腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?

腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?
腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?

腎臓内科医の森です。腎臓病の患者さんは食事療法として塩分制限・タンパク制限を推奨される事が多く、最終的に「あれも食べちゃ駄目、これも食べちゃ駄目」となってしまいます。

外来で良くこの食事は良いのですか?と聞かれるのですが、一定数の患者さんで朝食をパン食に切り替える方がいて、「コーヒーって飲んで良いんですか?」と聞かれるので今日は「コーヒーと腎臓」について書こうと思います。

コーヒーは体に良い??

2017年にannals of internal medicineという内科の世界で、世界的権威にある医学誌から「コーヒーは体に良い可能性があり、1杯より2杯、2杯より3杯、3杯より4杯以上の方が心筋梗塞・脳卒中や糖尿病や腎疾患etcによる死亡率が低い」という研究結果が出ました。(Ann Intern Med. 2017 Aug 15;167(4):228-235.)

この研究の研究デザイン(前向き研究でない事)からこの結果から、「コーヒーは体に良い!!」と断言するのは早計ですが、少なくとも「コーヒーは体に悪い」という判断はしなくてもよくなります。

杯数に関しては、杯数が多ければ死亡率が低いという研究結果が出ているものが大半ですが、中には多すぎると良くないという報告もあります。

大方の報告をまとめるとあくまで印象論ですが、2-3杯/日で大きな問題になっていないので飲んでもよいと結論付けています。

コーヒーは腎臓に良い?

以前、腎臓内科.comでもお伝えしたように、2018年にAJKDという腎臓領域の世界的な医学誌から「コーヒーの摂取量が多いと腎臓病になるリスクが下がる」という研究結果が発表がされました。(Am J Kidney Dis. 2018 Aug;72(2):214-222)

まだまだ報告が少なく、報告の質も決して断言できるほど良いものではないので「コーヒーは腎臓に良い!」と結論付ける事は出来ませんが、少なくとも「コーヒーは腎臓に悪いので飲んではいけない」という判断にはならないと個人的には解釈しています。

一方で、この研究は健康な人(腎臓病でない人)に行われたものであり、果たして腎臓病の人が日頃からコーヒーを飲む事は良いのか?悪いのか?という事についてはまだ分かっていませんでした。

腎臓病の人はコーヒーは飲んで良いのか?

先程の研究結果が発表されてから約半年後の2018年の秋にNDTという腎臓領域の世界的な医学誌から「腎臓病の人にとってカフェインを飲む人の方が、死亡率が低い」という内容の研究結果が発表されました。(Nephrol Dial Transplant. 2019 Jun 1;34(6):974-980.)

これもまた、まだまだ報告が少なく、報告の質も決して断言できるほど良いものでないので「腎臓病の人はカフェインを飲んだ方が良い!」と結論つける事は出来ませんが、カフェインに対して前向きな結果です。

カフェインなのかコーヒーなのか

ここでの注意は、あくまでこの報告はカフェインについて触れており、コーヒーについて触れている訳ではありません。

カフェイン以外のコーヒー独自の成分が良いのか、カフェインが良いのかまだまだ明らかになっていることが少なく、カフェインレスのコーヒーでも死亡率が下がるという結果が出ていたりまだまだ結論がでない状態です。

「腎臓病の人はコーヒーを飲んだ方が良い!」と言い切るためには、ランダム化比較試験というコーヒーを飲んでいる人達と、コーヒーを飲んでいない人達を分けて5年後、10年後の死亡率などを調べる必要がありますが、このような試験を行うのはコスト、労力の観点で難しく行われない可能性が高いです。

腎臓内科医としてこれらの結果を考える。

テレビでは1つの研究結果を取り上げて、「コーヒーが体に良い!!」と平気で言ってしまうのですが、医療の世界は意外と慎重で、複数の結果を吟味していきます。

テレビの健康番組をみて、「人参が良い!」「トマトが良い!」となり翌日のスーパーで人参やトマトがなくなるのをみて、少し複雑な気持ちになるのが正直な所です。(頭が固いのかもしれません。)

今回医師として、この記事を書くために複数の海外の文献をしっかり吟味しましたが、それでも結論を出す事が難しかったです。

医師として今ある研究結果を解析して患者に情報を取捨選択して情報提供していこうと思います。

論点1:取り敢えず、コーヒーは飲んでも良い。

1つ目の結論として「腎臓病の人もコーヒーは飲んで良い」とする事が出来ます。

現段階での論点は「コーヒーは体に良い or 変わらない」であり、体に良くないという方向にシグナルは動いていないと解釈できます。

コーヒーにはカリウムが入っており、腎臓病が進行している患者さんでは考慮が必要ですが、カリウムに余力がある場合は、飲んで良いと伝える事が出来るでしょう。(とくにインスタントコーヒーはカリウムがいっぱい入っているので注意が必要です。)

論点2:腎臓病の人にとってコーヒーは飲むと健康に良いか?

次に「腎臓病の人にとってコーヒーは飲むと健康に良いか?」という問いに関しては「ちょっと待った」と結論づけます。

過去の報告を一方下がって検証して「ちょっと待った!」と結論づけたのには2つの理由があります。

1:医学的なメカニズムがよく分かっていない

一般の方からすると「メカニズムなんてどうでもいいでしょ、健康に良ければ良いんだよ!」と考えられるかもしれませんが、医師としては「メカニズム」を非常に気にします。

目の前の患者の中にはコーヒーを飲まない方良いひとがいるかもしれません。そのような人を見つけるのに「メカニズム」を気にすることは大切です。

コーヒーには血管拡張作用があるとか、抗酸化作用があるなど様々な意見がありますが、どのメカニズムも正直ピンと来ておらず、実際どの報告をみても、報告主が「メカニズムは良く分からないので注意」と書いています。

2:コーヒーそのものが良いのか?コーヒーを飲む生活が良いのかがわかっていない

コーヒー自体が良いのではなく、コーヒーを飲む人には高収入の人が多くて、収入の差が健康の差に繋がった可能性があります。

食事は生活と大きく結びついており、食事そのものが良かったのか、その食事よく食べる人の生活が良かったのかははっきりしないことが多いです。

食事関連の研究結果は、特に解釈に慎重を要します。テレビの情報はここらへんが結構雑なことが多いので要注意です。

以上から腎臓内科医としては「コーヒーが腎臓に良いか分かりませんが、飲みたかったら飲んでよいですよ〜」と伝えるのが一番良いかと結論づけました。随時、新しい情報が入り次第、Twitterやこのサイトでアップデートします。

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