顕微鏡的多発血管炎についてまとめました。

2019.02.07
顕微鏡的多発血管炎についてまとめました。
顕微鏡的多発血管炎についてまとめました。

腎臓内科医の森 維久郎(もり いくろう)です。顕微鏡的多発血管炎(けんびきょうてきたはつけっかんえん)について話をします。比較的な稀な疾患ですが、急に症状が出現して、急激に進行する病気のため診断を速やかに行って、治療に結びつける必要のある病気です。

顕微鏡的多発血管炎とは??

何らかの原因でMPO-ANCAという血液中の白血球の一部を攻撃してしまう自己抗体(じここうたい)が出来て、全身の細かいレベルでの血管に炎症を起こして肺、腎臓、神経、関節などを障害する病気です。顕微鏡でしか分からないぐらい細かいレベルの血管で全身に起きる炎症のため顕微鏡的多発血管炎と呼びます。

症状として発熱、全身倦怠感、食思不振、タンパク尿・血尿、血痰、痺れ、関節痛などがみられます。原因としては稀に薬剤による影響で起きるものもありますが、原則原因不明です。

顕微鏡的多発血管炎の検査・診断

顕微鏡的多発血管炎は月単位で障害が進行するため、疑った時に入念に問診を行います。発熱や倦怠感はいつからか、どのくらい続いているのか、他に伴っている症状はないか、血痰、痺れ、関節痛がないか、腎臓としては尿量が減っていないか、全身浮腫がない、体重が増えていないかなどを検索します。

次に採血・採尿をチェックします。腎臓の機能をみるクレアチニン、炎症をみるCRPなどを検査します。一番大切なのはMPO-ANCAが血液中に存在しているかをチェックします。一方でMPO-ANCAが陽性だからとして顕微鏡的多発血管炎と診断は出来ません。

また尿検査では今まで特に異常を指摘されていなかったのに、タンパク尿と血尿が出現していないかなどをチェックします。余談なのですが、タンパク尿+血尿は腎臓の強い障害を示すのでしっかり対応する必要があるのですが、放置される事が少なくありません。

問診、採血、採尿検査で顕微鏡的多発血管炎を疑った時は、さらなる精査を行います。全身の症状を隈なくチェックして、疑わしい場合は、画像検査や病理検査を行います。

腎臓では、腎生検(じんせいけん)という検査を行って、腎臓の組織を顕微鏡的に評価して、細かいレベルの血管に起きる炎症を見つけて障害を評価します。また肺の場合は胸部CTをとって、肺胞出血、間質性肺炎などの所見がないかをします。全身に障害が起きる病気なので全身隈なくチェックします。

顕微鏡的多発血管炎の治療

顕微鏡的多発血管炎は、自分の身体を自分の免疫物質(=自己抗体)が攻撃してしまうため起きる病気なので、自分の免疫力を抑える治療を行います。免疫抑制療法といって、ステロイドという薬を中心に、必要に応じて様々な免疫抑制剤を使用します。

少し難しい話になりますが、顕微鏡的多発血管炎の治療には2種類のフェーズがあって、「寛解導入(かんかいどうにゅう)」、「寛解維持(かんかいいじ)」があります。

寛解とはBVASという血管炎に伴う臓器の障害を定量化したスコアが4週間の間0点である状態を言います(定義は明確には決まっていないのですが・・・。)。寛解の判定はざっくり3ヶ月〜6ヶ月後に判断されることが多いです。寛解にさせる治療(=炎症を抑え込む治療)が寛解導入、寛解を維持させる治療(=再発しないようにする)が寛解維持と考えていただけばと思います。

ステロイド(プレドニン)

強力な炎症を抑える働き、免疫を抑える働きを持つお薬です。免疫を抑える意味合いで歴史も深く効果も抜群に良い薬です。一方で副作用として糖尿病、高血圧、脂質異常症、感染症、食欲亢進、胃が荒れる、骨がもろくなる、顔が丸くなるなどの副作用があります。

顕微鏡的多発血管炎と診断して、点滴のステロイドもしくは内服のステロイドで治療を開始します。比較的軽症かつ高齢者で薬の副作用が心配な時は内服で治療を開始します。その他の場合、点滴で大量のステロイドを3日間投与するステロイドパルス療法を行い、その後に内服のステロイドによる治療を開始します。

内服、点滴どちらかにするかの明確な基準は「臨床重症度・年齢・透析の有無による治療法の選択」、「臨床所見のスコア化による重症度分類」などを参考にスコアリングして決めていくのですが、あくまでこれらは目安であり、患者さんの状態や検査、病理の結果などで総合的に判断します。

