医者はどうやって腎臓を評価しているのか(詳細Ver)

2017.11.05
医者はどうやって腎臓を評価しているのか(詳細Ver)
医者はどうやって腎臓を評価しているのか(詳細Ver)

このブログをみている方は、腎臓が悪い事と医者から指摘された患者さんかそのご家族の方、また腎臓病患者を診ている医療関係者が多いと思います。このブログの記事もそろそろ40記事を越えてきて、蛋白尿、血尿などの尿所見の記事や、貧血、リンなど腎臓が悪くなるのを防ぐために気をつけていく方法の記事などを中心に書いてきました。

 

ここでそもそも医者は腎臓をどうやって評価しているのかの話をしてみようと思います。検診の採血結果などが手元にある患者さんはその紙を見ながらこの記事を読み進めて頂ければと思います。(検診は自治体によって項目が異なります。)

 

 

何度も言いますが、腎臓が悪くなっても症状は全然出ません。そのぐらい腎臓はしぶとい臓器だというイメージを持って頂ければよいのですが、反面、腎臓が悪くなっても中々気づかない所が厄介な所でもあります。実際、腎臓内科の初診外来をやっていて、『なんで私が病院にいるのかがわかりませんわ』と良く言われるくらいであり、現場では『何故、腎臓内科外来に受診しててもらっているのか』を患者さんに説明する所から始まります。

 

症状が出た時にはかなり腎障害が進んでいる事が多く、長年かけて起きた腎障害は元には戻らないので、早めに腎障害が起きている事を発見して、早めに治療しようと思うわけです。そのために有用なツールが検診であり定期的に採血検査、採尿検査をします。具体的には腎臓内科的には採血検査でクレアチニンという値を、採尿検査では主に蛋白尿、血尿の有無を見ます。

 

1:血清クレアチニン値 〜検診などで測定される値〜

蛋白尿、血尿は『腎臓のSOS』ですとこのブログで言っていますが、今日触れるのは採血検査についてです。採血検査では、『現段階で腎臓がどのくらいしっかり働いているか』を評価します。具体的にはクレアチニンという値をみて評価します。採血の紙にはCrと書かれている事もあります。このクレアチニンという値の上昇が腎機能障害を示唆します。

しかしこのクレアチニンという値は、年齢や性別で評価が異なります。例えば、Cr1.2という値が出た場合、男性のCr1.2と女性のCr1.2という値では重症感が異なります。また、一般の方がクレアチニンという値を見てもあまりイメージが付きにくいという問題点も抱えていました。

 

2:eGFR 〜クレアチニンの進化Ver〜

こういった背景から『eGFR』という概念が生まれました。このeGFRという概念はクレアチニンの値から年齢、性別という概念を組み込んで計算した値です。eGFRについては別途記事を書きました。

ここで算出されたeGFRという値は、厳密に言うと『推定糸球体濾過量』と言いますが、患者さんに話するとポカンとされます。こういう事言うと、偉い方に怒られるかもしれませんが、このeGFRはザックリ言って『本当は違うけど、腎臓の点数みたいなものだと思って下さい』と説明してます。この腎臓の点数が60点を切っていると、『慢性腎臓病:CKD』という状態で食生活を含めた私生活を考え始める必要があります。30点を切ってきたら透析を検討し始めて、10点を切ったら透析を始めるイメージです。

 

慢性腎臓病に関しては過去に記事を書いていますのでご参照下さい。

 腎臓内科.com 
腎臓内科.com
https://腎臓内科.com/entry/20170817220613
透析にならない腎臓医療を現場から発信していきます。

 

3:血清シスタチンC

シスタチンはクレアチニンで測定をすると信憑性が乏しくなってしまう患者さんに対して測定します。具体的には筋肉量が少ない人(るいそう患者や四肢切断した患者さんなど)や筋肉量が多い人(アスリート、運動習慣がある高齢者)を対象にして行う検査です。このシスタチンという値をクレアチニンのように、年齢、性別の概念を組み込んで計算した式がeGFR-cysです。

このシスタチンという検査は最近生まれた概念であり、薬剤の影響で値が変わる可能性など分かっていない部分も多いと言われています。また妊娠、甲状腺の病気、HIVの患者には正確性に疑問符がつくため使用しない検査です。

 

4:クレアチニンクリアランス

蓄尿という24時間貯めた尿の検査と血清クレアチニン値を使用します。値は上記3項目よりも正確と言われています。しかしながら、24時間の尿をしっかり取る事が出来ないと信憑性に乏しい検査になる事も考慮して評価します。

 

5:イヌリンクリアランス

一般的な臨床現場ではあまり使用しない検査です。測定をするのが手間であり入院して検査したりする検査です。腎移植ドナーの腎機能の検査などでよく使用します。

 

腎臓内科の初診外来をやっていると、よくeGFRが40点ぐらいの人が紹介されてきます。患者さんに『予想で答えて欲しいのですが、健康な人の腎臓を100点とすると何点ぐらいだと思います?』というと多くの人が『70点くらいですかねー』とおっしゃいます。『ざっくり4-5割くらいですねー』というと多くの人がショックを受けます。

 

皆さんしっかりとクレアチニンの値とかは近所の開業医の先生方にしっかり説明してもらっていて理解しているにも関わらず、腎臓が悪いという認識はないのが現状です。自覚症状にも乏しく、eGFRなどの腎臓の評価項目の概念も難しくてよくわからないのでこのような事になるかなと個人的には思っています。

 

腎臓領域の医療は勝負は早期発見、早期治療介入だと思っています。この記事を呼んで一人でも多くの患者さんに自分の腎機能を認知して頂ければ幸いです。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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