CKDと野菜・果物に関して

CKDと野菜・果物に関して
CKDと野菜・果物に関して

腎臓病の患者さんは何かと食事制限を求められます。塩分制限、タンパク制限、糖尿病だと炭水化物も控えましょうと言われてしまいます。更に今日お話をする野菜や果物も制限するように言われてしまいます。腎臓内科.comではなるべく日常生活に反映出来るような形での食事について情報提供をしようと思って記事を書いています。

今日のテーマは野菜と果物についてです。腎臓病の患者さんは野菜と果物を食べ過ぎると身体の中の「カリウム」という物質が溜まり、「高カリウム血症」になります。高カリウム血症は重度になると不整脈の原因となるので避ける必要があり結果、果物・野菜を制限しましょうという話になります。

結論から言うと、私見も入っているのですが「高カリウム血症にならない範囲であれば、腎臓病の患者さんでも野菜・果物は食べても良い、もしかしたら食べた方が良いかもしれない」というのが結論です。

カリウム・リンの取り扱い、タンパク質摂取に関しては、腎臓内科医の間でも議論が分かれます。今日の記事は個人的な私見が入っているので主治医の先生と違ったことを言っている場合は主治医の先生の意見を優先させて下さい。

野菜・果物制限に関わる話として以下の2点があり、それぞれの目線から書いていきます。

1:タンパク質について

2:カリウムについて

タンパク質の目線から

腎臓病になるとタンパク質を制限するように言われます。(詳しくは別記事でまとめました。→腎臓病におけるタンパク質制限についてまとめました。 

タンパク制限をする際に野菜にもタンパク質が含まれるため制限するように言われることがあります。

腎臓病の栄養指導として、たんぱく質摂取の食事制限は腎臓保護治療として長い間提案されてきましたが、どのようなタンパク質を摂るかということに関しては調べられてきませんでした。ここ数年、動物性のタンパク質と植物性タンパク質ではもしかしたら話が変わってくるのではないかということが注目されています。

植物性のタンパク、豆腐とか野菜とかに含まれるタンパク質はフィチン酸という物質が入っているのですが、リンなどの腎臓病にとって好ましくない物質に関しては腸管から吸収されにくくもしかしたらあまり問題無いのではないかという考え方があります。2011年にCJASNという腎臓界隈では有名な科学誌からの報告では植物性タンパクを採っている方が動物性タンパクを採っている方よりも腎臓病にとって望ましい結果になるという報告がありました。(Vegetarian Compared with Meat Dietary Protein Source and Phosphorus Homeostasis in Chronic Kidney Disease. CJASN 6: 257-264, 2011

その後、数は少ないものの同じような報告がされました。この報告では植物性タンパク質でも安全に食生活を送ることができたことを報告しています。(The effect of a diet containing 70% protein from plants on mineral metabolism and musculoskeletal health in chronic kidney disease. Am J Nephrol. 2014;40(6):582-91

また、腎臓病患者さんでは植物性タンパクをある程度とった方がもしかしたら死亡率が下がるかもしれないですねという報告もあります。(The Associations of Plant Protein Intake With All-Cause Mortality in CKD.Am J Kidney Dis. 2016 March ; 67(3): 423–430.

これらの研究結果を全て当てはめるのは早計で、一つ一つ批判的に見ていく必要があります。批判的吟味(ひはんてきぎんみ)と言います。対象の患者さんが少なかったり、そもそも植物性タンパク質をとっても大丈夫だった人(つまり元々丈夫と予想される人)が結果を良い方向に引っ張っているだけで、同じ人が植物性タンパクもしくは動物性タンパクをとった時に結果がどうなるかは分からない可能性、植物性タンパク摂取量の評価方法など、様々な視点からこれらの報告が本当に正しいのかをみる必要があります。

また、腎臓病が軽症なのか・重症なのか、糖尿病があるのか・なにのかなどの要素によっても話が大きく変わり、一律に「植物性タンパクOK」とは言えません。世界中の研究結果が少しずつ積み上がって最終的に科学的根拠になっていきます。

私は、これらの報告をみて以下のように考えています。

・植物性タンパクと動物性タンパクでは植物性タンパクの方が良さそう。

・ただし、コンセンサスを得るにはまだまだ程遠くて、一律に当てはめることが出来ない。

・外来通院で、採血でリンの値を見ながら量を決めていく。

カリウムの目線から

野菜・果物を腎臓病の患者さんが食べ過ぎると身体の中の「カリウム」という物質が溜まり、「高カリウム血症」になります。高カリウム血症は突然死の原因となる不整脈を引き起こす可能性があり控えるように言われます。またあまり知られていないのですが、持続する高カリウム血症の状態が神経障害を引き起こす可能性も指摘されています。

CKD診療ガイドライン2018でも「総死亡、CVDの発症を抑制するためにCKD患者の血清K値を管理するよう提案する。具体的な管理目標としては血清K値4.0-5.5mEq/Lでリスクが低下する。」と書かれています。

この項で伝えたいのは、野菜や果物そのものが腎臓を悪くすると勘違いしている患者さんが多いのですが、正確には「野菜や果物を食べてカリウムが身体に貯まると不整脈に繋がるため良くない」のです。言い換えると野菜や果物を食べてもカリウムが身体に貯まらなければ問題ないのです。

腎臓病でもステージ3aで軽症な人、糖尿病がない腎臓病の人は、比較的に野菜や果物を食べても腎臓からしっかりカリウムが排泄出来る力が残っているので野菜や果物を制限する必要はないと判断することもあります。

真面目な患者さん程、カリウムを極度に制限してしまうのですが、カリウムは低ければ低い訳ではなくカリウム4.0以下の患者さんは予後が悪いと言われています。(但しこの報告も批判的吟味が必要です。)

私は定期的に採血をしてカリウムを測定して、患者さんにとってどのくらいの野菜・果物を食べるのが適正なのかを検討して可能な範囲で野菜・果物を食べてもらっています。

2019年にもNDTというこれも腎臓で有名な科学誌の報告・評論では、重症化を防ぐという意味で腎臓病の患者さんでもリスクを評価した上で野菜・果物を中心とした食事を検討していっても良いのではないか?と触れています。(Vegetarian diets and chronic kidney disease.)

私は以下のように考えています。

・カリウムが高いことで死に繋がる不整脈になる可能性があるので注意が必要。

・一方で野菜や果物を一律に制限するのではなく状態を見ながら可能なだけ食べることを検討する。

それでもカリウムが上がってしまう場合は、野菜・果物を制限するか薬を飲む必要があります。どちらの手段をとっても良いのですが、個人的には食物繊維やビタミンなどの身体にとって必要な栄養素をとってほしいので野菜・果物は制限せずに薬を飲んでもらっています。但し、この薬は不味いことで評判です。中々飲めない人は渋々野菜・果物制限をしています。(現在新薬が治験中で、噂によると結構評判が良いらしいです、待ちましょう・・・。)

タンパク質、カリウムの観点から野菜・果物について触れました。腎臓病では食事制限が多く、治療における食事の重要性が高いと言われていますが、腎臓病の患者さんは高齢者の方が多く「制限!制限!」という流れに対してもう少し緩やかにして行っても良いのではないかという考え方が出つつあります。今回は個人的な食事に対する考え方も含まれてはいますので、何かご不明な点があればおっしゃってください。

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