〈森維久郎ブログ〉医療系の情報発信の先行研究について調べてみました。 連載②

2018.11.10
〈森維久郎ブログ〉医療系の情報発信の先行研究について調べてみました。 連載②
〈森維久郎ブログ〉医療系の情報発信の先行研究について調べてみました。 連載②

腎臓内科の森 維久郎です。「腎臓内科.com」では、腎臓の情報発信に加えて、管理人のブログ<森 維久郎ブログ>を更新しています。その中で、医療者の情報発信について連載しております。

第1弾はこちら:医療情報を発信する事について思う  連載①

第2弾は、医療の報道に関する先行研究があったので、こちらを掘ってみようと思います。

メディアドクター指標とは?

「メディアドクター指標」は「メディアドクター研究会 (Media Doctor Japan)」という医療の報道の在り方を考える会が草案している指標で、以下のように記載されています。

「適切な受療・健康行動を行う際に、意思決定において必要な要素を明確にし、記事を書く側、読む側に参考となる観点を提供することを通して、医療・健康報道の質を高めることを重視する。」

この指標は200以上の医療ジャーナリズムの学術論文を参考にして作られた10項目で成り立ってます。

利用可能性:日本の医療現場で利用可能かどうかの情報提供

新規性:文字通り

代替性:検査や治療の他の選択肢の提示。

あおり/病気づくり:疾患・検査・治療に対して不安を抱かないようにする情報提供。

科学的根拠:文字通り

効果の定量化:適切な数値や指標を用いて具体的に述べている。

弊害:合併症などの説明

コスト:費用・費用対効果の明示

情報源と利益相反:偏った情報ではなくバランスの取れた情報提供

見出しの適切性:センセーショナルに扱うことなく正確に表現

背景説明:基本的な説明を正しく説明

 

メディアドクター指標からみる腎臓内科.com

これを受けて腎臓内科.comを考えてみます。腎臓内科.comで発信するにあたりどの項目を重要視して、どの項目を重要視していないかを考えてみました。

重要視しているもの

利用可能性・科学的根拠・あおりや病気作り・効果の定量化・情報源と利益相反・背景説明・見出しの適切性

腎臓内科.comは上記5項目は非常に大切にしています。まず総じて医療系の情報発信は「正しい情報」を「臨床現場の形に即して」流す事必要があると考えています。特に後者の「臨床の形に即した」情報発信という部分は意外と大切にされていないと感じておりここについて触れたいと思います。

医療系の情報発信は、読み手(患者)にとって希望や不安を与えます。そして情報を受け取った患者は、医療現場に行けばその医療を受ける事が出来ると考えます。そのため医療系の情報発信と現場の医療はある程度リンクしている必要があります。

例えば、腎臓領域で腎デナベーションというカテーテルによる治療を紹介されている特集がありました。実臨床では、腎デナベーションは行っている施設もありますが、まだまだ科学的根拠が乏しい部分もあり多くの施設では行われていません。にもかかわず、その特集の内容はあたかも腎デナベーションをすれば腎臓の病気が治る最新の治療である!と受け取ってしまうような内容でした。

腎臓の治療として多くの選択肢がある事を視聴者に伝える事は大事なのですが、特集後私の外来でも患者さんが矢継ぎ早に腎デナベーションについて聞かれ、実臨床で現段階ではまだまだ一般的に行われている治療でない事を伝えると患者さんが皆がっかりしていました。

最新の治療を伝える事は大事だとは、腎臓内科.comでは日本で保険適応になっていない・日本で一般的に行われていない治療法についての情報発信よりは、本当に大切な血圧・減塩について触れるようにしています。

医療系の情報発信を流す事は素晴らしい事かもしれませんが、希望・不安を頂いた患者さんが近くの医療機関にかかって最終的にどうような恩恵を受けるまでデザインしてやっと価値が出るのではないかと思っています。

また臨床現場では重要視されていない情報を、不安を煽って伝える情報提供もしないようにしています。その情報をみて不安になった患者さんが「腎臓内科.comでは気をつけたほうが良い」って書いたあったと主治医に伝えて、主治医が「それは気にしなくて良い」と言った時に、患者さんが大きく困惑したり、主治医と患者関係が壊れる事が現場では多々あるからです。

現場で10個情報があったら、メリハリをつけて1個を強調して、9個は一通り説明する程度にする事があります。Webでの情報提供も即して発信していくべきだと思っています。

「臨床現場の形に即す」ために私は「腎臓内科.com外来」として月1回千代田区の医療機関で外来を置いて「情報発信の事後対応」を行っています。

以上から利用可能性・科学的根拠・あおりや病気作り・効果の定量化・情報源と利益相反・背景説明・見出しの適切性は重要視していると考えています。

あまり重要視していない物

新規性・代替性・弊害・コスト

まず、枝葉の新しい検査や治療は増え続けていますが、原則としての患者さんに必要な医学情報の量は変わりません。腎臓の世界では、本当に大切なのは血圧管理です。そのために食事・運動が大切になり、食事で本当に大切なのは塩分摂取です。これを達成出来ている患者さんは30−40%と言われています。そのような状況下で、新規性のある情報はあまり必要ではないと思っています。

情報発信は面白くて読みやすい必要があり、あの手この手を使って表現方法を変えて情報提供する必要があります。一方で本筋のコンテンツの量・種類は増えてきません。健康関連の情報発信をみていると視聴率を挙げたり・ページビューを稼ぐために本筋のコンテンツを歪める傾向があると感じており、腎臓内科.comは新規性や見出しの適切性に関しては重要視していません。

また、Webやテレビの医療者のWebでの情報提供ですら患者の個別性に対応する事は絶対出来ないと思っています。個別性の対応は診療現場で行うべきであり、腎臓内科.comのメディアとしての役割は、標準的な検査や治療・情報提供を基本的にしています。個別性を網羅しようとするあまり枝葉の情報発信ばかりを流してが大量の情報で患者さんが迷ってしまう可能性があるので重要視していません。

医療者による情報発信にも新たな指標が必要か

医療者による情報発信にも指標が必要かもしれません。現段階で以下の4つが大事だと思っています。

1:有資格者として科学的根拠を伴っているか

2:現場の医療者の情報提供として、現場に即しているか

3:メディアに留まらず、生じた不安や希望に対してリアルワールドで対応を行う事が出来るか

4:必要最低限の専門用語で分かりやすく伝えているか

今後も医療者の情報発信の可能性を適宜探っていきます。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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  • (2018.10.10)

    ジャパンヘルスケアベンチャーサミットでCKDオンラインを発表しました!

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  • (2018.09.06)

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