【読書録】『医療戦略の本質』 マイケル・ポーター

2019.01.18
【読書録】『医療戦略の本質』 マイケル・ポーター
【読書録】『医療戦略の本質』 マイケル・ポーター
『医療戦略の本質』という本を読んだ。「ファイブフォース分析」、「バリューチェーン」などの競争戦略手法を提唱しているマイケル・ポーターのアメリカにおける医療戦略について書かれている本を読んだ。大学生の時に読んだが、いまいち理解出来ずPDF化して保管していたが、来年開業するという事でもう一度読み直してみた。
マイケル・ポーターの本という事で意気込んで読んだが、この分厚い本から日本の医療者として学ぶことはたった2つなのではないかと思う。
 
1:医療における価値とは「1円あたりの健康上のアウトカム」で考えるべきである。
 
2:「診療科」で医療を提供しがちだが、「病態」ごとの「ケアサイクル」において自施設での役割を明確化して医療を提供するべき。
 
医療とお金の話をすると、アレルギー反応を示す人が多いし、自分もその一人なのだが、税金で医療を賄っているし、税金(診療報酬)をもとに医療者の給与が支払われているので「医療」と「お金」は「医療とお金は切っても切り離せない」。
その上で、「いかに低コストで良い医療をするか」が大切であり、特に日本には必要になってくる考え方である。そして、「低コストな医療ほど良い医療」でもある。
腎臓病では、「透析や合併症である心筋梗塞の治療」よりも「高血圧・糖尿病の管理をしてリスクのコントロールして透析や心筋梗塞にならない医療」の方がコストだけでなく、就労などの社会的な側面における患者のアウトカムも良い。
腎臓病領域では、「高血圧・糖尿病の管理をしてリスクのコントロールする医療」が低コストで良い医療であり、この医療を実現すべく、投薬だけでなく啓発、薬剤指導、運動指導、心理的な支援を行っていき患者にとっての価値を作っていくことが望ましい。
そして役割を「診療科」ではなく、「ケアサイクル」で考えるべきである。ケアサイクルとは一つの疾患の流れを「発見」「診断」「リスク管理」「重症化時の医療」「緩和」という形で分けて自施設がどこを役割として担うのかを明確化させる必要がある。「何をして」「何をしない」かを明確に決める。
腎臓内科として施設を作って、ある程度成功してさらなる事業拡大を考えた時に、診療科として拡大しようとすると「診断」を担う腎生検、「重症化時の医療」である透析医療などを横展開しようとしてしまいがちだが、ケアサイクルにおける「発見」、「リスク管理」が自分の役割であると明確化して考えると、腎臓病の合併症である心不全、心筋梗塞などの心疾患のリスク管理に力を入れて診療の厚みを増やすという判断になる。大事なのは「病態」ごとの「ケアサイクル」において自施設での役割を明確化することである。
最終的に患者さんも診療科ベースで提供される医療よりも「病態」ごとの「ケアサイクル」で提供された医療の方が分かりやすいとも思う。
ここまで書いておいてなんだが、上記2つは言われれば当たり前。だけど日本の医療機関で意外とこれが出来ていない施設が多い。医療戦略の本質でなんかすごい新しい事を学んだ気はしなかったが、当たり前だけど大事なことが明文化されていてそういう意味では読んでよかったと思った。
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森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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