腎臓を守るβ遮断薬についてまとめました。

腎臓を守るβ遮断薬についてまとめました。
腎臓を守るβ遮断薬についてまとめました。

今日はβ遮断薬について書きます。かなり専門的な内容なので、医療者向けの記事となります。

β遮断薬は心臓の病気の心不全がある時に心臓の負担を減らすために使用される薬です。心臓と腎臓は密接に関わっており、腎臓が悪くなればなるほど、心不全になる確率が上がります。心不全治療薬としてβ遮断薬(ベーターしゃだんやく)がよく使われます。

CKDとβ遮断薬

昔はβ遮断薬が腎臓に悪影響を与えると考えられていたのですが、近年薬の改良や新たな研究結果を受けて、正しく使用すれば心臓だけでなく、腎臓を保護する可能性があることが分かってきました。

腎臓病の患者では交感神経系が活性化されている状態になっています。メカニズムとしては腎臓の虚血、レニン・アンジオテンシン系・酸化ストレス、一酸化窒素不足など様々な要素が関わっていると言われています。

交感神経系が活性化されている状態が続くと、血管平滑筋細胞、外膜繊維芽細胞、血管リモデリングを進めて、高血圧、動脈硬化を誘発して、腎臓の障害を更に進めてしまいます。β遮断薬はこの大元の交感神経系の活性化を抑えてあげることで腎臓の障害を防ぎます。

β遮断薬は死亡率を減らす

過去にβ遮断薬を使用したことによる腎臓の影響を調べたメタ解析があります。eGFRが60以下で、過去に心筋梗塞を起こしたり、心不全の患者さんを対象としてβ遮断薬を投与した患者さんはそうでない患者さんに比べて全死亡率が28%減らすことが分かりました。

またこの解析では、脂溶性のメトプロロールやカルベジロールの方が効果があることが分かりました。更に、メトプロロールは透析で除去されるため透析に時はカルベジロールの方が良いんじゃないか?ということも分かりました。

J Am Coll Cardiol 58:1152-1161 2011

ちなみに日本では、β遮断薬が透析患者さんであまり使われておらず10%程度でアメリカの60%に比べると少ないようです。そしてβ遮断薬を使用している患者さんの死亡率が48%減少しておりもっと使用されても良いのではないかと考えられています。

Nephron Clin Pract 113 c132-139 2009

β遮断薬は腎臓も守る

GEMINIという研究では、2型糖尿病の患者さんでRA系阻害薬という腎臓を守る降圧薬が投与されている患者さんにメトプロロールもしくはカルベジロールを投与し、経過をみたところ、両者ともにアルブミン尿を減少させる作用があり腎臓を守る可能性があるという報告も出てきました。

Hypertension 46:1309-1315,2005

メトプロロールとカルベジロールの比較

カルベジロールとメトプロロールの2つが代表なβ遮断薬でよく使われています。それぞれメリット・デメリットがあります。

カルベジロールのメリットとしては降圧効果、インスリン抵抗性の改善、腎保護効果が挙げられます。

メカニズムとしては、カルベジロールにはβ遮断作用に加えてα受容体遮断効果がありこれが降圧効果、インスリンの抵抗性の改善や骨格筋のブドウ糖利用が亢進することで糖尿病のコントロールが良くなったり、動脈硬化の改善に繋がっていると考えられています。

更に腎臓に関しては腎動脈拡張による腎血流の増加、輸出細動脈拡張による糸球体内圧の軽減で蛋白尿を減少させて腎保護効果を発揮します。

Hypertension 46:1309-1315,2005

メトプロロールのメリットとしては、β遮断薬しかなく心臓に対する効果を求める時、例えば心房細動に対して使用しやすく、またCOPDなどの心臓以外への影響を最小限を抑えることが出来ます。またメトプロロールと同様の作用を持つ、ビソノテープという貼り薬は非常に便利です。ビソノテープは24時間持続的に効果があることや内服が出来ない時に使用できるのがメリットです。(ざっくりビソノテープ4mgがメインテート2.5mgに相当します。)

個人的にはCOPDなどの特筆すべき合併症がない限りカルベジロールを使っています。

β遮断薬の使い方

β遮断薬を始める時は、合併症が起きないように慎重に投与していきます。まず投与を始める前に心不全の状態を確認します。具体的には身体所見で過剰な浮腫がないこと、胸部レントゲンで肺うっ血がないこと、採血検査でBNPの異常高値がないことを確認します。

その後、カルベジロールであればアーチスト1.25mg 1日2回からスタートして20mg/日まで少しずつ増量、メトプロロールであればメインテート0.625mg 1日1回からスタートして5mg/日まで少しずつ増量します。
一応、β遮断薬はなるべく多くしていく方が望ましいとのことですが、周囲の循環器の先生に話を伺うと、「取り敢えず少量でも良いから入れる」という風に言われる先生が多いです。副作用が怖くて中々怖い時は、少しだけ入れるのもありとのことです。
β遮断薬の効果は、動作時の呼吸苦が少なくなったなどの自覚症状、採血でのBNPの値・活性レニンの値、胸部レントゲン・心臓エコーでの評価を参考にします。(また脈拍も重要なのですが、不整脈の時はあまり重要でなかったりするようです。)

現在では、心不全を合併している腎臓病には可能な限り積極的にβ遮断薬を使っていく流れになっています。何かご不明な点がある場合は遠慮なくおっしゃってください。

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