腎臓病と認知症

腎臓病と認知症

腎臓病の患者さんは認知症である可能性が高いです。

血液透析、腹膜透析を受けている患者さんは、脳の萎縮のスピードが健常人と比較して2-3倍早くなるという報告もあります。

腎臓病で認知症が起きるメカニズム

メカニズムとしては、腎機能障害の原因となっている高血圧、糖尿病や、脂質異常症、喫煙、心房細動などの動脈硬化や血管の障害に加えて、腎機能障害で起きる貧血、副甲状腺亢進症などが関与していると言われています。

また、腎機能障害によって生じる酸化ストレス、レニン・アンジオテンシン、交感神経が関与しているとも言われています。

認知機能障害に関連する因子

アルブミン尿

久山町研究では、CKDとアルブミン尿は有意に関連しました。

血管性認知症は関連しており、アルツハイマー型認知症は関連してませんでした。

生活習慣病

高血圧は、血管性認知症との関与があり、アルツハイマー型認知症との関連はありません。

一方で糖尿病や喫煙は血管性認知症、アルツハイマー型認知症両方の関連が指摘されています。

また血圧の変動も血管性認知症、アルツハイマー型認知症両方の関連が指摘されています。

貧血

貧血が脳の循環や酸素の代謝に異常を起こして、前頭葉を中心とした脳の障害を起こします。

EPO製剤を使用することで、脳の機能を改善するという報告があります。(Improvement of brain function in hemodialysis patients treated with erythropoietin.)

認知症の予防・治療法

認知症を予防するためには、適度な運動、積極的な社会参加、囲碁・麻雀や散歩やスポーツなどを行う、また適度な飲酒(人によるが)も認知症予防に繋がると言われています。加えて、背景の生活習慣病である高血圧、糖尿病、脂質異常症を加療し、禁煙をして、認知症発症を防ぐ事に繋がると言われています。

RAS系阻害薬

CKDで生じる酸化ストレスが脳神経障害を引き起こします。

RAS系阻害薬を使用することで酸化ストレスを減らす可能性があります。

実際、アルツハイマー型認知症や加齢による認知機能障害に対してRAS系阻害薬の効果を示したメタ解析も出ています。(The association of renin-angiotensin system blockade use with the risks of cognitive impairment of aging and Alzheimer’s disease: A meta-analysis.)

血圧

SPRINT MIND試験では、厳格な降圧群(120mmHg以下)が、標準群と比較してprobable dementiaの発症に関しては有意差はないものの、HR0.83と低下していました。

腎移植

腎移植を行った結果、認知機能障害の改善を認めたデーターはあります。(Meta-analysis of cognitive functioning in patients following kidney transplantation.)

しかし健常人レベルまでは戻ることはありませんでした。

腎臓リハビリ

KDQOL-SFの認知機能障害の項目の改善の報告があります。

多因子の介入

FINGER studyというRCTでは、「運動」、「食事」、「認知トレーニング」、「血管リスク評価」を行う生活習慣改善群では、対照群に食わべて認知機能が25%も改善したという報告があります。

軽度認知障害とは

近年、腎臓に限らず認知症を早期発見して、早期治療しようとする流れがあり、軽度認知障害(けいどにんちしょうがい)という概念が注目されています。認知症は基本的に、これといった治療法が無いと言われています。一方でこの軽度認知障害は、認知症の一歩手前の状態でこの段階で介入する事で認知症になるのを遅らせる事が可能になるのではと言われています。

軽度認知障害は、「日常生活動作は正常、全般的な認知機能は正常、認知症ではないにも関わらず記憶障害があり、本人、家族が自覚している状態で、年齢・教育レベルでは説明がつかない状態」と言われています。MOCA-Jというツールを使って診断が出来るのではないかとも言われています。

腎臓病の患者さんは、若い方も含めて、この軽度認知障害の割合が高く、ブラジルの研究結果では7割程度、日本の研究でも6割程度が該当するという結果も出ています。

Montreal Cognitive Assessment (MoCA) screening mild cognitive impairment in patients with chronic kidney disease (CKD) pre-dialysis.

Mild cognitive impairment in older adults with pre-dialysis patients with chronic kidney disease: Prevalence and association with physical function.

ただ、軽度認知障害はまだまだ、分かっていない部分も多く随時情報提供しますが、少なくとも、この軽度認知障害についてはこの記事で伝えたいのは、腎臓病の患者では、透析になる事や心臓・脳の病気になるだけでなく、認知機能に影響を与える可能性があり、より運動や生活習慣病の治療を行なって早い内から予防していくことが大事だと言うことです。

また、可能であれば、ご高齢の場合、腎臓病と共にどのような人生を歩んでいくか、家族のサポートをどのように得ていくかなど、しっかり考えていく事が望ましく、難しい部分もありますが、可能な限り整備していく事がより良いとも思います。

腎臓病はご高齢の方が多くて、一概に透析や死亡という概念だけでなく、以前記事にした筋力や認知機能などに目を向けていく必要があります。もしかしたら、そちらの方が大事なのかもしれません。そしてやはりベースは食事と運動です。認知症に対しては残念ながら科学的根拠が明らかな薬物療法はありません。

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