<腎臓内科医直筆>ファブリー病についてまとめました。

2019.01.22
<腎臓内科医直筆>ファブリー病についてまとめました。

ファブリー病とは、ざっくり身体で分解されるべき特定の物質が分解されず腎臓、心臓を中心に、神経、血管などに沈着して数十年単位で臓器に障害を起こす疾患です。遺伝性の疾患で比較的稀ですが、治療法も開発されてきており、早期発見をする事で家族の治療にも繋がるため臨床医としてしっかり見つけたい疾患の一つです。

今日は、情報提供が必要な患者さんがいたので書きたいと思います。

ファブリー病とは?

冒頭でざっくり書きましたが具体的には、体の細胞内のライソゾームという老廃物を処理する器官にあるα-ガラクトシダーゼと呼ばれるもの(α-GALと読んでいます。)が先天的に欠損しており、結果GL-2、GL-3、血液型B型糖脂質などの特定の糖脂質(不要なもの)が腎臓、心臓を中心に、神経、血管などに沈着することで起きる病気です。

後で詳しく説明しますが、遺伝性疾患で以前は10万人に1人くらいの稀な病気と言われていましたが、近年様々な国で研究されて考えられていたよりも頻度が高いかもしれないと考えられており、もしかしたら現在透析をされている患者さんの100人に1人がファブリー病の可能性があるとも言われております。

ファブリー病の症状は?

症状は様々臓器に起きます。以下に記します。

・腎臓、心臓に沈着して尿タンパク、腎不全、心肥大、弁膜症、不整脈など。

・神経細胞にも沈着して痛み、異常な感覚を引き起こす。

・皮膚に沈着して被角血管腫(ひかくけっかんしゅ)。

・汗を分泌する汗腺に沈着して汗をかけなくなる低汗症。

・角膜に沈着して、角膜混濁。

・その他、消化器領域で下痢、腹痛、耳鼻科領域で耳鳴り、めまい、難聴などを認めます。

色々羅列しましたが、小児期から起きる場合は、手足の痛み・しびれ、低汗症が主な症状となります。

ファブリー病の遺伝について

ファブリー病は、X染色体という性別を規定する遺伝子に何らかの異常があって起きます。中学の生物の授業で習ったように男性はXY、女性はXXです。この病気はXに原因があり、男性の場合異常なX染色体の影響をもろに受ける一方、女性の場合異常なX染色体と正常なX染色体があり、影響が半減すると考えられおり、つまり男性の方が、女性よりも症状が強いと考えれています。

ただ人によって症状の強さが大きく異なり遺伝で全て説明できず現在研究が進められている病気です。

少し難しい話になるので、スキップして頂いても構いませんが、話を掘るとファブリー病はX染色のGLA遺伝子が変異することでαGAL活性低下します。この変異のパターンは現段階で600以上も報告されており、中には患者さんに何も症状を起こさない変異もあります。つまり、遺伝子異常があっても何も困らないというパターンが一定数存在します。

医療者としては病気を明らかにして患者さんにしっかり還元したいという気持ちがある一方、時には患者さんが知りたくなかった情報まで明らかになってしまうこともあります。ただし、早く見つけることで本人だけでなく家族の治療に繋がる可能性もあり、個人的には情報提供をするとき慎重に話をしていく必要があると思っています。(余談ですが)

ファブリー病の診断は?

診断のために問診で症状、家族歴を中心に聴取して、採血、採尿検査をおこないます。必要に応じて遺伝子検査も必要になります。また腎臓であれば腎生検を行い他の疾患の可能性を検討したりすることもあります。ファブリー病の診断方法は、男性と女性で異なります。

◆男性の場合

採血検査などでα-GALの活性を測定する事が可能です。これは冒頭で述べた特定の老廃物をしっかり処理する能力があるかを調べています。また、GL-3の蓄積を尿などで証明することで診断はより確実になります。これは、処理できなかった老廃物そのものを見ています。

遺伝子検査は必ずしも必要がないと言われています。

◆女性の場合

男性と同様に採血検査でα-GALの活性を測定したり、尿検査でGL-3の蓄積を調べることも可能ですが、男性と異なり正常値をとることもあり、あくまで参考所見になります。更に遺伝子検査を行い遺伝子異常が見つかれば確定診断となりますが、遺伝子異常が無くてもファブリー病を否定するものにはなりません。

最終的に家族歴、臨床症状などで総合的に診断することになります。

ファブリー病の治療について

ファブリー病は遺伝疾患ですが、治療法があります。まだまだ十分な治療法とは言い難く克服するべき課題が多い段階ではありますが、根本的なアプローチがされており大きな進歩があった領域と考えられています。

酵素補充療法

αGALの活性が落ちて老廃物が蓄積することが問題のため、αGAL活性を補う薬を2週間に1度点滴で投与することで蓄積されたGL-3などの老廃物を溶かす治療を行います。この治療を酵素補充療法(こうそほじゅうりょうほう)といいます。ファブラザイム、リプレガルなどの薬剤が使用されています。

副作用としては、悪寒、発熱、倦怠感、呼吸困難などの症状が報告されております。これらは点滴中に起きることが多いとされているため近くの看護師などにすぐに知らせて下さい。

シャペロン療法

酵素補充療法の他にシャペロン療法という方法があり、2018年に「ガラフォルドカプセル」という内服が日本で保険適応になったことで選択肢として検討されるようになった新しい治療法です。

シャペロン療法はイメージとしては、ガラフォルドという薬剤で残存しているαGAL活性の能力を上げて老廃物の分解を亢進して蓄積を減らす治療です。

この治療に効果が出るのは、一部の患者さんであり、効果があるかを遺伝子検査などで判断する必要があります。

保存的加療

上記2つは根本的な治療ですが、腎臓ならこれ以上悪くならないように高血圧などの他の要素を取り除いたり、腎臓を守る降圧薬RAS系阻害薬などを使用します。

いつから治療を始めるのか?

いつから治療を始めるのかに関しても男性と女性で異なります。

◆男性の場合

ファブリー病の症状が一つでも出現したら治療を開始します。小児期よりGL-3などの老廃物が蓄積していることが多く、四肢の痛みを訴える事があります。この時期より酵素補充療法などの治療を開始します。

◆女性の場合

女性に関してはコンセンサスはありません。臓器の障害が明らかなになってきたら酵素補充療法などの治療を開始します。腎臓の場合、タンパク尿や血尿、腎機能障害が出現したら検討できます。この時に実際の異常を確認するために腎生検を行う事もあります。

 

ファブリー病は遺伝性の疾患で比較的稀ですが、治療法も開発されてきており、早期発見をする事で家族の治療にも繋がるため臨床医としてしっかり見つけたい疾患の一つです。家族にも検尿異常がある、透析をしている人がいるなど心当たりがある方は遠慮なくご相談下さい。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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