デジタルヘルス学会の分科会「医療情報発信」は盛況に終わりました!!

2018.12.26
デジタルヘルス学会の分科会「医療情報発信」は盛況に終わりました!!
デジタルヘルス学会の分科会「医療情報発信」は盛況に終わりました!!

腎臓内科医の森です。先週日曜日(2018.12.23)に開催された第2回デジタルヘルス学術大会は盛況に終わりました。森も分科会「医療情報発信」で座長させて頂き、75分間この分野についてのディスカッションをさせて頂きました。登壇して頂いたのは、以下の3人の現場から情報発信をされている方です。

「腎臓ユーチューバー」ドクターおかめ先生

「放射線治療.net」運営 村本先生

「小児科オンラインジャーナル」運営 橋本先生

「腎臓ユーチューバー」ドクターおかめ先生

ドクターおかめ先生は、「腎臓を皆が知っている世界」へという理念のもと、youtubeを使って腎臓のことを啓発されております。腎臓という臓器は非常に地味な臓器で、心臓・脳に比べるとトピック性にかけるため患者さんに説明しても中々興味を持ってもらえないというジレンマがあります。腎臓病は医療そのものより、患者さん自身の行動変容が治療のキーとなるにもかかわらず、大本の自分の病気の理解が抜け落ちてしまうという課題が現場感覚としてあります。

おかめ先生は、「エンタメ」という手法を使ってなるべく興味を持ってもらうような仕掛け作りをされており、実は私の外来にもドクターおかめ先生の動画配信をみて受診された患者さんや、理解に結びついたという患者さんも一定数います。

そんなドクターおかめ先生の話を伺って印象に残ったのが以下3つ。

1:情報発信の手応え。

2:「キャッチーさ」と「正しさ」のトレードオフ。バランス感覚の難しさ。

3:興味を持ってもらってもらい、実際に検査・治療(行動変容)に結びつけるところまでの動線作り。

今後、行動変容の一貫として、食事の動画配信を考えているそうです。

→すでに配信していました。(https://www.youtube.com/watch?v=-__Ox_uVvoc

「放射線治療.net」村本先生

村本先生は、「がんの標準治療を正しく広めるとともに、その中で放射線治療が果たしている役割を医師・患者さんに伝え、放射線治療の機会損失をなくす。」という理念で「放射線治療.net」というサイトを運営されています。村本先生は、情報発信だけではなく、コミュニティーサロン「MIラボ」、検診のアプリケーションサービス作成など様々な活動をされています。またTwitterなどのSNSも積極的に活用されており多くのフォロワーがいます。

私が注目したのは、「敢えてオウンドメディアによる真っ向勝負」の情報発信を選択したかというところです。私も腎臓内科.comを運営しているので理解出来るのですが、自分でサイトを作ってトピックに囚われず真っ向勝負で発信するのは非常に大変ですし、地道です。私の場合それしか方法がなかったのですが、村本先生のSNSの発信力、人脈があれば他の方法で広く情報発信することが出来たのに、なぜこの道を選んだのかというところに興味を持ち登壇して頂きました。

そんな村本先生の話を伺って印象に残ったのが以下2つ。

1:情報発信のための情報発信になっている可能性について

2:医師のブランドの構築の重要性

後者に関しては、個人的にはしっかり目的を明確にして、旗を上げ、それに基づいた「手段」を連続的に構築して行動するだけで勝手についてくると思っています。一方で、2016年にOxford辞書で「post-truth」という言葉がWord of the yearに選ばれたように「客観的事実よりも、耳障りがよく感情に訴えるものが強い影響力をもっている」のも事実です。今後、「手段」が「目的化」してしまう可能性について自覚的でありながら、「手段」を洗練させていく村本先生がどのような情報発信をされていくのか注目です。

「小児科オンラインジャーナル」運営 橋本先生

橋本先生は、「子育ての悩みや不安の多いママと子どもを守りたい」を理念に、Kid publicという会社を設立、その中でも「小児科オンライン」という子育ての質問悩みを平日18-22時にLINEや電話で小児科医に相談するサービスは、多大なる支持を得られてます。(小児科オンラインのサイトはこちらへ

その中で、小児科オンラインジャーナルというサイトで情報発信をしています。記事を書いているのは小児科医で、記事を読んで疑問に思ったことや、不安を感じたことを小児科オンラインで相談出来るような仕組みになっています。情報発信の先に、明確な「目的」があると感じて私自身がぜひお話を聞きたいと思って今回ご登壇頂きました。話を聞いて感じたのは以下3点。

1:情報発信から事後対応までの導線の設計の重要性→情報発信の先に何を求めてどのような設計をするか

2:記事を書いた人間に質問できるという仕組み、その仕組みで生まれる医師・患者双方のメリット

3:よりユーザーにわかりやすくするための仕組みづくり。数人で記事を添削する仕組み。

個人的には、非常に勉強になり橋本先生の話を聞いて自分の情報発信にも反映させていこうと思いました。

個別性にどこまで対応するのか

会場から出た質問では、「個別の質問にどこまで対応するのか」という内容です。例えば、腎臓病の場合塩分制限が望ましいという一般論がありますが、中には塩分制限をしない方が良い患者さんもいます。また科学的根拠が明らかなになっていないけども現場ではこうしているという医療行為も一杯あります。この部分に踏み込むべきか、踏み込まないべきかは現場からの医療系の情報発信として非常に悩むところです。自分の情報発信と、主治医の方針が異なる場合、自分の情報発信で患者さんが主治医に不信感を抱いてしまうことがあります。ここをどう対応するべきなのか。

腎臓内科.comでもオンライン上でやりとりで「患者独自の個別性に対応」していた時期もありましたが、最終的に対応は困難だと結論づけました。そこで腎臓内科.comで情報発信で疑問や不安を生じた場合はオフラインの「腎臓内科.com外来」に受診してもらうことになっています。

情報の非対称性が無くなり、情報自体が患者さんの手に届くようになり、それ自体は素晴らしいことなのですが、情報が届くことにより生じる不安・主治医との関係の悪化も生じています。情報発信の先に、患者さんの不安解消・より良い検査・治療へのアクセスがあるべきであり、乗り越える壁は一杯あるのではないかと思っています。

今後、踏み込んで議論していくべき論点だと思います。

分科会を終えて

今回の分科会では、医療情報発信の領域で「情報発信そのものが目的化しており、情報発信の先にどのような価値を提供するかというビジョンが大きく抜け落ちている」という問題意識があり、その糸口を探すがために、情報発信の先にある価値を考えられている3人の情報発信者にご登壇頂きました。

私個人も情報発信者です。「腎臓内科.com」でもジレンマを自覚しながら情報発信をしてきました。正しいことを伝えようとすると、その分キャッチーさが無くなり興味を惹けなくなって読んでもらえなくなる。立ち上げ当初はメディア関係者から、「面白くないから誰も読んでないですよ、先生の記事。方法を変えていく必要がありますよ。」と言われて、凹みながら、その一方で、読まれることを目的にしてサイトを立ち上げた訳ではないという自分の中での確信みたいなものもあり、「敢えて現場の人間が書く情報発信の価値はなにか?」ということを考えることが多くなりました。その延長線上に今回の分科会があります。

分科会は議論も深まり大盛り上がりでした。従来の勉強会では、どうやってSEOをとるのか、ページビューをとるのかという話がメインでしたが、少し本質的なところに踏み込めたような気がします。

ご登壇頂きました3人の方々、ご参加された方々ありがとうございました。今後とも情報発信について、ディスカッションを深めていきますのでよろしくお願いします。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
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