『糖尿病』+『蛋白尿』→必ず医療機関にかかりましょう。

2017.06.10
『糖尿病』+『蛋白尿』→必ず医療機関にかかりましょう。
『糖尿病』+『蛋白尿』→必ず医療機関にかかりましょう。

腎臓内科として日頃から糖尿病で腎臓が悪くなった人を多くみます。日本で透析になる患者の約半数が糖尿病が原因で透析になります。僕は『なるべく透析にならない』ような医療をしたくて腎臓内科になる事を決めた手前、目の前の患者さんだけでなく、日本に数百万人もいると言われている糖尿病患者さん、特にその中で2割ぐらいを占める、症状は無いけど、蛋白尿(アルブミン尿)が出ているような患者さんに届けばと思ってこの記事を書いています。

 

なるべく、薄っぺらいメディアみたいに不安を煽るような事はしたくないと思って記事を書いていますが、今日伝えたい事はズバリ『糖尿病』+『尿蛋白』→必ず医療機関にかかりましょうです。

こんな事行って、自分自身だらしない人間です。研修医時代の恩師がよく言っていた『健康よりも自由の方が大事である!』という言葉もなんとなく大事にしながら診療しています。健康のためにケーキ食べたらダメ、ラーメン食べたらダメ、だめだめ・・・・、という風にやたらむやみに患者さんの意思を無視して頭ごなしにダメダメいう医者にだけなりたくないと思っています。健康でいたいけど、接待で不規則な生活をしなくちゃいけないとか、妻の料理の味付けが濃くてなかなか塩分制限が出来ないとか、ケーキ好きだから食べちゃうという、人間の性であったり、矛盾にこそ、人間らしさがあり、だからこそ医者の仕事は面白いんじゃないかとも思っています。

それでもスタンスで診療している私ですが、『糖尿病』+『尿蛋白』→必ず医療機関にかかりましょうと言い続けます。

何故糖尿病が怖いのか?(腎臓内科医の視点)

取り敢えず、下の図を見てください。今日の肝です。この図を大きく分けると①青〜黄色の左半分、②黄色右半分、③オレンジの部分の3つに分けることが出来ます。

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糖尿病性腎症ならびに腎硬化症の診療水準向上と重症化防止にむけた調査・研究 研究班 編  

phase1:『糖尿病ですけど、何か?』(青〜黄色の左半分)

大事なのは、Phase1の頃、つまり糖尿病になってから数年間何も起きないという事です。健康診断とかで『あなたは糖尿病です。』って言われたけど、別に生活に困ってないし、『糖尿病ですけど、何か?』ってというスタンスの時期が数年続きます。

症状も無いし、困っていないので不規則な生活を続ける方も多く、糖尿病の薬も面倒くさいし、病院も待ち時間多いから行かなくなる方が多い時期です。日本では約半数の糖尿病患者が治療を辞めたり、離脱します。辞めてしまった患者さんの内、多くが症状が出るまで病院に来なくなります。そして再び医療機関を受診した時に取り返しが付かない事になっている事例を医者をしていて一杯見てきました。

話は変わりますが、こういう患者さんを医者は『コンプライアンスが悪いダラシない患者だ』と否定してしまいがちです。しかし、飲み会大好き、朝まで飲むぞーっていうタイプの駄目駄目な情けない医者の私からすると、症状も無いのに、待ち時間の長い診療所に行って、お金を払って、薬を飲み続けるなんて苦痛でしかありません。

話を戻すと、糖尿病になってから数年間何も起きない時期があります。この間にも体の中では障害が積もりに積もっていきます。

phase2:『なんか、物が見えにくかったり、痺れがあります。』(黄色の右半分)

治療を辞めた患者さんが再び病院にくるのがこの時期です。目の霞み、痺れのような症状が出てやっと治療の必要性を感じて治療を行います。この頃から、腎臓のSOSである尿蛋白の一種である『アルブミン尿』が出現します。この『アルブミン尿』が少量、具体的に30mg-299mg/gCr出ている状態を『早期腎症(糖尿病性腎症第2期)』と言います。更に進行して、300mg/gCrを越えると『顕性腎症(糖尿病性腎症第3期)』の状態になります。(『けんせいじんしょう』と読みます。)下のオレンジの線が盛り上がってきた頃です。

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『顕性腎症』の頃になると、腎機能を示す黒線がいきなり急降下します。腎機能を示すGFRで言うと年間5-20ml/min/1.73m2ぐらい落ちていきます。非医療者の言葉に治すと健康な人の腎臓が100点とすると、毎年5-20点ぐらい腎臓の機能が落ちていき、透析が必要な状態になります。

phase3:腎臓がドンドン悪くなっていきます。(オレンジの部分)

腎臓は、体に必要なものを再吸収して、不要なものを外に出す役割があります。腎臓働きが落ちるとむくんで体がパンパンになったり、不要物が体に溜まって味覚が低下したり、食欲がなくなったり、下手すると意識が朦朧としたりします。結果、腎臓で出来ない事を『透析』で賄うしかなくなってしまいます。

糖尿病はなかなか症状が出ず、いざ実際症状が出た時にはすでに透析な必要な段階の直前であり、病院に行って動揺する患者さんも多くいます。

 

糖尿病って治るの?

そこで気になるのは、糖尿病による腎臓の障害は果たして治るのかという話です。端的に言うと、あまりはっきり分かっていません。ちなみに腎臓は大方、一度壊れると再生しない臓器です。そのため従来は、アルブミン尿や蛋白尿は一度出てしまうと一生出っ放しだと言われていました。しかし、近年、早期に治療を行えばある程度再生する可能性がある事が分かってきました。大事な事なのでもう一度書きましょう。早期治療介入すれば、良くなる可能性あります。

『早期腎症(糖尿病性腎症第2期)』の段階でしっかり治療すれば、アルブミン尿が出なくなる段階まで改善する事もあります。『顕性腎症(糖尿病性腎症第3期)』でも厳格にコントロールすれば、良くなる事もありますが、可能性は『早期腎症(糖尿病性腎症第2期)』に比べると格段に低くなります。早ければ早い程、良いと思われます。

最後に伝えたい事。

実は私は医者でありながら、自身あまり長生きしたいとは思っていません。健康に気をつけるばかり、楽しい事を我慢するような生活をしたくはありません。飲み会大好き、肉大好き、酒大好きな人間です。しかし、とある日本の有名な作家が残した名言通り、『高齢化社会になり、死を自らがデザインする時代になった』という言葉は医者をやっていて非常に本質をついていると痛感します。ある種、糖尿病を放っておくのも『自由』なのかもしれません。

それでも、『糖尿病』+『尿蛋白』→必ず医療機関にかかりましょうとオススメします。近年、糖尿病の薬の治療成績も非常に良くなり、病院に通い続けるだけでもある程度コントロールが出来るようにもなってきました。早期であればあるほど、我慢する事も少なくて済みますし、手を打つ事が出来ます。

今後日本の社会保険制度が厳しくなっていく中で、糖尿病による透析の風当たりは強くなっていくと思います。私自身、やむおえず透析になってしまった患者にとって透析医療は最高の医療と思っていますが、透析自体患者さん本人にとって大変な治療なため、防げるのであれば防ぎたいと思ってこのサイトで記事を書いています。

更に詳しく知りたい方は糖尿病による腎障害の『糖尿病性腎症』について書きましたのでご参照下さい。

しつこいかもしれませんが、『糖尿病』+『尿蛋白』→必ず医療機関にかかりましょう。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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