CKDとタンパク質制限について

CKDとタンパク質制限について
CKDとタンパク質制限について

腎臓内科医森です。腎臓病の食事療法として、塩分のこと、野菜・果物のことなど様々な記事について書いていきましたが、今日はタンパク質の話をします。

腎臓病の患者さんでは、タンパク質の量を減らすことが望ましいと言われています。腎臓病のガイドラインであるCKD診療ガイドライン2018でも「腎臓病の進行を抑制するためたんぱく質摂取量を制限することを推奨する」と記載されています。

実は、この腎臓病におけるタンパク質制限に関しては「果たして本当にタンパク制限が患者さんのためになるのか??」という議題に対して、腎臓内科医の中でも意見が分かれます。

腎臓内科.comではなるべく現場の医師はどう考えているかを意識して執筆しているのですが、タンパク制限については医師によって考え方が違うのでその点はご了承いただきこの記事では私の考えを書きたいと思います。

なぜタンパク質を制限するのか?

腎臓病の患者さんでタンパク質を制限するのは以下のような理由があります。

腎臓に掛かる負担を減らす。

食事から摂取したタンパク質は、代謝されて必要な分は筋肉などに取り込まれて、不要な分は最終的に尿から排泄されます。

必要以上にタンパク摂取をすると尿から排泄する老廃物の量が増えて、これが最終的に腎臓の糸球体(しきゅうたい)という老廃物をやり取りする場所に負担を与えると考えられています。

尿毒症のリスクを減らす。

腎臓病が進行して、腎臓病ステージ4以降になると腎臓の体の老廃物を出すという役割が鈍り体に老廃物が貯まるようになります。尿毒素という老廃物が貯まる状態を尿毒症(にょうどくしょう)と言い、透析が必要になる一歩前の段階で見られる症状です。

尿毒症は、食思不振・倦怠感・意識障害などの症状を引き起こし命に関わるため、尿毒症がコントロール出来なくなったら透析を始めるという判断をします。

タンパク質を制限することで、尿毒素の量を減らして尿毒症になる可能性を減らすと考えられています。

血液中のリンが増えないようにする。

腎臓は身体のミネラルのバランスを整える役割があるのですが、腎臓病だとこの能力が衰えてミネラルバランスが崩れます。リンもミネラルの一種で腎臓病だとリンが溜まってしまいます。高リン血症といいます。

高リン血症は骨折や動脈硬化などに大きく影響を与えて心筋梗塞などのリスクを上げたり、腎臓病の進行に影響すると考えられています。(詳しくはこちらにリンと腎臓についてまとめたのでご参照ください。

タンパク質を多く含む食品には、リンも含まれていることが多くタンパクを制限することが高リン血症の治療につながると考えられています。

上記3点以外にも糖尿病の治療を効果的にする効果や、不要なお薬を減らす効果などが期待されています。

タンパク制限で腎臓を守ることができるのは本当か??

タンパク制限に関しては冒頭で述べた通り、医師によって考え方が大きく異なります。その理由として第一に「タンパク制限は本当に効果がある」と言い切れないことが挙げられます。腎臓内科医の中には、「タンパク制限はあんま効果ないんじゃない?」って考えている人が一定数いる訳です。

今から25年ほど前にMDRD studyという研究が組まれて「タンパク制限をした方が腎臓を守ることが出来る!」という趣旨の研究結果が出て話題になりました。しかし、この研究には数点の問題点もあり、MDRDstudyの結果を肯定的に捉える人と批判的に捉える人で意見が割れました。

この時期からタンパク制限に関しては様々な研究がされるようになりましたが、現段階で答えは出ていない状況です。2018年に私もEDTAというヨーロッパの学会に出た時もタンパク制限について肯定的な意見と否定的な意見が分かれていて世界的にみても良く分かっていないことが分かりました。

タンパク制限のデメリット

筋力低下の恐れ

タンパク制限をする際に特に気をつけなくてはいけない事は、炭水化物、脂質の他の栄養素でしっかりカロリーを補い総カロリーを減らさないようにする必要があります。腎臓病の場合、健常人の比べて身体機能が7割まで低下していると報告されています。そのためしっかり食べて、しっかり運動するのは腎臓病の患者さんにとって非常に大切な治療戦略です。

しかし実際の医療の現場では、タンパク制限、塩分制限が患者さんの認識の中で過剰に印象付けられて、何も食べなくなり、筋力が衰える事が多々あります。また、腎臓病の患者さんでは味覚が低下しており、加えて塩分制限・タンパク制限の影響で食事を食べなくなる患者さんも一定数います。

タンパク制限のポイントは制限する分のカロリーを他の栄養素でどうやって補うかの戦略があるかどうかです。腎臓内科医、栄養士などの定期的なサポートが必要になります。

精神的ストレス

腎臓病と食事摂取量を調べた結果、腎臓病の患者さんは他の患者さんに比べて食事量が低下しているという報告があり、加えて、食事制限によって精神的ストレスが溜まり、QOLが低下するといった報告があります。日本の腎臓病ガイドラインでも精神的なストレスのケアを行う必要性があると記載されています。

私はこう考えています。

様々な研究結果を漁って調べてみた結果、最終的に個人的に以下のように解釈しています。

1:どちらにしろタンパク質の摂りすぎは良くない。(1.3g/kg/日以上)

2:腎臓病ステージ3aではあまり有効性が証明されていない。一方で腎臓病ステージ4.5だと比較的効果が期待できそう。

3:植物性のタンパクの方が良さそう。

4:後期高齢者は筋肉量が落ちる可能性があり良くない。

 

どちらにしろタンパク質の摂りすぎは良くない。

腎臓病ステージ1,2のような軽症の場合も、タンパクの摂りすぎは良くないとされています。体重あたり1.3g/日は超えないようにする必要がありそうです。

これは日本の腎臓学会、国際的な腎臓機関であるKDIGOの同様の発表しています。一方で腎臓病ステージ1,2のような軽症の場合、過剰にタンパク質を制限する必要はありません。腎臓病の場合、塩分、カリウムなど食事に関して、意識すべき点が一杯あります。全てを達成するのは不可能なので、優先順位が大切でありタンパク質に関してはステージ1,2であればある程度気にするくらいがちょうど良いと思います。

腎臓病ステージ4.5だと比較的効果が期待できそう。

前述した通り、タンパク制限は尿毒症や高リン血症に効果があると言われています。腎臓病ステージ4,5辺りになってくると尿毒症、高リン血症の頻度が高くなります。比較的若くて元気な方で、食事管理がしっかり出来そうな場合は腎臓病ステージ4,5辺りになってきたら積極的にタンパク制限を勧めています。

植物性のタンパクの方が良さそう。

後日追記します。

後期高齢者は筋力低下・QOL低下の可能性があり良くない。

75歳を越えた後期高齢者には、原則タンパク制限は勧めていません。若い人に比べて、後期高齢者は筋力・QOLの重要性が高まります。寝たきり、認知症、生きがいなどが非常に大切に要素になり、食事制限はこれらの大切なものを奪う可能性があります。

後期高齢者のタンパク制限についてはこちらに詳しくまとめましたのでご参照下さい。(高齢の腎臓病患者にタンパク質摂取を制限をしない理由をまとめました。

 

タンパク制限は医師の考え方によって、患者さんの状況によって行う時と行わない時があります。中々WEBで一律に情報提供出来ないのは苦しいところですが、WEBの画一的な情報提供で苦しんでいる患者さんが一杯います。何か質問がございましたら診察室で遠慮なく質問頂ければと思います。

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