透析療法・腎移植療法についてまとめました。腎臓病が進行したら必ず知ってほしいこと。

透析療法・腎移植療法についてまとめました。腎臓病が進行したら必ず知ってほしいこと。
透析療法・腎移植療法についてまとめました。腎臓病が進行したら必ず知ってほしいこと。

今日は、透析療法、移植療法についてお話をしようと思います。「腎臓内科.com」は「透析になるのを防ぐ」ために更新しているサイトなのですが、腎臓病の医療では「透析・移植が必要になった時にどのような治療を選ぶのか?」ということを予め決めておくことが非常に大切です。

どうして、敢えて透析・移植の話をするのか?

患者さんの中には、透析になりたくないという気持ちばかりが先行して、透析の話をすると完全に耳を塞いでシャットダウンしてしまう患者さんが一定数いらっしゃいます。中には透析が必要な状況の一歩手前になっても、透析・移植の準備をせずに、徐々に呼吸が苦しい、意識が朦朧とするなどの症状を訴えて緊急で入院して、緊急で透析をするような事例もあります。この緊急で透析するというのは非常にリスクが伴います。中々伝わらないので、私は飛行機に例えて説明しています。

透析をするというのは、飛行中の飛行機が着陸をするようなイメージを持って下さい。飛行機が安全に着率するためには、飛び立つ前にしっかり燃料を確保して、天気などを見積もって離陸して、着陸の際にはしっかり羽を広げて、車輪を出す必要があります。

透析も安全に透析を始めるために、いつ頃透析なりそうで、そのためにどのタイミングで透析の準備を開始するべきを考えておく必要があります。血液透析(けつえきとうせき)という透析の方法を行うためには、シャントという透析に必要な血管を手術で作る必要があります。手術してから、実際に血液透析をするまでに数週間以上待つ方が望ましいとも考えられています。(詳しくあとで触れます。)

緊急で透析をするのは、飛行機で例えると緊急着陸をするようなものです。燃料が無くなりそうな状態、視野が確保ができない状態、しっかり羽を広げられない状態や車輪を出せない状態で着陸するようなイメージで考えることできます。具体的には、シャントが無い場合、首の近くに走る血管に管を留置してそこから血液を取り出して透析をすることになります。この管を入れる処置には、出血、窒息などのリスクがありますし、管から感染するリスクも生じます。可能であれば行いたくないのですが、シャントがないため行わず負えないのです。

透析を先延ばしにするためにこの「腎臓内科.com」を書いていますが、「透析になった時に安全に透析を始めるための情報提供」は絶対に必要です。なるべく、遠くまで遠くまで飛行機を飛ばしたいと思っていますが、燃料が切れて墜落しないように着地地点を決めるのも大事なので今日は透析療法、移植療法についてお話をします。

なぜ、腎臓が悪くなると、透析・移植が必要になるのか?

腎臓という臓器は、ざっくり体にとって不要な物質を尿から出す働きがあります。腎臓が悪くなると、この不要な物質が体に貯まり体に悪影響を及ぼします。例えば、尿素窒素が貯まると尿毒症(にょうどくしょう)になります。尿毒症になるとだるくなったり、食欲が落ちます。更に進行すると意識が朦朧として死に至ることもあります。

また腎臓は身体の水分の調整をしています。水を一杯飲んでしまった時、尿として不要な水分を出すことが出来るのですが、腎臓が悪くなると水分を尿として出すことができなくなります。結果、身体に水が溜まって、浮腫んだり、肺に水が溜まって呼吸が苦しくなったりします。

そのために内服薬でサポートするのですが、内服薬でカバー出来なくなった場合は透析・移植が必要になります。自力の腎臓の能力+薬でカバー出来なくなった時に行う治療を腎代替療法(じんだいたいりょうほう)と言います。ネットで色々調べると出てくる言葉なので一応覚えておきましょう。言葉の通り、腎臓の替わりの役割を果たす治療法を示して、透析や移植のことを指します。

腎臓病の場合、腎臓の機能をeGFR(イージーエフアール)という採血検査結果をみて評価します。個人差もあり、透析や移植の種類によって異なるのですが、腹膜透析、移植を検討する場合はeGFR15ml/min/1.73m2以下、血液透析を検討される場合はeGFR10ml/min/1.73m2以下を目安にして準備を始めます。

腎臓が悪くなった時の治療法は主に4つの選択肢がある。

血液透析(けつえきとうせき)、腹膜透析(ふくまくとうせき)、腎移植(じんいしょく)、透析非導入の4つの選択肢があります。患者さんの年齢、生活環境、社会環境、人生観、死生観などを考えて選択していきます。この選択肢の中から患者本人、家族、主治医、医療スタッフで協議して納得いく選択をする必要があり、ゆっくり時間をかけて考えていきます。一つ一つ解説していきます。

血液透析(けつえきとうせき)

