腎移植のドナーの評価についてまとめました。

腎移植のドナーの評価についてまとめました。
腎移植のドナーの評価についてまとめました。

生体腎移植のドナーについて本日はまとめました。この記事では通説を中心にお話します。移植に関しては、まだまだ科学的なコンセンサスがないことも多く、ドナーの通説に対する批判的な意見などもあります。詳しくはこちらにまとめましたのでご覧になってください。(腎移植のドナーの長期予後について

ドナー:腎臓を渡す人、レシピエント:腎臓をもらう人

ドナーになるためには

日本では、レシピエントの6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族であることが条件です。一般的に多いのが親、配偶者、兄弟が多いです。もう一つの条件はドナーが自らに起きるデメリットを理解した上で自発的に臓器を提供する必要があります。その上で医学的な精査を行ない基準を満たした患者のみがドナーになれます。

倫理的基準はイスタンブール宣言を参考に、医学的基準はアムステルダムフォーラムガイドラインを参考に基準が作成されております。

繰り返すと、ドナーには医学的なメリットは一つもありません。そのため自発性が一番尊重されるべきと考えられております。ドナーと40%がドナーとなることに対して何らかの圧力を感じているという報告もあり、慎重に時間をかけて決めていく必要があります。

ドナーになるための医学的基準

基本的な適応

日本の生体腎移植のドナーガイドラインでは基本となる適応を以下のようにしました。

・年齢は 20 歳以上で 70 歳以下

・全身性活動性感染症、HIV 抗体陽性、クロイツフェルト・ヤコブ病、悪性腫瘍(原発性脳腫瘍および治癒したと考えられるものを除く)が無いこと

・血圧は 140/90mmHg 未満

・肥満がない。BMI は 30Kg/m2 以下。高値の際は 25 Kg/m2 以下への減量に努める

・腎機能は、GFR(イヌリンクリアランスまたはアイソトープ法、クレアチニンクリアランスで代用可)が 80ml/min/1.73m2 以上

・タンパク尿は 24 時間蓄尿で150mg/day 未満、あるいは150mg/gCr 未満、またはアルブミン尿が 30mg/gCr未満

・糖尿病(耐糖能障害)はないこと

・器質的腎疾患がない(悪性腫瘍、尿路感染症、ネフローゼ、嚢胞腎など治療上の必要から摘出された腎臓は移植対象から除く)

 

Marginal donor

一方で日本ではドナー不足であったり長年の成績を加味して、Marginal donorという基準を設けて上記を満たさない場合も検討出来る基準を設けております。(以下、意訳あり。)

・年齢は 80 歳以下でも身体年齢が若いと考えられる時。

・降圧薬を飲んでいるが、130/80mmHg 以下に厳格に管理され、かつ尿中アルブミン排泄量が 30mg/gCr 未満である時。また高血圧による臓器障害がないこと(心筋肥大、 眼底の変化、大動脈高度石灰化などを評価)

・肥満があっても BMI は32 Kg/m2 以下の時。高値の際は 25 Kg/m2 以下への減量に努める

・腎機能は、GFRが70ml/min/1.73m2 以上

・糖尿病でも内服でHbA1c が6.5%以下で良好に管理されており、アルブミン尿は 30mg/gCr 未満であること。ただしインスリンは不可。

・今後、血圧管理、糖尿病管理、BMI 是正が期待できる時

・ドナーに腎障害が出る可能性が高いことを十分に説明されていること

ガイドラインの内容を引用しましたが、一部を詳しく解説してみようと思います。

ドナーの評価(腎臓編)

・腎機能

ドナーは腎臓が一つになってしまうので、移植をする前の腎臓の状態が良好である必要があります。評価の方法として、採血検査で行なうクレアチニン、シスタチンC、eGFRなどがありますが、それだけでは不十分なため24時間の蓄尿検査を使用で行うクレアチニンクリアランスや、本当に必要な時はイヌリンクリアランスを行います。詳しくは別途記事にしたのでご参照ください。(クレアチニン・eGFR以外の腎臓の評価方法をまとめました。

