<腎臓内科医直筆>ロキソニンは腎臓に悪いのか、副作用について。本当に使ってはいけないのか?

2018.10.29
<腎臓内科医直筆>ロキソニンは腎臓に悪いのか、副作用について。本当に使ってはいけないのか?
<腎臓内科医直筆>ロキソニンは腎臓に悪いのか、副作用について。本当に使ってはいけないのか?

ロキソニンには腎臓を悪くするという副作用があり、薬の説明書である添付文章にも「重篤な腎障害患者には禁忌である。」と記載されており、可能であれば飲まない方が望ましいとされています。一方で、腎臓病の患者さんは、高齢であり、病気の特性上、骨、筋肉が脆くなっている事があり、患者さんに中にはどうしても痛み止めを使いたい患者さんがいます。

今日は敢えて、「基本的に使用しない方が良いロキソニンは、どこまでなら使用しても良いか」に焦点を絞って記事を書こうと思います。インターネットやテレビのようなメディアでは、何かあった時に責任が取れないため「ロキソニン=絶対駄目」としか言えないのですが、実はある程度なら使用しても問題ない事が分かっています。現場から発信をしている「腎臓内科.com」は現場に即した情報発信をしており、今日もロキソニンの現場に即して情報提供していきます。

ロキソニンの腎障害のパターンは2種類ある?

簡単にロキソニンが腎臓を悪くするメカニズムを書きます。まず、ロキソニンに関わらず腎障害のパターンは2種類あります。1つ目は「急性腎障害」、2つ目は「慢性腎障害」です。文字通り、急激に悪くなるパターンと徐々に悪くなるパターンの2種類です。

急激に悪くなる腎障害について

実際の診療所であるあるエピソードして「整形外科で痛み止めとしてロキソニンを処方されている高齢者で夏場に脱水を伴って腎臓に機能が悪くなりました」みたいなのが典型例です。過去のデーターでは「ロキソニンで急激な腎障害が起きる可能性は1-5%程度」と言われています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10390127)

ロキソニンが腎臓を悪くするメカニズムとして、腎臓の輸入細動脈(ゆにゅうさいどうみゃく)という腎臓の糸球体(しきゅうたい)という重要な場所の入り口に相当する血管が収縮して狭くなり、最終的に糸球体に届く血流が少なる事が挙げられます。またアレルギー反応で腎臓の尿細管間質(にょうさいかんかんしつ)という体の必要な成分と不要な成分をやり取りしている場所が障害される事も原因として考えられています。

先程、ロキソニンで急激な腎障害が起きる可能性は1-5%程度と触れましたが、腎臓が悪くなる患者さんのパターンは大方は決まっており以下の5パターンに分けられます。

1:高齢で慢性腎臓病と診断されている。

2:脱水(夏場が多い)。

3:血中のカルシウムの値が高い。

4:心不全、肝硬変、ネフローゼが元々ある。

5:RA系阻害薬という降圧薬を飲んでいる。

この5パターンをみると、夏場の高齢者で、更に骨粗鬆症の薬を飲んでいたり、特定の降圧薬を飲んでいるような患者さんが当てはまります。なので、上記に当てはまる患者さんには要注意です。どうしてもロキソニンを使いたい時は、しっかり水分補給してもらい採血などでリスクが評価して上で使っています。量や期間に安全を担保した科学的根拠はないので適宜調整する形になります。余談ですが、患者さんの中には結構な数で

治療としては、ロキソニンを中止して、水分補給などをして脱水を改善する事が治療になります。

徐々に悪くなる腎障害について

一方で徐々に悪くなるパターンの腎臓の障害もあります。ロキソニンを一生涯である程度の量飲んだりすると起きるようなタイプです。徐々に悪くなったパターンの腎臓の障害は急激な腎臓の障害とは異なり、一度悪くなると改善は中々しません。メカニズムは実は良く分かっていません。

個人的には、こちらのタイプの障害が怖くて腎臓病の患者さんにロキソニンを飲ませるのを躊躇していました。しかしながら、実はある程度なら許容出来るという科学的根拠があります。

①健康な男性に対して、NSAIDs(ロキソニンの事)を2500錠以上投与しても慢性的な腎臓の障害は起きない。(JAMA 2001 Jul 18;286(3):315-21.

②女性に使用する場合も、NSAIDs(ロキソニンの事)を使用した量と慢性的な腎障害に明らかな相関は認めない。(Arch Intern Med 2004 Jul 26;164(14):1519-24.

③65歳未満に対して使用する場合、NSAIDs(ロキソニンの事)で末期腎不全(透析が必要な状態)に至るのは生涯で5000錠以上内服した時である。(N Engl J Med. 1994 Dec 22;331(25):1675-9.

一方で高齢者の場合は、ある程度減らしていく必要があるという科学的根拠もあります。

④高齢者の場合は、ロキソニンを大量に使用する事により慢性的な腎障害が起きる。(Am J Med. 2007 Mar;120(3):280.e1-7.

これらの研究から、漠然と毎日使用するのは良くないと思われますが、痛みがあり必要な際は少量では許容出来る可能性が検討出来ます。(医学的に専門的な話をすると科学的根拠を吟味する際にその根拠が観察研究なのか介入研究なのかを気をつける必要があります。)腎機能がかなり進行している場合など患者ごとに評価を行う必要がありますが、一律で「使ってはいけない」薬ではないと考える事ができます。

自分はどうしているのか?

①:腎臓病の患者には、原則ロキソニンは避ける。(可能であればバファリンなどで代用する。)

②:使用する場合は、脱水などのリスクを避ける。(必要が無い場合は使用しないように伝える。)

③:定期的に腎臓に障害がない評価する。

原則、腎臓が悪い患者さんには、あまり使いたくないと思っています。しかし、痛みがあってどうしても使用したい場合は患者さんのリスクを評価して使用しています。Googleで「ロキソニン、腎臓」と調べると色んなメディアがロキソニンと腎臓の恐怖を煽る記事ばかりが目立ちます。

また医療者の間でも「ロキソニン」→「腎障害」と丸暗記していると、痛みが強い患者さんで必要な時に使用するべき痛み止めを使用しなくなる事もあります。

ロキソニンの場合、どれだけ使用すると障害が出るのかはっきりしないため難しい部分もありますが、個人的には「腎臓病の方が、祝日にぎっくり腰になって、平日まで持ちこたえる」程度の場合は許容出来ると思います。

腎臓の障害を恐れて、痛いまま動く事に億劫になり衰弱してしまう高齢者もいます。こういう例は稀ではなく、こういう場合にリスクを踏まえてしっかり痛み止めを使うのも医者の能力として必要なのではないかと思っています。(基本的には投与は望ましくないが。)

 

 

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森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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