<森 維久郎ブログ>日本の腎臓領域の予防医療のデーターが発表されました。

2018.11.17
<森 維久郎ブログ>日本の腎臓領域の予防医療のデーターが発表されました。
<森 維久郎ブログ>日本の腎臓領域の予防医療のデーターが発表されました。

腎臓内科医の森 維久郎(もり いくろう)です。日本の腎臓領域の予防医療のデーターが発表されましたのでブログを書こうと思います。「以下参考文献:日本腎臓学会誌(2018:60(7): 1011-1022)」

研究の内容について

日本では2010年にNIPPON DATA2010という10年に1度、国主導で行う国民の健康や栄養を中心とした脳卒中、心筋梗塞などの疾患に関する予防方法を明らかにする大規模な調査です。

この調査で「国民代表集団における腎機能低下者のリスク因子および生活習慣の状況」という研究が組まれました。この調査では主に以下のような内容について調べられています。

腎臓が障害され、eGFR<60の状態の方を対象に

・何%の人が実際に腎臓病と指摘されたか?

・何%の人が血圧・血糖・脂質をしっかり治療出来ているのか?

・何%の人がカロリー・塩分・タンパク質摂取が適正に摂取出来ているのか?

を調べています。(今回は代表的な内容について触れます。)

何%の人が実際に腎臓病と指摘されたか

腎臓の機能が落ちていて、その事を伝えられている人の割合はなんと14.5%しかいないということが分かりましたeGFR30以下になってきてやっと腎臓が悪い事を指摘される患者さんが多いようです。

但し、この研究の平均年齢は72歳で、80歳前後の高齢者も含まれている事が考えられます。現場の人間の感覚としては、80歳前後の高齢者でeGFR50で、年齢の変化が主な原因で、医学的介入の必要がなく、他に啓発していなくちゃいけない病気がある場合、敢えて腎臓については流す程度で説明する事もあります。(ご高齢の方の場合、情報が多すぎて迷ってしますことがあるからです。)

ここらへんがデーターを並べて机で議論するのと、現場で取捨選択していく事の違いで難しいのですが、個人的には今回の結果は想像以上に情報提供させていないと感じました。

というのも血圧コントロールを始め、生活習慣指導、栄養指導、運動療法、内服加療が一番効果的なのがeGFR30-60の段階であるという研究結果も出ており、その段階でしっかり介入しておくことが重要だと思っています。

何%の人が血圧・血糖・脂質をしっかり治療出来ているのか

治療目標の基準は、下記の通りです。

脂質:LDLコレステロール≧120mg/dl

血糖:HbA1c≧6.9%

血圧:収縮期血圧/拡張期血圧≧130/80mmHg

上の図をみると、日本の腎臓医療で行っていくべき事は、間違いなく血圧治療目標を達成する事が分かります。 勿論、高齢者の血圧はどうするか?など枝葉の議論はありますが、8割が行うべき血圧管理がされていないのが現状です。(もしかしたら腎臓医療の名医は血圧130/80mmHg以下にシンプルに出来ている医師なのかもしれません。)

高血圧については、血圧をコントロールする事で、①:透析になるのを遅らせる、②:死亡リスクを下げるという2つの効果があります。治療としては減塩を含めた食事療法、運動療法をベースにして、必要時に内服薬を追加していきます。(詳細は記事の下に別途書いた記事を添付しておきますのでご参照下さい。)

何%の人がカロリー・塩分・タンパク質摂取が適正に摂取出来ているのか?

栄養についても調べられています。腎臓病の患者では、塩分・タンパク質の制限を行う事が望ましく一方で、カロリー摂取はしっかり保つ必要があります。栄養素の話は意外と複雑のため、今日は塩分についてのみ触れます。

塩分摂取量は主に高血圧を介して心臓・脳・腎臓に大きく影響を与えるためWHO(世界保健機関)では5g以下にしましょうと推奨されています。日本人は塩が好きな国民で12g程度塩分摂取をしており、国を挙げて減塩の啓発を行っており、厳格な血圧コントロールが必要な腎臓病患者の塩分摂取量の目標は6g以下とされています。

今回の研究結果では、目標値を達成出来ている人は12.8%しかいない事が分かりました。いかに減塩が難しい事なのかが分かります。甘く設定した男性10g以下、女性8g以下の基準ですら53.2%しか満たしていません。また「腎臓病である事を知らされていない」と更に割合が減るという結果も出ました。

6g以下:12.8%→11.7%

男性10g以下、女性8g以下:53.2%→36.7%

腎臓医療にいま必要なのは「啓発・減塩・血圧」の3本柱!

テレビや新聞、行政などが、透析医療による社会保障費圧迫を問題視して、再生医療を含めた最先端医療に大きな期待を寄せています。一方で、最先端医療と同時進行で取り組むべき、凄く地味でシンプルなメソッドが「啓発・減塩・血圧」の3本柱です。最先端医療は世界中の天才達に任せて、よりシンプルだけども、中々解決出来ていない、かつ誰もが行動に移せる「啓発・減塩・血圧」の3本柱に重きを置いて腎臓医療に向き合っていきたいと思います。

 

*今回取り上げた研究について詳しくはこちらに3ページ程の原本が公開されているのでご参照下さい。

「国民代表集団における腎機能低下者のリスク因子および生活習慣の状況 : NIPPON DATA2010」

*高血圧についてはこの2つ記事でまとめました。

腎臓と塩分の関係についてまとめました。

高血圧についてまとめました。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.11.04)
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  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

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  • (2018.09.06)

    週刊東洋経済2018/9/8号で少しお話させて頂きました!

     

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