「後、どのくらいで私は透析になるんですか??」という問いに対してどう答えるのか?

「後、どのくらいで私は透析になるんですか??」という問いに対してどう答えるのか?
「後、どのくらいで私は透析になるんですか??」という問いに対してどう答えるのか?

腎臓内科の森です。よく患者さんに、「後、どのくらいで私は透析になるんですか??」と聞かれることがあります。基本的には、「個人差があるので予想がつかないのが正直な所です。あくまで雑多な目安としては、今まで経過から〇〇年間でeGFRが〇〇下がっているから・・・」みたいな回答をしていたのですが、一応世界中で患者さんの年齢、検査データーなどから例えば5年後に透析になっている可能は何%かみたいな目安をつける計算式が作られています。

ここ2-3年の間この計算式を作る取り組み、そしてこれらの計算式は実際どこまで使えるのか?という研究がいくつかされているようで、ちょうど昨日もNDTという腎臓内科医なら誰でも知っている科学誌からこの類の発表がされていました。(Towards the best kidney failure prediction tool: a systematic review and selection aid )

昨年には、KDIGOというこれまた世界中の腎臓の情報をまとめている機関からもCKD stage4の患者さんに限ってですが、年齢、性別、人種、eGFR、収縮期血圧、心血管イベントの既往、糖尿病、喫煙歴、アルブミン尿の値などから2、4年後に透析・移植が必要になる確率、死亡リスク、心血管イベントになる確率などが分かるツールが発表されました。(TIMING OF CLINICAL OUTCOMES IN CKD WITH SEVERELY DECREASED GFR)。またこの計算式について書かれた原文はこちらです。(Predicting timing of clinical outcomes in patients with chronic kidney disease and severely decreased glomerular filtration rate

このKDIGOで発表されている計算式以外にも2011年にJAMAというこちらも有名な科学誌で発表されている予後予測ツールがあります。こちらはCKD stage3-5の患者さんを対象にして、年齢、性別、eGFR、アルブミン尿、カルシウムの値、リンの値、重炭酸イオンの値、アルブミンの値、人種などの情報から4年後に透析・移植が必要になる確率が提示されます。実際興味がある方はこちらのサイトで算定できます。(Kidney Failure Risk Calculator)、こちらのサイトの方が見やすいのですが、ちょっと違う(項目が少ない)計算式を使っています。(THE KIDNEY FAILURE RISK EQUATION

この計算式について、腎臓内科の上司や周りの先生方に、実際外来の場で患者さんにこの計算式を使って情報提供するべきかを聞いてみた所、賛否両論がありました。

まず第一にこの計算式は日本人に適した計算式かということがまだ分かっていません。医学の世界では、アメリカでやっている検査・治療・考え方が日本人には適していないなんてことはザラにあります。

また、糖尿病性腎症とIgA腎症で腎機能障害の進行が異なるようにベースの疾患で話が結構変わってくるのですが、これらの計算式ではそれらの要素を加味してくれません。入力した項目以外の要素が加味出来ない、つまり個別化出来ないのがこれらの計算式の弱点です。もしかしたら、間違った情報を患者さんに伝えてしまう恐れがあります。

あくまで目安であることが正確に患者さんに伝われば良いのですが、実際上手くいかないこともあります。先程触れた研究結果でも、ツールの有効性はあるものの、個別に当てはめる所までに至っていないと筆者は行っています。(Towards the best kidney failure prediction tool: a systematic review and selection aid )

一方で、このツールを使って患者さんに情報提供することで、今後の治療のイメージをつけることが出来ます。腎臓病の治療において患者さんが自分の病気に対してしっかりイメージを持つことは非常に重要です。「腎臓が悪いです。」と「腎臓が悪くてeGFRが35です。更に悪くなってeGFRが10ぐらいになると透析が必要です。」で患者さんのイメージが大きく異なり、今後の患者さんの生活習慣・行動変容に大きな差が出ます。

同様に、「腎臓が悪くて、eGFR35です。eGFR10ぐらいになると透析が必要です。あくまで目安ではありますが、4年後に透析になる可能性は15%です。」と情報提供することで、更に今後の患者さんの生活習慣・行動変容に大きく影響するのではないかと思います。(エビデンスにはなっていませんが。)

ということで私も結構悩んでいたのですが、こういうツールを使った情報提供を人を選んでドンドンしていっても良いのではないかと思っています。かなり賛否両論はあるとは思いますが、腎臓内科.comを読んでいる方は非常に意識が高く、もっと知りたいと思っている方が多いと思うので情報提供しました。

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