誤解を承知でざっくり簡単に伝えると血液透析は腹膜透析に比べて『医療機関お任せタイプ』というイメージを持って頂けるとわかりやすいと思います。日本で腎代替療法が必要な方の9割以上の方が血液透析を選択します。ちなみに医療関係者は血液透析のことをHD(エイチディー)と呼んでいます。

具体的には、週3回医療機関に通院して1日3-4時間程度の治療を行います。腕に2本の針を指して、血液の出し入れをして外付けのデバイスを使用して血液をキレイにします。血液の出し入れをするためには勢い良い血流が必要なため、シャントという動脈と静脈をつないだ特別な血管が必要になります。

この特別な血管を作るためには手術が必要です。もともと血管が細い人や心臓が悪い人など、患者さんによってはシャントを作らずに動脈表在化、グラフト、長期留置型カテーテルなど特別なデバイスや方法を使って血液透析が出来るようにします。

腹膜透析(ふくまくとうせき)

血液透析に比べると『自宅で自分で治療するタイプ』というイメージの治療です。日本では少数派になりますが、タイなどの国では、まず腹膜透析を最初にやってそれでもまかないきれなくなったら先程の血液透析をやるという方法をとっている国もあります。ちなみに医療関係者は腹膜透析のことをPD(ぴーでぃー)と呼び、腹膜透析をやったあとに血液透析をする考え方を「PDファースト」と言います。

腹膜透析は腹膜というお腹の臓器を取り囲む膜を使って透析をする方法です。お腹に小さな穴を空けてそこにチューブを通して、そのチューブを使って透析液をお腹の中に入れます。お腹に入っている間に、身体の不要物が身体の中から透析液側に流れ込んでいきます。数時間経ったら、その透析液を身体の外に出して、もう一度キレイな透析液を入れます。これを繰り返して身体の不要物を取り除きます。

腹膜透析の最大のメリットは『自宅で治療できる』という事です。毎日透析をする必要はありますが、医療期間には1ヶ月に1度ほどの通院で済みます。自己管理が出来る方や、透析をしながら仕事をしたい方などが腹膜透析を選択する傾向にあります。逆に、途中で治療を辞めたり、認知機能が低下していて正しく操作が出来ない可能性がある人には推奨されません。

腹膜透析の中にも2種類方法があります。日中に透析を行うCAPDと夜間に透析を行うAPDです。CAPDは日中の数時間置きに手動で透析液を出し入れします。APDは寝ている間に特別な機械をつないで自動で透析液を出し入れする方法です。どちらが良いという訳ではなく、ライフスタイルに合わせてどちらの方法を選ぶのか選択します。日中に仕事がある人はAPDを選ぶ傾向にありますが、非常時など機械が使えない時はCAPDで透析をする必要があるので結局覚えてもらう必要はあります。

腹膜透析は一生続けられるものではありません。腹膜透析は元々腎臓の力を使って透析をする方法であり、元々の腎臓の能力が徐々に低くなった場合、腹膜透析だけで不要物の除去がまかないきれなくなった時は、血液透析に切り替える必要があります。また順調でも5年程で腹膜に疲労をきたして重篤な合併症を引き起こす可能性があるので目安最長5年ほどで腹膜透析を辞めて血液透析に切り替える事になります。

*ちなみに医学的には腹膜透析と血液透析で予後は変わらないとされています。

腎移植(じんいしょく)

親族や脳死や亡くなった方の腎臓をもらい手術する方法です。日本では国民の倫理感や臓器提供制度など様々な壁があり、まだまだ少ないのですが、アメリカなどでは盛んに行われている治療です。透析はあくまで腎臓の役割を他の方法で補う方法ですが、移植は腎臓そのものを身体に入れる方法であり、非常にパワーがある治療だと思います。

移植は他人の腎臓を体内に入れるため、自分の身体がもらった腎臓を異物と認識して攻撃してしまいます。拒絶(きょぜつ)といい、拒絶を防ぐために免疫抑制薬という免疫を抑える薬を飲み続けなくてなりません。昔は、この免疫抑制薬でのコントロールが難しく、拒絶が起きて腎臓が再び廃絶したり、死に至るケースもあったのですが、近年免疫抑制剤の改良のおかげでで治療成績も改善してきた治療法です。また医療経済的にも優しいとされています。

移植には2種類あり、生体腎移植(せいたいじんいしょく)、献腎移植(けんじんいしょく)があります。

生体腎は生きている人の腎臓をもらう方法で、もらう腎臓は親族、配偶者など3親等以内に親戚に限られます。もちろん、腎臓を上げた人は2つある腎臓が1つになるので、今後の人生において腎臓を大切にしていかなくてはならないです。ここらへんの臓器をもらう側、提供する側の倫理的・精神的な側面をしっかり整えていく必要があり、移植コーディネーターなどが関わって慎重かつ確実に段取りを組み立てていきます。

献腎移植は脳死や亡くなっている人の腎臓をもらう方法ですが、日本では臓器提供数が足らず、現実問題10年以上待たなくてはなりません。(尚16歳以下、20歳以下だと優先的に臓器提供を受けるような仕組みになっています。)

