微小変化型ネフローゼ(MCNS)とは?

微小変化型ネフローゼ(MCNS)とは?
微小変化型ネフローゼ(MCNS)とは?

微小変化型ネフローゼ(びしょうへんかがた)とは、原因不明なメカニズムで尿にタンパクが漏れる病気です。尿に大量のタンパクが漏れるネフローゼ症候群の中でも比較的小児〜成人にかけて比較的若い人におきる難病で、腎臓内科医による専門的な医療が必要な病気で僕の外来にも通われている患者さんがいますので情報提供します。

*ややこしいのですが、ネフローゼ症候群は「タンパクが尿から漏れて、血液中のタンパクが少ない状態」を引き起こす病気「達」を指します。今回の微小変化型ネフローゼは、そのうちの原因の一つの「病気そのもの」を指します。

微小変化型ネフローゼとは?

先程触れましたが、尿にタンパクが漏れるネフローゼ症候群のうちの一つの病気で、原因は良くわかっていませんが、自己免疫が関与しているのではないかと言われています。

治療を行うことで、腎臓の機能障害の進行を抑えることが出来る病気ですが、微小変化型ネフローゼは治療を行っても30-70%再発するため、患者さんや患者さんのご家族として長く付き合っていく病気で、苦労が多い病気です。

微小変化型ネフローゼの症状・診断は?

症状としては、むくみ、日単位の体重増加( 1週間に3kgぐらい普通に増えます。)、下痢、尿の強い泡立ちなどが起きて、重症化すると呼吸が苦しくなったり、尿が出なくなったりします。

ネフローゼ症候群の記事でも触れましたが、血液中のタンパクが少なくなる事で、むくんだり、全身に必要な血液を送る事ができなくなったり、免疫力を司る物質が減り、免疫力が下がったり、血液をドロドロになり、血の塊が出来たりします。それらの症状に対してしっかり治療を行ないます。

他のネフローゼ症候群が引き起こす病気と異なり、発症した日がわかりやすい事が多いのが特徴で『なんか先週の日曜日から急に浮腫んだんですよー』とおっしゃる患者さんが多いです。また風邪や虫刺されをきっかけになり、発症する事が多いとも言われています。

診断は問診、採血、採尿、画像検査に加えて腎生検(じんせいけん)という腎臓に針を指して組織を取ってきて顕微鏡で観察する方法で診断します。(腎生検についてはこちら

微小変化型ネフローゼの治療について

微小変化型ネフローゼの治療については、近年アップデートも多くて気にされる患者さんも多いので細かく書こうと思います。

ステロイド

まず最初に行うのが、ステロイドを使用した免疫抑制の治療を行います。微小変化型ネフローゼは、大方がステロイドのみでコントロールをつける事が出来ます。しかし、ステロイドによる治療は始めると年単位継続して飲み続ける必要があります。(最初8錠飲んで、1ヶ月に1錠ずつ減らしていくみたいなイメージをして頂ければと思います。)

ステロイドは治療として抜群に効くのですが、副作用が多岐に渡り、血糖値が高くなったり、高血圧になったり、骨がもろくなったりします。適宜、その副作用に対して予防薬などを内服する事で対応します。最終的に6種類以上の薬を半年〜二年間ぐらいお付き合いする事になります。

また他の疾患と比べて微小変化型ネフローゼはよく効くのですが、再発の頻度が高く、ステロイドを減量していく途中で再発する事も多々あります。再発した際には再びステロイドを増量して仕切り直します。ケースバイケースでステロイドに加えてシクロスポリンという免疫抑制剤を二剤使用して再び治療します。(ステロイドに関してはこちらを参照下さい

ステロイド+シクロスポリン

シクロスポリン(ネオーラル)はステロイド減量中に再発した場合に使用する薬です。免疫を抑える薬の中では比較的副作用の少ない薬です。主な副作用として、肝障害、高カリウム血症、高尿酸血症、多毛などがあり適宜採血で問題ないかを確認します。長期的に使用すると腎臓に障害が出る事もあり、疾患によっては数年に1度腎生検でシクロスポリンによる腎障害が起きていないかを確認する事もあります。

シクロスポリンの注意点は、2つあります。最初に患者さんによって身体への取り込みが良い人・悪い人がいます。そのためシクロスポリンを投与始めた時は、シクロスポリンの取り込みを調べる採血検査をして丁度よい投与量を決めます。

もう一つは、食事や他の薬の影響を受ける事があるので控える必要があります。食事はグレープフルーツジュースを飲むのを避けてもらっています。薬はスタチン、フィブラート、ラジレスなどの投与は控えます。(スタチンは影響の少ない薬剤を選びます。)

リツキシマブ(リツキサン)について

ステロイド、シクロスポリンで再発を繰り返す患者さんに対して、近年リツキシマブ(リツキサン)という血液内科領域で使用されていた薬が有効な可能性が出てきて注目されています。リツキシマブについて質問されることが多いので詳しく書きます。

リツキシマブは元々、悪性リンパ腫という病気に対して実際使用されている薬剤です。再発を繰り返す微小変化型ネフローゼに対して効く事が近年分かり、小児科領域では保険収載もされて積極的に使用されている薬剤です。

成人例でも治療成績が報告されるようになり、2017年のガイドラインにも「リツキシマブは、成人ネフローゼ症候群に対する尿蛋白減少・腎機能低下抑制効果のエビデンスは十分ではないが,頻回再発型やステロイド抵抗性の症例に有効な可能性があり,考慮してもよい」と記載されています。実際、担当の患者さんや腎臓内科の先輩や腎臓内科学会でもポジティブな報告がされており注目しています。

一方で、まだまだわかっていない事も多い治療法です。特に副作用・長期的な投与による予後に関してはわかっておりません。副作用としては、発熱、アナフィラキシーショック、悪心・嘔吐、間質性肺炎、進行性多巣性白質脳症などの重篤な副作用も知られています。

リツキシマブを使う最大のメリットは免疫抑制薬とりわけステロイドの投与量を減らす事が出来る事です。ステロイドは治療薬として抜群の薬ですが、副作用が多く、なるべく投与量を減らしてコントロールすることが望ましい薬剤で、リツキシマブを併用してステロイドを最小限(もしくは休薬)にする戦略になります。

保存的加療

上記に免疫抑制薬に加えて、腎臓を守る降圧薬(RAS系阻害薬)を使用したり、食事療法を行います。

微小変化型ネフローゼ加療中の注意点

一番患者さんに伝えたいのは、「再発した時に早急に治療介入する事が望ましい」ということです。風邪を引いたりすると再発することが多くなります。その際に再発のサインであるタンパク尿をすぐに見つけてステロイドの増量を一時的に検討する必要があります。再発には早く対応すればする程、必要な薬の量が減ります。

薬局やAmazonでタンパク尿を見つける試験紙があるので、僕の患者さんにはそれを買ってもらって定期的にタンパク尿が出ていないかを確認してもらっています。

微小変化型ネフローゼは原因が追求されておらず、長い目で付き合っていく病気です。適宜等ページでも情報提供させて頂きます。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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