<腎臓内科医直筆>採血・採尿データーの見方をまとめました。

2018.12.04
<腎臓内科医直筆>採血・採尿データーの見方をまとめました。
<腎臓内科医直筆>採血・採尿データーの見方をまとめました。

腎臓内科医、森です。腎臓病の治療をする際に定期的に採血・採尿検査を行なって治療経過が良好かを確認するのですが、患者さんからどの項目を見たら良いかが分からないと言われるのでこの記事でまとめようと思います。

まず最初に断りますが、この記事では最低限患者さんに把握して欲しい項目を書いています。診療していて、枝葉の知識ばかりに気を取られてしまい、本当に大切な知識が抜け落ちている事が患者をよく見かけます。また、当たり前の情報よりも意外性のある情報の方がメディアで取り上げられる傾向にあり、勉強しても勉強しても知りたい事を知れず、本で〇〇はマズイ、テレビで〇〇は良くないと枝葉の情報ばかりを気にして、頭がパニック状態になってしまう患者さんが多い事に臨床医として非常に問題意識があります。

仕事でいうと、「◯◯をすれば、デキる男になる」という本に信憑性が無いように、

勉強でいうと、「◯◯をすれば東大に受かる」という本に信憑性が無いように、

ダイエットでいうと、「◯◯を食べれば痩せる」という本に信憑性が無いように、

腎臓病の治療も「◯◯をすれば腎臓が良くなる」という情報には価値がありません。逆に枝葉の知識に流されず、確実に大切な事をしっかり理解してコツコツ行動している人の方が治療が上手くいきます。話がそれましたが、一般的に使用される検査項目についてまとめました。

クレアチニン・eGFR(イージエフアール)

このクレアチニンとeGFRは腎臓病の患者さん絶対知って欲しい検査項目です。端的に「腎臓の能力を示す値」です。クレアチニンは高ければ高い程、eGFRは低ければ低い程、腎臓の障害が強いことを示唆します。(クレアチニン・eGFRについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。)

クレアチニン・eGFRという二つの値があるのですが、臨床医としては「eGFR」の方に注目してほしいと思っています。このeGFRが10を切ると腎臓だけで身体の毒素を排出することができなくなり、移植・透析医療が必要になります。なので、毎度の検査でこのeGFRが下がっていないかを確認するために採血をしています。

ここでポイントは、このeGFRという値は、身体の体液のバランスや筋肉量で動きがあります。検査した時の状態で若干の誤差が出ることがあります。患者さんの多くがeGFR33→34になると腎臓が良くなったと考える方がいらっしゃいますが、少し体液量が多かったり、筋肉量が下がっていたりする可能性が高く、一回一回の推移が腎臓の機能を示す訳ではありません。何回も何回も採血をして、平均値が腎臓の機能を示して、その平均値が年スパンで下がっていかないように考えていきます。

ちなみに、巷には「〇〇をすればクレアチニンが下がる!」という謳い文句で商品を売る企業が多数ありますが、現場の医師としてはこの類の商品は全て嘘だと思っています。この事についてはしっかり別途に記事を書こうと思います。

クレアチニンについて詳しくはこちら:クレアチニンとは? 〜数値が高いと腎臓に問題がある?〜

eGFRについて詳しくはこちら: eGFR とは???腎臓が悪くなるほど低い値になる?

カリウム

カリウムは野菜・果物に含まれる成分です。腎臓病が進むと、このカリウムを尿に排出できなくなり、カリウムが溜まった状態になります。高カリウム血症と言います。高カリウム血症になると、突然死に繋がる不整脈が起きる可能性があります。なので、腎臓病が進んだ患者さんでは野菜や果物を控えるように指導する事があります。

一方でカリウム自体が腎臓を障害する訳ではありません。なのでまだ腎臓病としての重症度が浅く、普通に食生活をしていてもカリウムが上がらないような患者さんには、野菜・果物を制限する必要はありません。腎臓病というだけで一律強制に野菜・果物を制限する栄養指導をしている施設が散見されますが、個人的には、野菜・果物に含まれる食物繊維やビタミンは摂るべきだと思いますし、塩分・タンパク質が制限されている上に野菜・果物も駄目と言われて、ノイローゼ気味になる患者さんが数多くいる事を考えると一律で線引が出来ませんが、採血を見ながら可能であれば制限をしないようにするべきだと思います。

詳しくはこちら:腎臓とカリウムについてまとめました。

タンパク尿

タンパク尿が出ていれば出ている程、腎臓に負担がかかっている可能性があります。腎臓には糸球体(しきゅうたい)・尿細管(にょうさいかん)という必要な物質と不要な物質をやり取りしている場所がありますが、障害が強いと尿に出てはいけないタンパクが出てしまいます。正常値は0.3g/日以下で、尿検査で特別な計算式を使用する事で測定出来ます。腎臓内科医は治療評価として良く使用しますが、測定しない施設もあります。

このタンパク尿は、クレアチニンと違って治療を行う事で下げる事が出来ます。「◯◯をすればクレアチニンが下がる」というのは99%嘘ですが、「◯◯をすればタンパク尿が下がる」というのは本当です。(非常に重症だと下がりませんが・・・)

詳しくはこちら:蛋白尿(タンパク尿)とは?〜尿に蛋白が混じっていれば腎臓に異常がある〜

その他

基本上記の3つを把握するのが大切です。追加として以下のような項目をチェックしましょう。

尿素窒素(BUN)

腎臓内科領域では、身体の毒素に相当するもので、腎臓病ステージ5の人が透析を始めるタイミングを決める指標として使用します。年齢と疾患にもよりますが、このBUNが50-60程度になると透析の準備を始めて、80程度になると透析開始を検討します。

バイカーボネート(HCO3-)

腎臓病が進むと身体が酸性になります。酸性になると身体の様々なメカニズムに異常を来すので透析が必要になります。これもBUNと同様に、透析を準備したり、始める指標として使用します。

カルシウム(Ca)・リン(P)

腎臓病が悪くなると、身体のカルシウムが下がります。そうすると、骨を溶かして補おうとするので長期的に骨が脆くなるリスクが上がります。そのためカルシウムを作るメカニズムに関わるビタミンDを薬で補います。またリンは腎臓病が進むと上がり、このリンが高いと動脈硬化が進むと同時に腎臓の障害のスピードが上がると言われています。(リンについてはこちら:腎臓病でなぜリンは大切なのか?

LDLコレステロール

腎臓病の方は、心筋梗塞になるリスクが数倍に上がると言われており、コレステロールをしっかりコントロールする事が大切と言われています。腎臓病の患者さんは2桁を目指します。(詳しくはこちら:脂質異常症についてまとめました。

 

腎臓病の評価は、採血・採尿検査が非常に大切で項目が多いのですが、患者さんに知ってほしいのは多くても10個程だと思います。枝葉の知識に惑わされず、とりあえず大事な事を抑えて頂きたくまとめました。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.09.06)

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