慢性腎臓病(CKD)とは? 〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜

2017.08.17
慢性腎臓病(CKD)とは? 〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜
慢性腎臓病(CKD)とは?  〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD)とは以下のいずれか、または両方が3ヶ月以上続く状態の事を言います。(CKD診療ガイド2012、日本腎臓学会)

① 腎障害を示すeGFRという値が60ml/min/1.73m2以下の状態

② 尿所見、画像所見などの検査所見で腎障害の存在が明らかな状態

このeGFRという値は、医学的に説明すると複雑なため詳細は別途に記事書きました。非医療者の方にとっては『腎臓の点数』だと思って下さい。

一般の方々向け用の言葉を使うと慢性腎臓病(CKD)とは『100点満点の腎臓が60点以下になった状態』を言います。そもそも腎臓はざっくり以下の2つの役割を担っています。

1:体に必要な物を出ていかないようにする。

2:体に不要な物を出す。

腎臓が機能が悪くなると、必要な物が体内から出ていったり、不要な物(毒素や不要な水分など)が体に溜まってしまいます。最終的には透析をしなければ生活をできなくなったり、生命を保てなくなるような状況になってしまいます。その際は透析医療が必要になります。(詳しくは下記に別記事を貼りました。)

先程申し上げたeGFR(腎臓の点数)が15-30ml/min/1.73m2以下になった頃から透析の準備を初めて、5-10ml/min/1.73m2になると透析が必要になります。

透析よりも怖い心筋梗塞、脳梗塞

では今日の本題は『〜なぜ医者は腎臓が60点以下になると騒ぎ始めるのか〜』という話です。よく医学生の方や初期研修医の先生に質問すると、『透析になるリスクが上がるからです。』と答えます。それも正しいのですが、実は『透析になるリスクよりも心筋梗塞や脳梗塞になるリスクの方が怖い』と考えられてます。

下の図をみて下さい。これらの図はアメリカのNew England Journalという世界的な雑誌から発表された論文で紹介された結果です。

f:id:korokorokoro196:20170817211729p:plain

横軸がGFR(腎臓の点数)で腎機能の度合いを示し、右に行けば行くほど腎臓の機能が悪い事を示します。緑の棒の上の赤い数字は、慢性腎臓病(CKD)ではない患者に比べて、『疾患で死亡する確率が何倍になるか』を示しています。例えば、GFR(腎臓の点数)が15-29点の人は3.2倍も死亡確率が上がります。

f:id:korokorokoro196:20170817211803p:plain

Bの図は慢性腎臓病(CKD)ではない患者に比べて、心筋梗塞脳梗塞になる確率が何倍になるか』を示しています。『GFR(腎臓の点数)が低い程、死亡率、心筋梗塞、脳梗塞になる確率が上がる』事が分かります。

次にこんなデーターも出ています。

f:id:korokorokoro196:20170817213031p:plain

左のAの図をみて下さい、慢性腎臓病(CKD)だと男性の場合、12年の間に心筋梗塞などの病気になる可能性が35%ぐらいなのに対して、慢性腎臓病(CKD)ではない人は12%程度にとどまります。女性も同様の結果です。右のBの図も『慢性腎臓病(CKD)の方が心臓の病気や脳の病気なりやすい』事を示しております。

このような研究結果から、慢性腎臓病(CKD)患者では、一生懸命、栄養指導をしたり、行動変容を促したり、薬物加療をします。

日本の慢性腎臓病医療の現状

不安を煽るようなデーターばかり示しましたが、なんと日本には慢性腎臓病の成人人口は1330万人もいます。日本人の8人に1人が慢性腎臓病です。これは日本の0-15歳の子供の数である1600万人を追い越しそうな勢いで増えております。

しかし、腎臓の専門医は日本で4000人くらいしかおりません。専門医がどんだけ頑張っても手が足りません。しかも腎臓は内科のマイナーな臓器であり、心臓の先生は心筋梗塞、脳の先生は脳梗塞などで忙しく腎臓の事なんて気にしてられません。

医者は基本的に感謝をされる事がやり甲斐になる仕事であり、今目の前で困っている患者さんに強く心動かされる傾向にあります。それに比べて、腎臓は、状態がひどくなるまで、具体的に100点満点で15点ぐらいになるまで症状が出ません。すると、結果的に多くの慢性腎臓病(CKD)や尿所見異常は後回しにされがちです。

腎臓内科は、透析や腎炎、ミネラルバランスなど幅が広い領域であり、どれもやり甲斐があるため、慢性腎臓病が手薄になり日本にいる4000人の中でも慢性腎臓病を一番専門にする先生は限られます。なので、慢性腎臓病を専門にしていく私は恐らく変わり者だと思いますが、日本の子供全員の人数と同じくらい慢性腎臓病の人がいる中で、こうやってブログを書いて情報提供していく事にすごく意味があると密かに思っています。

 

診療依頼はコチラ > 記事の一覧へ >

管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
管理人近況
  • (2018.11.04)
    ファンデリー様企画の数百人規模のイベント「ミールタイム健康フェスタ」で『生活習慣病の食事療法・運動療法の最新の知見』と題して講演させて頂きました!
  • (2018.10.27)

    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

  • (2018.09.21)

    日経メディカル様に取り上げて頂きました!詳しくはこちらへ!

    リンク先はこちら

  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

管理人近況の一覧はコチラ