腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?

腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?
腎臓病だとコーヒーを飲んではいけないのか?

腎臓内科医の森です。腎臓病の患者さんは食事療法として塩分制限・タンパク制限を推奨される事が多く、最終的に「あれも食べちゃ駄目、これも食べちゃ駄目」となってしまいます。外来で良くこの食事は良いのですか?と聞かれるのですが、一定数の患者さんで朝食をパン食に切り替える方がいて、「コーヒーって飲んで良いんですか?」と聞かれるので今日は「コーヒーと腎臓」について書こうと思います。

コーヒーは体に良い??

2017年にannals of internal medicineという内科の世界で、世界的権威にある医学誌から「コーヒーは体に良い可能性があり、1杯より2杯、2杯より3杯、3杯より4杯以上の方が心筋梗塞・脳卒中や糖尿病や腎疾患etcによる死亡率が低い」という研究結果が出ました。この研究の研究デザイン(前向き研究でない事)からこの結果から、「コーヒーは体に良い!!」と断言するのは早計ですが、少なくとも「コーヒーは体に悪い」という判断はしなくてもよくなります。

杯数に関しては、他の研究をみても杯数が多ければ死亡率が低いという研究結果が出ているものが大半ですが、中には多すぎると死亡率が上がるものもあります。ここらへんは、結論が全く出ていませんし、今後も結論が出ない事が考えられます。あくまで印象論ですが、2-3杯/日のレンジでは問題ない事が多いので、飲んでもらって問題ないかもしれません。

コーヒーは腎臓に良い?

以前、腎臓内科.comでもお伝えしたように、2018年にAJKDという腎臓領域の世界的な医学誌から「コーヒーの摂取量が多いと腎臓病になるリスクが下がる」という研究結果が発表がされました。研究方法から科学的根拠として「コーヒーは腎臓に良い!」と結論付ける事は出来ませんが、少なくとも「コーヒーは腎臓に悪いので飲んではいけない」という判断にはならないと思います。

一方で、この研究は健康な人(腎臓病でない人)に行われたものであり、果たして腎臓病の人が日頃からコーヒーを飲む事は良いのか?悪いのか?という事についてはまだ分かっていませんでした。

腎臓病の人はコーヒーは飲んで良いのか?

先程の研究結果が発表されてから約半年後の2018年の秋にNDTという腎臓領域の世界的な医学誌から「腎臓病の人にとってカフェインを飲む人の方が、死亡率が低い」という内容の研究結果が発表されました。これもまた研究方法から科学的い根拠として「腎臓病の人はカフェインを飲んだ方が良い!」と結論つける事は出来ません。

ここでの注意は、あくまでこの研究はカフェインについて触れており、コーヒーについて触れている訳ではありません。この研究では更に踏み込んで解析されていて、カフェインの中でコーヒーでは期待された良好な効果は明らかになりませんでした。

カフェインとコーヒーの違いに関しては、まだまだ科学的根拠が出ていない部分も多く医師として患者さんに情報提供出来る段階ではありません。例えば、カフェインレスのコーヒーでも死亡率が下がるという結果が出ていて、コーヒーのカフェイン以外の要素が影響している可能性が示唆されたり、玉石混合でまだまだ結論を出せません。

「腎臓病の人はコーヒーを飲んだ方が良い!」と言い切るためには、ランダム化比較試験というコーヒーを飲んでいる人達と、コーヒーを飲んでいない人達を分けて5年後、10年後の死亡率などを調べる必要がありますが、金銭的・人的リソースを割く事を考えると、今後これ以上の科学的根拠に踏み込むのは非常に難しいと思います。

メディアは1つの研究結果を取り上げて、「コーヒーが体に良い!!」と平気で言ってしまうのですが、今回医師として、この記事を書くために複数の海外の文献をしっかり吟味しましたが、それでも結論を出す事が難しく、これが栄養と健康の医療情報発信の難しいところなのです。(この難しさを中々患者さんや読者に理解してもらえないのがつらい所です・・・。)

とはいえ、医師として今ある研究結果を解析して患者に情報を取捨選択して情報提供していこうと思います。

腎臓内科医としてこれらの結果を考える。

医師として今ある研究結果を解析して患者に情報を取捨選択して情報提供していこうと思います。

論点1:取り敢えず、コーヒーは飲んでも良い。

1つ目の結論として「腎臓病の人もコーヒーは飲んで良い」とする事が出来ます。現段階での論点は「コーヒーは体に良い・変わらない」かであり、体に良くないという方向にシグナルは動いていないです。コーヒーにはカリウムが入っており、腎臓病が進行している患者さんでは考慮が必要ですが、カリウムに余力がある場合は、飲んで良いと伝える事が出来るでしょう。(とくにインスタントコーヒーはカリウムがいっぱい入っているので注意が必要です。)

(腎臓内科.comでもよく触れる上の図で言うと、コーヒーはBもしくはCに値すると思います。私はB〜Dの食事は制限も推奨もせずA、Eに集中してもらうのが医者が伝える食事の情報提供だと思っています。)

論点2:腎臓病の人にとってコーヒーは飲むと健康に良いか?

次に「腎臓病の人にとってコーヒーは飲むと健康に良いか?」に関しては「ちょっと待った!」と結論づけました。まず、過去の研究を一方下がって検証してみましょう。この姿勢を批判的吟味(ひはんてきぎんみ)と言います。「ちょっと待った!」と結論づけたのには2つの理由があります。

<医学的なメカニズムがよく分かっていない>

一般の方からすると「メカニズムなんてどうでもいいでしょ、健康に良ければ良いんだよ!」と考えられるかもしれません。私もどちらかという頭でっかちな考え方が嫌いで、結論ありきの立場なのですが、コーヒーについては分かっていない事が多く、どの研究結果をみても、筆者が「メカニズムは良く分からないので注意」と書いています。コーヒーには血管拡張作用があるとか、抗酸化作用があるなど様々な意見がありますが、どのメカニズムも正直ピンと来ていないのが現状です。また、先程お伝えしたように、カフェインとコーヒーの関係性も不透明であり、研究結果によって効果がバラバラであり現段階ではコーヒーを健康に良いといって患者さんに情報提供出来る段階ではありません。

<コーヒーが良いのか?コーヒーを飲む生活が良いのか>

食事関連の研究結果の限界で、コーヒーが良いのか?それともコーヒーを飲むような生活が良いのか?が分からない事が挙げられます。例えば、コーヒー自体が良いのではなく、コーヒーを飲む人には高収入の人が多くて、収入の差が健康の差に繋がった可能性があります。

食事は生活と大きく結びついており、考慮するべき因子が多すぎて、食事自体の有用性を明らかにすることは難しいとされています。

つまり、食事関連の研究結果は、特に解釈に慎重を要するのです。メディアはこういう研究結果に飛びついて、報道をして患者さんを混乱させてしまいます。

以上から腎臓内科医としては「コーヒーが腎臓に良いか分かりませんが、飲みたかったら飲んでよいですよ〜」と伝えるのが一番良いかと結論づけました。随時、新しい情報が入り次第、Twitterやこのサイトでアップデートします。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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    開催内容はこちら!(https://xn--v6q559gj6ehpa.com/archives/1206

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  • (2018.09.06)

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