ステロイドは治療の効果をみて徐々に減量していき、伴って副作用は少なくなっていきます。生涯かけて投与されたステロイドの量と合併症のリスクは関係があると言われているため可能な限り最小限のステロイドで治療したいと医師は考えていますが、顕微鏡的多発血管炎の場合、再発する頻度が高いので状態が安定していても、ステロイドは完全に中止にせず1日1錠程度は継続して内服してもらっています。

顕微鏡的多発血管炎はこのステロイドに加えて、もう1種類の免疫抑制薬を加えて治療するのが一般的です。ただし高齢な場合、感染症のリスクが高い場合、炎症が比較的軽微である場合など強い免疫抑制をかけるメリットより副作用のデメリットが上回る場合はステロイド単独で寛解導入を行うこともあります。

シクロホスファミド(エンドキサン)

一般的に、顕微鏡的多発血管炎はこのステロイドに加えて、シクロホスファミドという免疫抑制薬を使用して治療します。このシクロホスファミドという薬は点滴と内服があるのですが、点滴の方が内服より安全性が高いと言われており、4週間に1度点滴でシクロホスファミドを投与して6ヶ月程続けます。(間隔、投与期間、投与量は様々な方法があります。)

シクロホスファミドの短期的な副作用としては感染症、骨髄抑制、出血性膀胱炎、悪心・嘔吐、口内炎、脱毛などがあります。非常に稀ですが、間質性肺炎、心筋障害などがあり肺、心臓は投与前に検査しておくこともあります。長期的には性腺機能障害、悪性腫瘍などが報告されています。特に問題になるのは骨髄抑制(こつずいよくせい)であり、身体に必要な血液の成分が作られなくなり白血球という免疫を司る成分が減るため、その場合エンドキサンを中止したり、減量したりします。

リツキシマブ(リツキサン)

ステロイドに加えて使用される免疫抑制薬でもう一つ注目されているのが、リツキシマブという免疫抑制薬です。リツキシマブは腎臓領域でも近年注目浴びているの免疫抑制薬です。また出たばかりの新薬であり、数十年の経過でのメリット・デメリットは未だ明らかになっていないのが難点ですが、海外で行われてたRAVE試験、RITUXVAS試験では先程触れたシクロホスファミドと同等の治療効果があることが報告されました。また何度も再発しているような症例では、シクロホスファミドよりリツキシマブの方が優れている可能性があるとも考えられています。

ただし、日本人を対象とした科学的根拠はまだまだ乏しく、海外より高齢者が多いことや血管炎の型が海外と異なることなどから現段階では、合併症などの観点からシクロホスファミドが使用しづらい時や、再発例などでシクロホスファミドの次の手として使用される薬剤として認識されています。また寛解導入としてもMAINRITSAN試験で後述するアザチオプリンにとって替わる可能性が指摘されています。

投与方法としては、寛解導入として、1回量375mg/m2を4週連続で投与する方法がよく使われています。また寛解維持で使用する使い方も模索されています。例えば500mg/m2を1日目、15日目、それ以降半年に1度投与する方法などが過去に報告されています。

副作用としては投与中〜翌日までに起きる発熱、悪心、頭痛、掻痒感、咳などのInfusion Reactionが大半の症例で起きるので、点滴前に予防薬を投与します。特に初回のリツキシマブ投与に起きやすいと言われています。また感染症(肝炎、結核、ウイルス感染)などがある場合は慎重投与とされて感染症の治療を先に行います。その他、血球減少という身体に必要な血液の成分が作られなくなる状態になることもあります。非常に稀ですが、PMLという意識障害、麻痺、言語障害などを認める重篤な合併症も報告されています。

アザチオプリン(イムラン)

アザチオプリンは主に寛解維持としてステロイドに加えて使用される薬です。寛解維持としては比較的よく使用される薬で、だいたい体重×2mg/日で使用される薬で18-24ヶ月は内服を続けます。白血球という免疫を司る血球が3000以下の場合、妊娠している場合、過敏症がある場合は使用することが出来ません。また尿酸薬を飲んでいる方は休薬することが望ましいと言われています。

副作用としては骨髄抑制、肝機能障害、感染症、間質性肺炎などがあるので、投与を開始した際は1-2週間ごとに血液検査を行う事が望ましいと考えられています。

顕微鏡的多発血管炎の予後

顕微鏡的多発血管炎は1年で半数の人が死亡するとも言われていた程非常に予後が悪い病気でした。しかしながら近年ステロイドやその他免疫抑制薬による治療が確立して、現在では1年で死亡する率は10%程度まで減るようになってきました。とはいえ、それでも予後が悪い疾患のため治療や治療の副作用のコントロールを注意深く行っていく必要があります。

今日は顕微鏡的多発血管炎についてまとめましたが、同じような血管炎に該当する多発血管炎肉芽腫症、好酸球性多発血管炎肉芽腫症などについても今後まとめていきます。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
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