<腎臓内科医直筆>腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??

2018.11.26
<腎臓内科医直筆>腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??
<腎臓内科医直筆>腎臓を守る降圧薬「RAS系阻害薬」とは??

腎臓内科医の森  維久郎(もり いくろう)です。腎臓病の患者さんの治療において、血圧管理は治療の最も重要な要素です。腎臓病の患者さんでしっかり血圧を下げることが出来ているのは、1割程度と言われており、食事・運動に加えて内服薬によるコントロールがほぼ必須になります。降圧薬の中には、腎臓を守る作用のあるRAS系(ラスケイ)阻害薬という降圧薬があり、腎臓病の患者さんによく使われています。どのような時に使うのか、どういう効果があるのか、どのような時に使ってはいけないかを今日触れたいと思います。

RAS系阻害薬とは?

RAS系阻害薬とは、血圧を上げるレニン・アンギオテンシン・アルドステロンという身体のホルモンの分泌に作用して、血圧を下げます。他の薬剤と比較して、心臓・腎臓に保護的に働く効果が報告されており日本でも良く使用されている薬です。

具体的な商品名としてロサルタン(ニューロタン)、アジルバ(アジルサルタン)、オルメテック(オルメサルタン)、ブロプレス(カンデサルタン)、ディオバン(バルサルタン)、ミカルディス(テルミサルサン)、レニベース(エナラプリル)などがあります。最初の3つは私が良く使う薬です。正直な所、細かな違いは報告されていますが、周りの医師の使用感を聞いても大きな違いはなく、強いて言うなら血圧の下がり方が違い、それに応じて使い分けています。

RAS系阻害薬は腎臓を守るのか?

CKD診療ガイドライン2018でも「高血圧に伴うCKD患者に推奨される降圧薬」としてRAS系阻害薬の使用を推奨しています。具体的には、糖尿病の患者さんや糖尿病以外でもタンパク尿が出ている患者さんには積極的に使用する事が望ましいと考えられています。

腎臓には糸球体(しきゅうたい)という身体の必要な物質・不要な物質をやり取りしている場所があるのですが、血圧が高いと圧力が掛かり糸球体に障害を受けます。このRAS系阻害薬は、他の降圧薬と比べても糸球体にかかる圧力を和らげる事で腎臓を守る働きがあると言われています。

また、腎臓病では交感神経が活性化しており、心臓や腎臓などに障害を引き起こすのですが、RAS系阻害薬により障害を抑えることが出来ます。腎臓病の患者さんは、心筋梗塞・心不全のリスクが数倍に挙がると言われており、こちらの観点からもRAS系阻害薬を積極的に使用します。

ちなみに、RAS系阻害薬を使用する事によって、クレアチニンは上がり、eGFRは下がります。これを腎臓の障害が進んでいると解釈してしまう患者さんが多く、医療者まで慌てる事がありますが、これは腎臓に必要以上にかかっている圧力を取り除いているのである程度の変化は問題なく長期的には腎臓を保護する方向に働くので問題ありません。

RAS系阻害薬を使用しない時

腎臓病患者さんにRAS系阻害薬を使用しない場合として以下のような場合が挙げられます。

・腎機能障害が進行して高カリウム血症の時

・動脈硬化が強い時

・後期高齢者で夏場の時

腎臓病が進行すると、カリウムという成分が尿から出なくなり身体に溜まってしまいます。このカリウムが溜まりすぎると、突然死の原因となる不整脈の原因となるため生野菜・果物を制限する必要があるのですが、このRAS系阻害薬を飲んでいるとカリウムが身体に溜まりやすくなるので注意が必要です。

また、ガイドラインなどにはしっかり明記されておりませんが、動脈硬化が強い場合は腎臓の糸球体の入り口に当たる輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく)が動脈硬化で細くなっていて、糸球体に届く血流が少ない可能性があり、その際にRAS系阻害薬を使用すると糸球体が不要物・必要なものをやり取りするための圧力が足りなくなって腎機能障害が進むことがあるため使用しない事があります。

また同様の理由で後期高齢者でも夏場に脱水を起こして腎機能障害が進むため中止する事があります。その際は違う薬を使用します。

まずは、減塩、運動から始めましょう!

このRAS系阻害薬は減塩をすると、より効果が出やすくなると言われています。また定期的な運動は血圧を下げる効果があり、食事と運動をして、コントロールが付かない場合にRAS系阻害薬を使用していきます。またタンパク尿が大量に出ている場合は血圧コントロールが良好でも腎臓を守る作用に期待して使用する事があります。

何かご質問がある場合は適宜、診察室で質問をしてください。

 

今日のまとめ

・腎臓を守る血圧の薬としてRAS系阻害薬がある。

・心臓にも効果があり積極的に腎臓病の患者に使用する。

・カリウム・動脈硬化などの場合は使用しない事がある。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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