評価の結果、80mL/min以上であればクリアと考えられます。しかしながら、年齢を加味として高齢のドナーの場合は基準が緩くなることがあります。また日本の場合は、ドナー不足のためにMarginal donorという基準を設けており、70-80mL/minでも条件付きでドナーとなることもあります。

・タンパク尿

タンパク尿は、今後の腎臓の状態に大きく関わるのでタンパク尿で150mg/gCr 未満、またはアルブミン尿が 30mg/gCr未満と決められています。可能なら24時間蓄尿での精査が望ましいと考えられていますが、部分尿で代用されることもあります。日本ではRAS系阻害薬を投与して、アルブミン尿、タンパク尿が基準値になる場合もドナーとして検討可能と考えられています。

タンパク尿については詳しくはこちらを参照してください。(蛋白尿とは?

・顕微鏡的血尿

顕微鏡的血尿がある場合は、IgA腎症、遺伝性腎炎、基底膜菲薄病などが考えられます。これらの疾患がある場合、腎障害が起きていなくても今後腎障害が進行する可能性があり、腎生検という組織学的な検査をする必要があります。

尿潜血とは??)(腎生検についてまとめました

・腎結石

ドナーの腎臓に結石があると、その結石が尿管に詰まり尿の出口が無くなって起きる腎障害の腎後性腎不全になる可能性があります。超音波やCTで適宜確認する必要があります。

・原疾患

レシピエントの腎臓が悪くなった原因として、免疫や遺伝性の病気が関わっている場合、ドナーの腎臓を移植しても再び腎障害が起きることがあります。腎機能障害が起きた原因が不明な時は可能な限り腎生検をして原因をクリアにしておく方が望ましいこともあります。

ドナーの評価(腎臓以外編)

・糖尿病

原則糖尿病がある場合は、ドナーとなることは出来ませんでした。しかしながら、近年血糖コントロールが良好で、アルブミン尿が出ていない患者さんはドナーとして検討するようになりました。(欧米ではドナーになれません。)日本では内服をしていても血糖コントロールが良好で、アルブミン尿が出ていない時は検討することもあります。

・高血圧

高血圧であっても、内服などで血圧コントロールがよく、かつ尿中アルブミン排泄量が 30mg/gCr 未満である時は、ドナーになることが出来ます。ただし、網膜症や心肥大などの高血圧による臓器障害がある患者はドナーとなることが出来ません。

・肥満

肥満は糖尿病、高血圧などの腎障害に繋がる要素と関わるのでドナーとして望ましくありません。また腎臓が一つになると今までに2つで引き受けていた腎臓の負担を1つで引き受けることになるので減量が望ましいと考えられています。

・感染症

ドナーの感染症がレシピエントに感染するのを防ぐ必要があるのでチェックします。具体的にはピロリ菌、CMV、EBV、風疹、麻疹、水痘、ムンプスウイルス、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV-1、結核、梅毒などをチェックします。(詳しくは別記事でまとめる予定です。)

・悪性腫瘍

ドナーの悪性腫瘍がレシピエントに移るのを防ぐ必要があるのでチェックします。肺がん、胃がん、前立腺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん、子宮体がんなどのスクリーニングを行います。近年、悪性腫瘍が完全に治癒されている場合も適応とすることがあるそうです。ただし、肺がん、乳がん、白血病などの造血器腫瘍、メラノーマ、精巣腫瘍、腎細胞癌、M蛋白血症などは治癒していても適応とならないことが多いです。

・心臓

ドナーになると大方の方がCKDの状態になります。CKDは心血管イベントのリスクになるので術前に評価を行います。心電図、心臓超音波などを適宜行います。

最終的には施設によって基準が異なります

ドナーの評価について代表的なものを触れました。その他にも色々検査があります。最終的には移植を行う施設によって基準が異なります。そのため、個人的には最低限の問診などを行い、明らかなドナー基準を満たさない症例を除外して移植が行える施設にご紹介させて頂きます。何かございましたら遠慮なくご相談ください。

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