとの記載になっております。

腎臓が悪くなったら透析、移植を検討します。他の疾患に比べて、動脈硬化などの合併症も少なく予後が良好と言われております。また移植に関しては生体腎移植が中心の日本では遺伝性疾患のため要注意です。また抗糸球体基底膜抗体腎炎の報告があり要注意です。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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