血液透析以外にも様々な方法がある。

2017.09.16
血液透析以外にも様々な方法がある。
血液透析以外にも様々な方法がある。

そもそも腎臓は大まかに、1)必要な物を体に取り込む、2)不要な物を体から出すという2つの役割があります。

 腎臓という臓器はシブトイ臓器で、eGFR(腎臓の点数だと思って下さい。)10ml/min/1.73m2ぐらいになるまで粘り強く仕事を続ける事ができます。しかしながら10を切ってくると、自前の腎臓ではなかなか生活する事が難しくなり、やがて透析などの腎臓の代わりの働きを担ってくれる何らかの方法を導入しなければならなくなります。主に4つの方法があります。血液透析、腹膜透析、腎移植、そして透析も移植もしないと選択です。

血液透析

 『医療機関お任せタイプ』の治療方針となります。日本で透析になる方の9割以上の方がこの方法を選択します。週3回医療機関に通院して1日3-4時間程度の治療を行います。腕に2本の針を指して、血液の出し入れをして外付けのデバイスを使用して血液をキレイにします。血液の出し入れをするためには太い針を刺す必要があり、そのために内シャント増設術という手術をして腕の動脈という血管と静脈という血管を繋いで、静脈を発達させて太い針がさせるようにする必要があります。疾患によって、生命予後が変わり、糖尿病性腎症であれば比較的生命予後は悪く、腎炎のような疾患であれば比較的生命予後は良いとされております。

腹膜透析

 『自宅で自分で治療するタイプ』の治療方針となります。日本では少数派になりますが、国によっては腹膜透析を推奨する国も多く存在します。血液透析では血管から老廃物のやり取りをしていましたが、腹膜透析は腹膜というお腹の膜を使って透析をします。お腹に小さな穴を空けてそこにチューブを通して、そのチューブを使って透析液をお腹の中に入れます。腹膜透析の最大のメリットは『自宅で治療できる』という事です。また寝ている間に腹膜透析を行う事が可能です。自己管理が出来る方や、透析をしながら仕事をしたい方などがこの治療方法を選択する傾向にあります。自己管理が出来ない方(治療中断したり、認知機能が低下している方)は心不全、感染症になる可能性があるため推奨されません。また、5年程で腹膜が疲労して腹膜透析を継続出来なくなるため最終的には血液透析に切り替える事になります。

腎移植

 親族の腎臓や脳死、亡くなった方の腎臓(献腎といいます。)をもらい手術する方法です。日本では医療倫理や臓器提供などの壁があり、まだ市民権を得ていませんがアメリカなどでは盛んに行われている治療です。近年免疫抑制剤の改良で治療成績もよく、また医療経済的にも優しいとされていている治療です。しかしながら日本では臓器提供数が足らず、生体腎は親族、配偶者に限られ、献腎は10年以上待たなくてはなりません。(尚16歳以下、20歳以下だと優先的に臓器提供を受ける事ができます。)アメリカなどでは友人であっても臓器提供が可能です。治療成績だけではなく臓器提供を受ける側も、臓器提供をする側の倫理的な側面、精神的な側面などをしっかりケアしていかなくてはなりません。移植後免疫抑制剤は内服し続けていく必要はありますが、非常にパワーがある治療です。

透析も移植もしない(非導入)

 近年、透析患者の高齢化が進んでおり、例えば90歳以上で寝たきりや認知症の腎不全患者に透析を行う事が本人の人生、家族の負担、医療費などの社会的側面から本当に正しいのかという議論がされるようになってきております。この話を腎臓の機能がeGFR20ml/min/1.73m2程度の患者さんにすると、大方の人は『延命は嫌だからピンピンコロリが良いから透析をしないでくれ』とおっしゃいます。

 しかしながらいざ更に腎臓が悪くなって、eGFR10ml/min/1.73m2近くになってきて食欲が沸かなくなったり、気分が悪くなったり、呼吸が苦しくなったり、意識が朦朧ときて、最終的に家族も心配をして、結局透析をするケースも一定数います。非導入を選ばれる場合は、しっかり起こりうる症状に対して、医学的な側面だけではなく、社会資源を入れたり、家族内で死生観を統一したりしていく必要があります。

 現在の日本において緩和ケアの適応があるのは主に癌、HIV、心不全で、腎不全患者に対して積極的に透析非導入、緩和ケアという選択を行う事はありませんでした。近年になり、高齢化とともに議論をしていく必要がある領域の話だと思います。私自身も数人透析をしないという選択をして、現在外来でなるべく苦しくならないようにする治療を行っている患者さんをみていますが、医学的知識だけでなく、家族のサポート、社会のサポートが必要だと痛感しています。

血液透析以外も方法がある。

 以上の4つの選択肢がありますが、早期から情報開示を受けて、早期から心の準備、身体的な準備をする必要があります。前もって準備せずに症状が出て、急に病院にきて透析の話をされて、本人も家族も訳が分からぬまま、皆がやっているからという理由で血液透析になってしまう事が多々あります。透析は『治療』というよりは、もはや『生活』であり、人それぞれの個別の最善の選択があります。本人、家族などと一緒に長い時間をかけて相談していく必要があります。

 近年、療法選択外来という、慢性腎臓病進行が進み、今後透析や移植を念頭に入れる必要性が出てきた患者さんに専門の看護師が情報開示、選択支援などを行う外来を行う施設が増えてきました。詳細は下記へ。

この外来で腹膜透析を選択する患者さんの割合が増えたという研究結果も出てきており、血液透析以外の方法を認知しておく必要があります。

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管理人情報

森維久郎・写真
腎臓内科医
森 維久郎(もり いくろう)
『防げる透析を少しでも減らす』を理念に腎臓内科医をしています。
腎疾患をなるべく早く見つけて、しっかり介入するには、診察以外での情報提供が必要だと感じて『腎臓内科.com』を立ち上げました。
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