透析非導入

透析患者の高齢化が進んでおり、新たな問題提議がされ、「透析をしない」という選択について考えられるようになりました。例えば90歳以上で寝たきりや認知症の腎不全患者に対して透析をすることが本人の人生、家族の負担、医療費などの社会的側面を考慮した時必ずしもプラスにならないケースがあります。

 現在の日本において緩和ケアの適応があるのは主に癌、HIV、心不全で、腎不全に対して透析をせずに、緩和ケアに切り替えるという選択はあまり一般的ではありませんでしたが、今後そういうケースが増えていくと思います。

私自身も数人透析をしないという選択をして、現在外来でなるべく苦しくならないようにする治療を行っている患者さんをみていますが、課題を感じますし、今後社会全体で取り組んでいかなくてはならない議題の一つなのではないかと思っています。

意思決定を支援する「療法選択外来」って何??

血液透析、腹膜透析、腎移植、透析非導入の4種類のどの方法を選択するのかの意思決定をサポートするために行われている外来があり、療法選択外来(りょうほうせんたくがいらい)と呼んでいます。

腎代替療法が必要になる直前で、血液透析にするか、腹膜透析にするか、腎移植を検討するかの情報提供をしても中々、即決することは非常に難しいです。そのため、長い時間をかけて、今後の患者さんのライフスタイル、家族のサポート体制を聴取したり、そして精神的な心の準備を整えていく必要があります。療法選択外来では、専門の看護師(もしくは医師)が時間を作り、情報提供して、意思決定をサポートします。

療法選択外来を受診する時期として、ガイドラインには以下のように記載されています。

『CKD症例に対して,CKDステージG4(GFR 15 ~ 30 mL / 分 / 1.73 m2)に至った時点で,公平かつ適切な透析療法および腎移植に関する準備のための情報提供を本人および家族に行うことは,腎代替療法開始後の生命予後を改善するのでこれを推奨する。』(CKDステージG3b-5患者のための腎障害進展予防とスムーズな腎代替療法への移行に向けた診療ガイドライン2015)

臨床医をしていると時折見かけるのが、主治医に全く腎臓が悪くなっているという話をされず、 腎代替療法になる直前に「そろそろ透析だから腎臓内科に行っておいで」と言われて、いざ腎臓内科に言ってみると「透析が必要なので、透析をしましょう」と言われてしまうケースです。

社会的準備期間や精神的準備期間に限らず、腎代替療法の選択肢が血液透析に限られてしまうこともあります。腹膜透析は残っている腎臓の力を使いながら行う透析であり、血液透析よりも早い段階で開始する必要があります。具体的にはeGFR15ml/min/1.73m2の頃には手術前の検査を始めて、腹膜透析を導入します。

腎移植に関しても、移植前の検査に数ヶ月は掛かるので、検査をしている最中に透析が必要になってしまうということもあります。腎移植の場合、透析を挟まずに腎移植を行うPEKT(ペクト)を行った方が生命予後が良いとされています。情報提供が遅れて、腹膜透析やPEKTの腎移植が出来ないケースもあり、このようなケースを減らすために療法選択外来を開設してる医療期間もあります。

また、血液透析を行う場合でも、シャントという腕に動脈と静脈を繋ぐ通り道を作る手術が必要です。冒頭でも伝えた通り、このシャントが作られないまま、腎不全の症状が出現して緊急で首の血管にカテーテルという管を入れてリスクを抱えたまま透析を始めなくてはいけないケースもあり、このようなケースを減らす意味でも療法選択外来に価値があると考えられています。

療法選択外来では30分〜1時間ほど、模型やビデオを使って実際の透析をイメージして頂くような時間にしてもらい、患者さんのライフスタイルなども伺って情報を共有して、意思決定の支援を行っています。可能であれば、家族も同席して話を進めていくのが望ましいかと思います。

腎臓病の診療をする際に耳障りが悪くても透析・移植の情報提供は必要。

腎臓病の治療をしている患者さんはほとんど透析になりたくないと思って病院で診療を受けています。そんな方々に透析・移植の話をすると基本的にはあまり快く思ってくれませんし、その話を切り出すだけで一瞬で医療者と患者の関係が崩れることもあります。

けど、95%は透析を先送りにすることに頭を使ってもらいつつ、5%程度は透析になってしまった時も考えてもらわなくてはいけません。

質が悪いのは、腎臓内科医は患者さんを透析にして金を儲けようとしているという謎の陰謀論や、「〇〇をすれば腎臓は良くなる」(例:腎臓を揉めば腎臓は良くなる)みたいな論調のメディアに患者さんが流されてしまうことだと思っています。

初対面で切り出さないにしろ、どこかで情報提供が必要なのが、この透析・移植の話なので敢えて今日は透析・移植について書きました。また一つ一つ情報提供する記事を書こうと思います。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

    リンク先はこちら

  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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